辻村 深月「ツナグ」あらすじ・感想!奇跡の再会は何をもたらすのか

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昨日の当ブログで辻村深月さんの最新作「ツナグ 想い人の心得」のあらすじを紹介しました。

前作にあたる「ツナグ」は、2010年に刊行。
その翌年に第32回吉川英治文学新人賞を受賞しています。

2012年には映画化もされていますね。
今回はその「ツナグ」をネタバレ無しであらすじをお伝えします。

 

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あらすじ

 

アイドルの心得

亡くなった人間と生きている人間を会わせることが出来る、使者(ツナグ)という面会の仲介人がいる。
使者の存在は、一般的ではなく、彼らに辿りつくのは極めて困難。
平瀬愛美は、SNSを活用して情報を入手し、なんとか使者の電話番号まで辿りつきます。

騙されてもかまわない、という気持ちで、指定された待ち合わせ場所に向かうと、現れたのは高校生くらいの少年。
思い描いていた使者の姿と違いましたが、若いながらも落ち着いた雰囲気を醸し出していました。
挨拶を交わしたあと、連れて行かれたのは、都内のとある病院。
愛美は中庭のベンチに腰を掛け、自分が会いたい人は、水城サヲリだと、少年に伝えます。

サヲリが病死したのは3ヵ月前で、愛美の11歳年上の38歳という若さでした。
元人気キャバ嬢という経歴を持ち、テレビの世界でもチャラいキャラクターを売りに活躍。
それでも礼儀がきちんとしていて、周りからの好感度が高い女性でした。

そんなサヲリに会いたいという愛美はサヲリと対照的に性格が地味で暗く、人付き合いが苦手な女性。
派手なサヲリと違い、化粧や服装に気を使いません。
エリート家系でただ一人、落ちこぼれになり、親兄弟からも冷たくされていました。

そんな愛美がなぜサヲリに会いたいのか。
少年から理由を訊かれた愛美は、ファンとしてお礼が言いたい、とだけ答えます。
少年によれば、使者と呼ばれる人間が窓口となり、依頼人から受けた依頼内容を死者に伝え、承諾してもらえれば、身体を与えられた死者と面会が出来るということでした。

しかし会えるのは一度きり。
一晩だけ誰かに会えたら、再び使者を利用することはできません。

死者にとっても同じで、生きている人間に会える機会は一回だけ。
死者は1人の人間から依頼を受けてしまったら、次に他の人間から依頼があっても、受けることができなくなります。
あの世から相手を指名することもできず、会いたい人が現れるのを死者は待つのみでした。

果たして面識のない単なるファンと会ってくれるのか。
ダメ元で依頼したところ、使者を通じて「愛美と会う」と、サヲリから返事が来ました。
そして使者から告げられた面会日時は、面会時間を一番長くできるという満月が出る日。
日の入りから日の出までの間。
場所は品川にできたばかりの高級ホテル。

迎えた当日、愛美は使者に見送られ、サヲリが待つ高層階に位置する部屋へと向かいます。
これだけのことをしてもらい、請求額が0円はやはり怪しい、と感じる愛美。
覚悟を決めて部屋に入ると、そこにいるのはまぎれもなく、実体を持った本物の水城サヲリでした。

そして愛美がサヲリに会いたかった本当の理由、サヲリが愛美を選んだ理由が明かされるラスト。
朝を迎え光のように消えていったサヲリ。
使者から感想を訊かれた愛美は、感嘆の言葉を放ちました。

 

長男の心得

畠田靖彦(はただ・やすひこ)は、頑固で言葉遣いの悪い50代の男性。
病気で入院中だった母親の畠田ツルから使者の存在を聞かされたのは、2年半前。
靖彦が高校生の頃に死んだ父親に会うため、今から20年ほど前に使者に依頼した、と母は教えてくれました。
このことは、靖彦の弟・久仁彦(くにひこ)にも話していないとのこと。

靖彦にだけ話したのは家業を継ぐ長男だからという理由でした。
今後、家のことでわからないことがあったら、ここに連絡しなさい、と母から渡されたのは、使者の電話番号が書かれた一枚の紙。
いずれ本家を継ぐことになる靖彦の息子・太一にも伝えたほうがいいのか、と母に訊きました。

