東野圭吾「沈黙のパレード」仇討ちに隠された秘密!あらすじ・感想

小説

東野圭吾さんのガリレオシリーズ第1作目「探偵ガリレオ」が発売されたのが1998年5月。

その誕生から20年。

このシリーズは、未だに色あせない人気を誇っています。
そして、9作目となる新作「沈黙のパレード」が先週発売されました。
ネタバレを避けてあらすじを紹介します。

 

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あらすじ

東京・菊野市の菊野商店街にある食堂「なみきや」を営んでいる並木祐太郎(なみき・ゆうたろう)と、その妻の真智子(まちこ)。
長女の佐織(さおり)が生まれると店内が子育ての場になります。

庶民的な雰囲気のお店で、常連客や皆に愛され成長していった佐織。
3歳年下の妹、夏美(なつみ)の面倒をよく見てくれる優しい姉でもありました。

そんな佐織が高校2年の時。
文化祭で抜群の歌唱力を披露すると、音楽学校を経営している新倉直紀(にいくら・なおき)に声をかけられ、プロの道を目指すことに。

19歳になるまで、新倉とその妻、留美(るみ)のもとでレッスンを受け、いよいよデビューの準備を始めようとしていた時、佐織が突然行方不明になります。

そして、3年が過ぎた頃。
静岡県の小さな町で、火事になった家の焼け跡から白骨化した2体の遺体が見つかります。

DNA鑑定の結果、3年前から行方がわからなくなっていた並木佐織と判明。
遺体は床下だったと思われる場所から見つかりました。
頭蓋骨の陥没が確認されますが、それが死因となったかは不明でした。

もう一方の遺体は、一人暮らしをしていた蓮沼芳恵(はすぬま・よしえ)とわかりました。
遺体の見つかった場所は一階の和室。
80歳を超えている芳江は6年ほど前に自然死したと思われ、佐織の死には関わっていないというのが警察の見解でした。

芳江には蓮沼寛一(はすぬま・かんいち)という一人息子がおり、芳江の死から3年後、その息子が家に侵入し、佐織の遺体を床下に隠した可能性も考えられました。

蓮沼は以前、東京・菊野市のアパートに住んでいましたが、佐織が失踪した直後に勤めていた廃品回収会社を辞め、アパートを引き払っていました。
現在は江戸川区に住んでいることが警察に確認されています。
さらに、この蓮沼は、足立区で起きた殺害事件でも被告になった男でした。

それは23年前のこと。

まだ12歳だった本橋優奈(もとはし・ゆうな)が、行方不明になります。
その一か月後には、優奈の母親の由美子が、娘はきっと生きていないと悲観し、自殺するという悲しい出来事もありました。

そして約4年後に、奥多摩の山中で見つかった骨が DNA 鑑定の結果、本橋優奈だと判明します。
この事件は、まだ捜査1課に配属されたばかりの草薙俊平(くさなぎ・しゅんぺい)も捜査にあたっていました。

数々の状況証拠を揃え、蓮沼を逮捕した警察。
いずれ自供すると思われましたが、取り調べの途中から、蓮沼は完全黙秘を通します。

その後、蓮沼を送検し、検察が起訴しました。
逮捕から約千日。
ようやく出た一審判決は、無罪。

検察側は控訴しますが、一審に続き再び無罪判決が下され、最高裁への上告は証拠不十分で断念しました。
19年前の最大のミスは、自白がなければ警察はどうしようもない、と考えていた蓮沼に黙秘を貫かれたことでした。

そして、「本橋優奈殺害事件」で被告だった蓮沼寛一が、今回、「並木佐織変死事件」の重要参考人として名前が挙がることになりました。

佐織が失踪して3年2か月。

19年前と同様、死体遺棄の時効は過ぎており、殺人罪で逮捕するだけの証拠を揃えなければいけません。
静岡県警との合同捜査本部を菊野警察署に開設します。
本庁から応援に駆けつけるのは、捜査1課の草薙警部が指揮を執る係でした。

被害者の両親が経営する「なみきや」は、菊野通りに面した場所にありました。
草薙が遺族の3人に蓮沼寛一の顔写真を見せます。
すると、この男はお店に来ていた客で、しつこく佐織にお酌を要求することから出入禁止にした、と遺族は話します。

それは、3年とちょっと前の12月。
佐織がいなくなる少し前の出来事だったといいます。

警視庁捜査一課に所属する内海薫(うつみ・かおる)巡査部長は、失踪直後まで佐織と付き合っていたという高垣智也のもとを訪ねます。
覚悟は決めていたとはいえ、はっきりと佐織が亡くなったことを知らされ、ショックを受ける智也。

