アガサ・クリスティ「そして誰もいなくなった」あらすじ・感想!常軌を逸した断罪が始まる

小説

1939年に刊行されたアガサ・クリスティの代表作「そして誰もいなくなった」は、日本でも数多くの作家たちに影響を与え、ミステリ好きの方なら誰もが知っている名作ですが、ミステリを読みはじめたばかりで未読の方がいるかもしれませんので、ネタバレは避けてあらすじを書いています。

ちなみに新訳では、物語に出てくる童謡の歌詞、人形と島の名前を旧訳版とは違う呼び名で「兵隊」と改訂され、2017年に日本で放送されたドラマでも「兵隊」となっていますので、当ブログでも「兵隊」と記しています。

 

スポンサーリンク

あらすじ

イギリス・デヴォン州の海岸沖に浮かぶ兵隊島。
悪天候だと、一週間ほど本土に戻れなくなることもあるという絶海の孤島です。

ある日、その島の所有者、U・N・オーエンなる人物から島の屋敷に招待されたのは8人の男女。
彼らは様々な口実でこの島に招かれ、素性の分らない者同士でした。
その一行を出迎えたのは、屋敷の執事とその妻。
招待主のオーエンは明日到着するとのことで、現在この島には10人しかいません。

モダンで洗練された各々の部屋には、童話が額に入れて飾ってあります。
その童話の歌詞は、10人いた小さな兵隊が次々に減っていき、最後に「そして誰もいなくなった」というもの。
一階にある食堂のテーブルには、その童話に書かれていた10体の人形が並んでいます。

一行は美味しい夕食を済ますと、応接間でコーヒーを味わうなど贅沢な時間を堪能。

ところが、時刻が午後9時20分を指した頃、それまで和やかだった室内の空気が一変します。
どこからか不気味な声が室内に響き渡り、屋敷にいる1人1人全員が過去に殺人を犯したと告発。
その姿なき声は、罪を犯した日付、殺された人物達の名前まで、具体的に話しました。
動揺が広がるなか、その声の正体が蓄音機であることを突き止めると、執事が招待主の言い付けに従い、中身も知らずにレコードを回したことを認めます。
執事は職業紹介所を通じて手紙が届き雇われただけで、オーエンとは面識がありませんでした。
しかも屋敷に来たのは、ほんの数日前。

他の8人も招待主が何者かわかっていません。
送られてきた招待状には、それぞれの古い友人の名前が書かれていたことから招待主を信用してしまいました。

こうしてこの島におびき寄せられたのは、元判事、教師の女性、元陸軍大尉、老婦人、退役将軍、医者、青年、元刑事、執事とその妻の10人。
それまでご満悦だった彼らからはすっかり笑顔が消え、告発内容を否認し始めます。
何はともあれ、この屋敷の持ち主は正気とは思えず、すぐにこの島から離れようと考えますが、ボートが一隻もありません。
仕方なしに明朝に本土から物資を運びに来るボートを待つことにします。

するとその直後、ウイスキーを口にした青年が倒れ込み、あっという間に死んでしまいます。
毒物が見つかったのは青年が使用したグラスの中だけで、そのグラスには彼が自ら酒を注いでいました。
腑に落ちないところはあるものの、自殺したものと結論付けたあと、招待客たちは、それぞれの部屋に戻ります。
そして執事が食堂の後片づけを始めた頃には、食卓の上に置かれた10体の人形のうち1体がすでに消えていました。

翌朝には、死因不明で執事の妻が遺体で発見されると、またしても人形が1体減り、9体から8体に。

これで2人の人間がこの短い間に、不自然な死に方をしたことになりました。
同時に紛失した2体の人形は何を意味しているのか。
ふと医師の男が部屋で見た童謡の言葉を口ずさみます。

「小さな兵隊さんが10人、ご飯を食べにいったら1人がのどをつまらせて残りは9人。小さな兵隊さんが9人、夜ふかししたら1人が寝坊して、残りは8人」。

単なる偶然なのだろうか、それともこの童話の歌詞に倣って2人は殺されたのか。やはりオーエンが全員を殺すために仕組んだのだろうか。
いくら待っても本土から来るはずのボートも姿を現しません。

オーエンがこの島のどこかに隠れているはずだと考え、医師、元陸軍大尉、元刑事の3人がしらみつぶしに捜しますが、この島には自分たち以外誰もいませんでした。
オーエンは我々の中の誰かだという結論に至った一行は、疑心暗鬼に陥り、互いに監視し合うようになります。

一体、オーエンとは何者なのか。なぜ、法律で裁けない罪人の殺害を試みるのか。

そして童話のとおりに一人また一人と死んでいくたびに、人形も消えていきます。

感想

題名で結末は想像できますが、犯人の意外性は抜群。
驚くようなトリックはありませんが、サスペンス性が強く、逃げ場のない孤島で追い詰められていく緊張感がひしひしと伝わってきます。

さらに恐怖感を引き立たせたのは、殺人が起きるたびに消えていく人形。
このシーンは当ブログでも紹介した今村 昌弘さんの「魔眼の匣の殺人」でもオマージュされていました。

多くの作家が手本にした「そして誰もいなくなった」は、何度読み返しても没頭してしまうミステリファン必読の書だと思います。

小説
スポンサーリンク
新しい瞬間