今村昌弘「屍人荘の殺人」あらすじ・感想!常識を超えたクローズド・サークルに3冠受賞も納得の1冊

小説

今回紹介する作品は今村昌弘さんの「屍人荘の殺人」です。

この作品は第27回鮎川哲也賞を受賞したのを皮切りに、「このミステリ―がすごい!2018」「週刊文春ミステリーベスト10」「本格ミステリ・ベスト10」と、2017年の国内主要ミステリ小説賞で見事1位になり、デビュー作で3冠を受賞という史上初の快挙を達成しています。

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あらすじ

関西では広く知られている神紅大学(しんこうだいがく)。
経済学部1回生の葉村譲(はむら・ゆずる)は、理学部3回生の明智恭介(あけち・きょうすけ)にミステリ愛好会に誘われます。

葉村は明智同様にミステリ好きだったこともあり入会することに。
葉村を誘った明智はというと、謎を愛してやまず、身の回りに事件が起こることを常に望んでいるような男でした。

そんな明智は、映画研究部が夏休みにペンションを借り切って心霊映像を撮る合宿を行うという話を耳にします。
何か起きそうな予感がした明智は、映研の部長進藤歩(しんどう・あゆむ)に自分達も同行させてくれと何度も直談判しますが、断られ続けます。

8月に入り、どうにか参加できないか考え続ける明智と葉村のもとに文学部2回生の剣崎比留子(けんざき・ひるこ)という女性が現れます。
明智が合宿に参加したがっていることを小耳に挟んだ彼女は、合宿の情報を2人に伝えてくれます。

合宿が作品の撮影のためというのは表向きで本当の目的は映研OBのためのコンパということ。ペンションの所有者が映研OBの親で、無料なうえ貸し切りで提供してくれるということ。

そんな夏のペンションに泊まれるとなれば、多くの部員から参加の希望が出ると教えてくれました。

しかし合宿まであと二週間というところで、「今年の生贄は誰だ」と書かれた脅迫状が届きます。

実は去年参加した女子部員が合宿後に原因不明の自殺を起こしていたのです。
そのことと脅迫状が関係しているのか不明でしたが、脅迫状が来たことを隠そうとした進藤に女性陣は不信感を抱いてしまいます。

そのことが影響して女性を含む多くの部員が合宿への参加をキャンセルすることに。
そこで剣崎は明智と葉村に言います。

「私と一緒に参加してくれませんか」と。

OBのために女性を集めなければならない進藤が、女性の剣崎が来てくれるなら、部外者の明智と葉村の同伴でも受け入れてくれるらしいのです。

2人にとっては申し分ない話でした。

ではなぜ自分たちにおいしい話を持ちかけてくれたのか葉村が訊きました。

剣崎は答えます。「その理由を訊ねないことが、私からの交換条件です」と。

そんな奇妙な取引を持ちかけてきた彼女が警察も認めるほどの名探偵だったことを葉村は後に知ることになります。

そして迎えた合宿当日。
明智たち男4人女6人の合計10人の部員は、ある地方駅に集まるとペンション紫湛荘(しじんそう)の管理人が迎えに来ていました。

車でS県娑可安(さべあ)湖近くにある洋風3階建ての紫湛荘に到着すると、外観の美しいペンションの姿に葉村の胸は高鳴ります。

オーナーの息子を含めたOBの三名は、先に着いていたようです。
いきなり女性を値踏みするような視線で見てくる彼らに、女性陣は不快感を感じます。

そんな中、山の向こう側にある自然公園では野外ライブが行われておりました。
盛り上がりを見せている観客の中に、班目機関(まだらめきかん)なる組織が革命を起こそうと紛れ込んでいました。

そして世界を震え上がらせるほどの恐ろしい計画が実行されます。
一方、部員たちはというと女性たちがOBに不信感を抱いてはいたものの、それでも作品の撮影を終え、バーベキューをするなど賑やかな時間を過ごしていました。

葉村も満腹になり、遠くの景色を眺めていました。
すると3機の自衛隊ヘリコプターが重低音を響かせながら上空を横切って行くのを目にします。

向かっている先は野外ライブが開催されている会場方面。
すでに大変な事態が起きていることを知らない葉村は大して気にも止めませんでした。

やがてバーベキューが終わり後片づけも終えた頃、さっきまで通じていたみんなの携帯の電波が急に入らなくなっていることに気づきます。

不思議に思いつつも次のイベント、肝試しが始まりました。
すると、山の向こうから肝試しとは無関係な得体の知れない恐ろしい者たちが、一挙に押し寄せてきました。

どうにか紫湛荘の二階へと逃げ込こんだ部員たちは、二階に上がってこれないようにバリケードを施しました。ひとまず生き延びることができましたが、携帯はもちろん紫湛荘にある固定電話までも通じなくなっており、完全に外部との連絡は遮断されていました。

外を覗けばこの世のものとは思えないおぞましい光景が広がっています。それでも何とか一晩過ごし、少し落ち着きを取り戻した時でした。

仲間のひとりが密室の部屋で惨殺死体となって発見されました。
殺された部屋の中には「いただきます」ドアの隙間には「ごちそうさま」と犯人から二つのメッセージが書かれた紙が見つかり一同に動揺が走ります。

外部から誰かが侵入した形跡はありません。犯人はこの中にいる仲間のうちの誰かという結論に達しました。

外からだけではなく中からも迫りくる殺人鬼。
そして第2、第3と犠牲者が生まれ、名探偵と称される剣崎比留子が前代未聞の謎に挑んでいきます。

感想

「たった一時間半で世界は一変した」とキャッチコピーにもある通り、わずかな時間で悪夢のような世界に変わると、瞬く間にミステリーの定番クローズ・ドサークルが完成。

定跡外れの展開を見せたり、まさかと思うような人が殺されたりと驚きが尽きません。
犯人には、予期せぬ事態が起きたにもかかわらず計画を実行し、逆にこの状況を利用してトリックを成功させるなど復讐への執念を感じました。

作者の今村昌弘さんはこれがデビュー作ということで、今後が楽しみな作家さんです。

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