すると母は困った顔を見せ、曖昧な返答しかしませんでした。
太一はおばあちゃん思いの優しい性格の持ち主でしたが、鈍くさいところがあり、頼りになりません。
あれほど孫の太一を溺愛していた母も跡継ぎがあれでは心もとないだろう、と靖彦は推測しました。

そしてその半年後に亡くなった母。
医師から知らされていた余命を本人や親戚、子供達に告知した方がいいと言っていた弟の久仁彦でしたが、しないと決めたのは靖彦でした。
重病だと知っていたら、もっとおばあちゃん孝行したのに、と普段おとなしい太一が泣きながら声を張り上げていました。

それから2年後 ——— 。

親戚一同が集まった母の三回忌。
久仁彦の2人の子供は頭が良く、妹は県内でも有数の高校に入学、兄は東京の名門大学に進学していました。
そんな従兄妹とは対照的に太一は無名の大学に入学。
マイペースで鈍重な太一に親の心配は増すばかり。
もし父と母が今の孫たちを見たら、3人の誰に本家を任せたいと願うだろうか、と靖彦は頭を悩ませていました。

靖彦は使者に連絡を入れ、母に会いたいと伝えます。
家のことで尋ねたいことがある、というのが口実でした。
使者の少年は高圧的な靖彦に冷静な対応を見せ、親子再会の準備を整えます。
そして迎えた満月の日。
靖彦は少年が指定した品川駅近くのホテルに行き、母が待つ部屋へと向かいます。
ドアを開けると、懐かしい匂いとともに現れた母に涙を浮かべる靖彦。
彼にはどうしても母に確かめたいことがありました。

「母さん、自分の病名、知ってたか」と。

母本人、太一たちに告知しなかったことが、本当によかったのか。
母の最期を知ってさえいれば、悔いが残らないように、それぞれが相応に行動できたはず。
告知しなかった自分が正しかったのかどうか、苦しんでいた靖彦は、「きっと母は知っていた」と、無理やり思い込むようにしていました。

しかしそのことに母は何も答えません。
その口から出る言葉は、靖彦と太一を褒める言葉が大半でした。
そして靖彦には、もう1つ気になっていたことがありました。
なぜ、母は父が亡くなって10年以上も経った後に、父に会いに行ったのか。
当時、家のことでわからないことはなかったはず。
母はそのことにも口を閉ざしたままでした。

いずれ靖彦にもわかる時が来る、とだけ告げたあと、別れの言葉を口にして消えていきました。
涙を堪え、部屋をあとにした靖彦。
母が父に会いに行った理由がわかったのは、それから数年後のことでした。

 

親友の心得

わがままで、負けん気が強い嵐美砂(あらし・みさ)。
おおらかで友だち思いの御園奈津(みその・なつ)。
2人は高校の演劇部で知りあい親友になります。
子供の頃からお芝居が好きだった嵐は、中学から演劇部に入るなど、演劇に強い熱意を持っていました。

そんな嵐をいつも励まし応援するのが御園でした。
2人の仲の良さは、周りから姉妹のようだと言われるほどで、通学する時ももちろん一緒。
いつもの道を2人並んで自転車を走らせます。

そして一年の冬。
本や漫画を読むことが好きな2人は、みんなが知らなさそうな雑学をたくさん吸収していました。
「会いたいと願う死者がいれば、その死者と引き合わせてくれる人物が存在する」。

御園がそんな都市伝説を稽古前に披露することがありました。
食い入るように耳を傾ける先輩たち。
聞き上手で、話し上手でもある御園は人を気持ち良くさせる天才でした。
御園と自分のどこが違うというのか。
嵐は軽い嫉妬を覚えます。

そしてその秋、演劇部では年明けに行われる公演のキャストを決めることになりました。
しかも3年生が引退するため、嵐たち2年生が主要な役を務めることになります。
公演作品は、三島由紀夫の「鹿鳴館」。
一年生の頃から主人公の朝子役に憧れていた嵐は、もちろん主役に立候補します。

ところがもう1人、朝子役をやりたいと名乗り出たのが御園でした。
演技テストを受けるだけ受けて、ダメだったら諦めるからごめんね、と申し訳なさそうに嵐に言います。
親友の裏切りに衝撃を受けた嵐ですが、内心では私に勝てるわけがない、と高をくくっていました。
経験だけでなく見た目の美しさまで、嵐は御園に優っていたからです。