蓮沼の顔写真を薫が見せると、智也はその男の顔に見覚えがありました。

佐織が嫌な客だと言っていた男でした。
智也が知る限りの情報を薫に伝えたあと、どんなに食い下がっても、その男の正体を薫は教えてくれませんでした。

警視庁捜査一課の岸谷(きしたに)警部補は、新倉直紀の自宅を訪れていました。
新倉もできる限り捜査に協力したい気持ちはありますが、3年前に提供した情報以上のものは持っていませんでした。

並木佐織という大事な教え子を殺した犯人に怒りが収まらない新倉は、岸谷が去ったあと、妻の留美に言います。
「できることなら、逮捕される前に、この手で殺してやりたい」と。

その後、蓮沼の部屋を家宅捜索すると、以前勤めていた廃品回収会社の制服に血痕らしきものが発見されます。
科学捜査研究所に回されて分析された結果、血液型およびDNAが並木佐織のものと一致し、草薙たちは蓮沼の逮捕に踏み切ります。

19年前と似た状況ですが、今回は骨が陥没するほどの打撃を加えたのだから、殺意があったことが認められるはずだと確信します。
しかし、検察の判断は起訴するだけの証拠が足りない、と処分保留で釈放。
黙秘を貫き、身柄が拘束されることを苦ともしない蓮沼に、検察も強気に出れませんでした。

帝都大学で物理を教えている湯川学教授は、自分の研究拠点になる施設が菊野市にできたことで、この町に来ていました。
去年、アメリカから帰国したばかりで、友人の草薙に会うのは、4年ぶりのこと。

草薙は、今回起きた「並木佐織殺人事件」と、約20年前に起きた「本橋優奈殺人事件」のあらましを湯川に説明しました。

そして、2つの事件で容疑者になった蓮沼寛一の父親は警察官だったことも話します。
自白至上主義だった父親の話を聞いて育った蓮沼が、自白さえしなければ勝てることを学習していった可能性が考えられました。

湯川が、草薙から聞いた被害者遺族がやっている定食屋「なみきや」に行くと、他のお客から仕事を尋ねられ、自己紹介します。
すると、みんなから教授と呼ばれようになり、週に2度は通う常連の1人となっていきました。

そんなある日、住んでいた江戸川区のアパートを追い出された蓮沼が、再び菊野市に現われます。
しかも、平然と「なみきや」の中に入ります。

祐太郎は娘を殺したこの男が釈放されていたことは、知っていました。
そんな祐太郎に蓮沼は、あんたらのせいで冤罪を被せられそうになった、と文句をつけると、こともあろうに被害者遺族に対して賠償金の話を持ち出します。

この日はおとなしく帰った蓮沼ですが、遺族の怒りは増幅するばかりでした。

この後、蓮沼は以前勤めていた廃品回収会社の所有する現在は使われていない倉庫に向かいます。
その倉庫の管理事務所には、70歳前後の増村栄治(ますむら・えいじ)という従業員の男性が居室にして生活していました。

従業員時代、前科がある増村と仲が良かった蓮沼は、次の住み家が見つかるまで、この小さな部屋に置いてもらうことになりました。

祐太郎の小学時代からの友人で、食品加工業者の社長を務める戸島修作(とじま・しゅうさく)。
この町に帰ってきた蓮沼の居所を見つけていました。

戸島は新倉を呼び出し、蓮沼を懲らしめるための計画に加わってくれと頼みます。
発案者は被害者の父、並木祐太郎とのこと。
誰も捕まるような事はなく蓮沼に鉄槌を下せるという話でした。

半年ほど前から再び「なみきや」に足を運ぶようになっていた高垣智也。
この日もお店は、お客であふれていました 。
商店街にある「宮沢書店」の女社長、宮沢麻耶(みやざわ・まや)が、10数人の男女を集め、町おこしのイベント「キクノ・ストーリー・パレード」の打ち合わせをしていました。

仮装した複数の人達が、物語の名場面を再現しながらパレードを行進するというもので、チーム菊野のリーダーをしているのが麻耶でした。
打ち合わせが終り、蓮沼のことに話が及ぶと、麻耶も蓮沼に対して怒りを表していました。

その麻耶たちがお店を出て行ったあと、佐織のことを引きずってる智也の将来を心配した祐太郎が、智也に話しかけます。

「この件については、もう無関係を決め込んでくれても一向に構わない。智也さんのことを薄情だなんて思わないからね」と。
智也はどういう意味かわかりませんでしたが、店の外にいた戸島から声をかけられ、計画の話を聞きます。