ところが、「わたしには、絶対に敵わないわよ」と、御園が他の生徒に話していたのを偶然、嵐は聞いてしまいます。
やはり裏切られていた、とショックを受ける嵐は、力みすぎたのか、演技テストで本来の実力が出せませんでした。
結果、朝子役に選ばれたのは御園でした。
嵐は悔しさが怒りに変わり、御園がどこかで怪我でもしないか、と願うようになります。

それ以来、関係がギクシャクしていた2人。
御園が稽古の休憩中、嵐のところに行き、涙ながらに謝ります。
しかし返ってきた冷たい言葉に、御園はその場に立ち尽くすだけでした。
そしてその日、嵐は御園より一足先に学校を後にします。
いつもの帰宅路、とある家の前でふと足を止め、門の外に設置した水道に目が向きます。

以前、御園と学校帰りに、その水道の蛇口からチロチロと水が流れ、坂道を濡らしていたのを見つけたことがありました。
その時は御園が蛇口のハンドルをしっかりと閉めておきましたが、もし滑ったりしたら大きな事故につながりかねません。
しかしこの夜、嵐はさほど悪気もなく水道から水を流し、坂道を濡らしました

12月のこの時期、その水が凍ることを知っていたにもかかわらず。

そして翌朝、通学途中の御園があの坂で交通事故を起こして死んでしまいます。
止まらなくなった自転車で下の道に突っ込み、車に衝突したということでした。 
事故原因は不明のままでしたが、御園は病院に運ばれている途中、「嵐、どうして」と、うわごとのように言っていたとのこと。

それは何を意味していたのか。

嵐は背筋に悪寒を感じます。
もし御園が、あの夜に嵐のしたことを見ていたのなら、御園を誰かに会わせるわけにはいきません。
死者にとっても生きている人間に会えるのは一回だけ。
御園と合わせる顔がありませんが、誰かに話される前に、嵐は使者(ツナグ)に依頼しようと考えます。

御園の一回を奪うために。

そしてネットの情報を事細かにかき集め、何とかして使者の電話番号まで辿りついた嵐は、使者と会う約束を取り付けますが、待ち合わせ場所に現れた人物を見て驚きが隠せません。
使者の正体が、同じ高校で同学年の渋谷歩美(しぶや・あゆみ)だったからです。
しかも、御園が密かに思いを寄せていた男子でもありました。

このあと、歩美に連れて来られた場所は、とある病院の中庭。
嵐は会話に困り、「そのコート、ジュンヤワタナベのでしょ。だけど、私、ギャルソンは川久保玲のデザインの時の方が好きだったな」と、歩美に言います。
それは生前の御園が歩美のコートについて嵐に語った言葉でしたが、その時の御園は「だけど、ジュンヤもかっこいいね」とも言っていました。

そのあと話が本題に入り、嵐は歩美に正式に依頼し、御園の承認が得られるまで待ちます。
中止となりかけた「鹿鳴館」は、御園の追悼公演という形で行われることになり、主役に選ばれた嵐は複雑な気持ちで稽古に励んでいました。
着ている舞台衣装は御園が着ていたもので、彼女の両親から授かっていました。

御園の母によれば、ホントは嵐と競争したくない御園に主役をやるように自分が説得したということでした。
2人の仲を悪くさせてゴメンね、と涙ながらに謝ります。

そして満月の夜。

依頼を承諾した御園との再会のため、指定された品川にあるホテルにやって来ました。
歩美と並んで歩くのは御園に対する裏切りだと感じた嵐は、1人で御園のいる階へとやってきました。
部屋の中に入ると「痩せたね」と、微笑みながら迎えてくれたのは、まぎれもなく親友の御園でした。

その瞬間、後悔するようなことをしてしまったこと、御園の死を受け入れられずに、彼女の母と一緒に泣き崩れたことを思い出します。

御園が亡くなってから2ヵ月。
仲の良かった頃と同じように話し始めた2人。
あの夜、嵐がしたことに御園は気づいていないようでした。
それなら全てを告白することは、自分の心を救うためだけで、これから旅立とうとする彼女に良くないのでは、と嵐は考えました。
打ち明けることをぐっと堪え「ごめん、御園」と、ただ泣きながら謝り続けます。すると、御園もつられて泣き始めます。

そして別れ際、歩美から伝言があるか聞いてほしい、と御園から頼まれた嵐は、部屋を去ったあと、1階のロビーにいた歩美に、言われた通り尋ねてみます。
すると、歩美から返ってきたのは、嵐が取り乱してしまうほどの衝撃な言葉でした。

 

待ち人の心得

土谷功一が会社の同僚と行った飲み会の帰り道。
突風に見舞われた1人の少女が看板に激しく当たり、怪我を負ってしまいます。
救急車への同乗を求められた功一は病院まで付き添います。
治療を終えた彼女は日向キラリと名乗り、メイクや服装は派手に着飾っていました。

翌日、助けてもらったお返しにと、キラリから食事に誘われます。
話を訊いてみると、キラリの年齢は20歳で、まだ上京してきたばかり。
見た目は派手でも性格は素朴な女性でした。
功一のぎこちない話し方にも、相づちを入れながら、真剣に聞いてくれます。
食事を終えると、彼女の手持ちが足りないことがわかり、この日は功一が支払いを済ませました。

後日、2人で見に行った映画は最近の話題作。
手に持っているのは映画館で定番のポップコーンとコーラ。
少し過剰なのではないかと思うほど、楽しむキラリ。
それから功一はキラリと度々会うようになり、天然で人なつっこい性格の彼女に恋愛感情を抱くようになっていきました。

2カ月ほど経った頃、キラリがマンガ喫茶などで寝泊まりしていることを認めます。
それほどまで生活に困窮していながらも、これまでに貸していたお金をきっちり返してくるなど律儀な一面も見せました。
功一はそんな彼女にすっかり惚れ込んでしまい、一緒に住むことを決意します

その後、功一が親友の大橋にキラリとの出会いから今に至るまでの話をすると、功一が騙されているのではないか、と大橋は心配そうな様子。
後日、功一はキラリを連れて、大橋は彼女の久美子を連れて、4人で食事に行きます。
その頃のキラリは地元の友達に合わせていたという派手な格好や化粧も、バイト先の同僚に合わせて落ち着いたものになっていました。 

あれだけキラリを疑っていた大橋と久美子でしたが、彼女の純朴な人柄に触れ、すっかり彼女のことを気に入ってしまいました。
その後も一緒に食事をしたり、旅行に行くなど親交を深めていった4人。
そして功一がキラリと付き合い始めて2年。
功一はプロポーズの言葉と一緒に、キラリに指輪を渡しました。

彼女は一瞬言葉を失い、呆然と立ち尽くしますが、一呼吸置いた後に喜びの言葉を口にし、功一の胸の中で泣き続けました。
こうして2人は幸せな結婚を迎えるはずでしたが、キラリが友達と旅行に出掛けると言い残し、失踪したのはその翌週のことでした。
しかもキラリの友達は、一緒に旅行になど行っていないと話します。
そもそも、キラリが旅行に行くことすら、知らなかったとのこと。

彼女の部屋には少しの荷物しか残っておらず、高価な結婚指輪はケースと一緒に消えていました。
それから7年の歳月が過ぎ、功一の年齢は30半ばを超えていました。
親友の大橋は、未だにキラリを忘れられないでいる功一のことが心配で仕方がありません。
騙されていたことを早く認めて、次の幸せを見つけるよう促していました。
しかし功一は、いつかこの部屋にキラリが戻ってくることを信じて、引越しをしようとしません。

そんな功一は、以前に体の不調を診てもらった病院へ経過を伝えに行き、中庭にあるベンチに腰を掛けていると、後ろから声をかけられます。
振り返ると、前回この病院を訪れた時にも、ここで出会った老婆でした。
老婆には見舞いに来る孫がいるらしく、そんな心和む話を聞いたあと、突然老婆の口から思いがけない一言が出ます。

「会いたい人がいるんじゃないですか」と。

一瞬、功一は言葉を失います。
さらに老婆は「お兄さんは、使者(ツナグ)って知ってるかい?」と、訊いてきました。
そして、使者の存在について語った老婆から、その使者に繋がるという電話番号を教えてもらいました。

功一はこの7年間、苦悩し続けてきました。
傷つくのは嫌だ、彼女を信じたい。きっと帰れない事情があるはずだ、と。
しかしその考えが正しければ、彼女が死んでいる可能性も認めなければいけません。
それでも功一は使者に頼むことを決断します。

使者から指定された待ち合わせ場所は、通っている病院の中庭。
現われた使者の少年に正式に依頼しました。
すると、やはり7年前に彼女が亡くなっていたことを少年から告げられます。
その瞬間功一は、彼女の生死を確かめてしまったことを深く後悔しました。
「たとえ私を裏切ったのだとしても、どこかで生きていてほしかった」と。

そして迎えた約束の日。
功一は少し早めに、指定された品川のホテルに着きます。
ところが、この日を最後に、心の中で生き続けてきたキラリが消えてしまうことを恐れ、ホテルの中に入ることが出来ません。
駆け込んだ近くの喫茶店で動けずにいたところを使者の少年に見つかり、説き勧められた功一はようやくキラリと会う覚悟を固めます。

一方のキラリも使者から呼び出された時は、功一と会うかどうか、迷っていました。もし功一と会えば、彼の中で自分の死が確固たるものになってしまう。
そのことが辛くてなりませんでした。
それでも功一のためになるのなら、とキラリは彼と会うことを決意しました。

そして7年ぶりの再会を果たした功一とキラリ。

号泣する彼女の口から語られる失踪の真相。

「大好き」という最期の言葉。

キラリの部屋から見つかった「物入れ」に、功一は想像を超えた彼女の純粋な心を知ります。

 

使者の心得 

渋谷歩美(しぶや・あゆみ)が高校2年の秋の日のこと。
父方の祖母の見舞いのため、とある病院に来ていました。
死んだ人間を呼び出し、生きている人間と対面させることが出来る、という荒唐無稽な話を唐突に話しはじめた祖母のアイ子。

祖母の実家は、長く続く占い師の家系でしたが、占いの他にも使者(ツナグ)と呼ばれる役目があるのだと言います。
その使者の後継者になってほしい、と祖母から頼まれた歩美は、半信半疑のまま承諾。

先月、ばあちゃんが入院すると知った時、呆然自失となった歩美は、その時から、ばあちゃんのためなら何でもする、と心に決めていました。
ただし祖母の話では、使者の力を受け継いだ者は、次の相手にその力を渡すまでは、自分のために力を使うことができず、もし会いたい死者がいるのならば、祖母から力を受け継ぐ前に会わなければなりません。

歩美は考えました。
自分が会いたいと思うのは、11年前に自宅で母親を殺し、そのあと自殺したと思われる父親か。
それとも殺された母の方か。

歩美にとって父は家族思いの優しい人だった記憶しかありません。
父方の祖父は、祖母のアイ子と違い、厳しい人格の持ち主でした。
その祖父が勧めたお見合を断り、駆け落ち同然で一緒になった父と母。
歩美が生まれたあと、3人のもとに祖母はよく会いに来てくれました。
しかし祖父が会いに来ることはなく、歩美が小学生になった年に病気で突然亡くなりました。

父は悲しみに沈み込み、母はそんな父を気遣わしげな目で見るようになり、家の中は暗い雰囲気に包まれていました。
そして痛ましい殺人事件が起きたのは、それから半年後のこと。
不倫がばれた父が母に詰め寄られて逆上したことが、事件の原因だとされていました。

祖母は使者になる前の若かりし頃に、自分の母に会うために、1回を使っていたため、もう自分が会いたいと思う死者に会うことが出来ません。
しかし、歩美が会いたい人物には、現在使者である祖母が、死者と交渉をすることで、その死者と会うことが出来ます。
おそらく祖母は、歩美の父でもある自分の息子に会いたいのではないか、と感じ取った歩美。
祖母に訊いてみると、あんたが決めることだよ、と応えました。

ラスト、使者が譲り受ける恐ろしい鏡の秘密が明かされ、謎の多い両親の死の真相を祖母が涙ながらに告白。

使者の心得を学んだ歩美は、悔いのない決断ができるのでしょうか。

そして、これまで4人の視点から見てきた4つの物語、その後の4人が歩む人生を、歩美の視点から描かれていきます。

感想

心に染みる連作短編集。
伏線が回収されていく最終章「使者の心得」はとても心地良いですが、残された謎もちらほら。
特に「親友の心得」では、いろいろな捉え方が出来ると思います。
私的には歩美の伝え方が悪く、御園にも誤解が生じたのではないかと思っています。
あまり語れませんが、御園から受け取った伝言が前向きな意味だったと信じたいですね。

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