先ほどの祐太郎は、戸島が智也に協力を要請するとわかっていて、無理に引き受けなくていい、とそれとなく伝えてきたものだと気付きました。
しかし、このことから逃げたら一生後悔すると思った智也は、協力を約束します。

パレード当日。

夏美は、すっかり店の常連客となった湯川と一緒にパレードを見に行きます。
正午を過ぎたあたりで一旦お店の手伝いに向かい、午後1時半が過ぎ、注文を締め切ったところで、湯川がいる場所に戻りました。

チーム菊野の演し物は、「宝島」でした。
パレード終了後に夏美が湯川と感想を話し合っていると、お客さんが食後にお腹を壊し病院に運ばれた、と母の真智子から連絡が来ます。

夏美は急いでお店に戻り、病院に向かう真智子の代わりにお店の仕事をします。
ところが約2時間後に帰ってきた祐太郎と真智子から話を聞くと、結局お客さんは問題なかったとのこと。

一体、何だったのかしら、と真智子は首をかしげます。
午後5時半になり再びお店を開け、6時を過ぎると、戸島、新倉夫妻、智也、麻耶といった常連客がやって来ました。

チーム菊野は4位という結果で少し残念がっている時、お店に入ってきたチーム菊野メンバーの1人が険しい顔つきで言いました。
蓮沼が死んだ、と。

現場は東京・菊野市。
蓮沼が働いていた会社が所有していた倉庫の管理事務所。
本来、その事務所は物置だったという窓もない小さな部屋でした。

遺体を発見したのは、その事務所で蓮沼と一緒に住んでいた元同僚の増村という男性。午後5時半ごろに外出先から戻ったところ、呼吸をしていない蓮沼を見つけたと言います。
目立った外傷はなく、人が争った形跡もなく、死んだのは午後3時半から5時の間とみられました。

蓮沼の死が他殺だと仮定した場合、まず考えられるのは復讐。
動機のあるものは、並木家の人間を含め複数いると見られ、全ての関係者から話を訊くことにします。

菊野署の刑事たちは、並木家の3人に事情聴取をしました。

蓮沼に寝床を提供していた増村には、草薙が話を訊きます。
増村によれば、蓮沼を昼飯に誘ったが、断られたと言い、さらに入り口に鍵はかけなかったと思う、と説明しました。
草薙の印象では、嘘をついているようには思えませんでした。

翌朝、草薙は湯川に、並木一家が蓮沼の死に関わっていると思うか訊いてみました。

並木夫妻は、いつもなら昼間の営業が終ると夜まで2人だけになっていたはずでしたが、この日は病院に行っていることからアリバイは完璧。
その間、留守番をしていた夏美でしたが、突発的な出来事に対しての行動で、犯行は不可能、と湯川。

しかし「殺人容疑で処分保留中の人物が謎の死を遂げた。被害者の遺族たちには絵にかいたような鉄壁のアリバイがある。これを偶然と片づけられるほど、僕は能天気な人間ではないからね」と、湯川は言います。

その後、被害者の恋人だった高垣智也のもとに、警視庁の内海薫巡査部長が話を伺いに来ます。
智也は、心してかからねば、と深呼吸を一つします。

昨日のパレードには職場の後輩2人と行き、パレードの終わる3時過ぎまで見学したと智也はいいます。
その後、4時まで別行動をとることになり、1人でチーム菊野のリーダー宮沢麻耶に挨拶をしに行き、約束の4時が近づいたので後輩たちと合流して、解散したのは午後6時前後と話しました。

被害者をプロの歌手に育てようとした新倉直紀と妻の留美。
夫妻のもとには、警視庁の岸谷警部補が話を伺います。
慎重に答えねば、と気を引き締める新倉。
パレードは夫妻で見ていたと答えます。
パレード後にはのど自慢大会の審査員をした夫妻でしたが、その間には少しの空白時間があり、アリバイは曖昧なものとなりました。

草薙が菊野警察署の捜査に加わって3日目。
蓮沼の死因はまだ特定できていません。
一部出てきた解剖の結果によると、窒息死の可能性が高いが、絞殺や扼殺された形跡はないとのこと。

検出されている睡眠薬も大した量ではないことがわかっています。
仮に部屋の住人、増村が睡眠薬を飲ましたとしても、彼には動機がありませんでした。
今回の事件が他殺だとしたら、犯人はどうやって蓮沼を殺したか。

草薙は事件を解決すべく湯川を連れて現場にやって来ました。
室内に入り、中を見回した湯川。

被害者を睡眠薬で眠らせた犯人が、引き戸の鍵をかけたあと、ドライバーで引手金具を外し、現われた小さな穴からヘリウムガスを室内に送り込んだことで被害者は酸欠欠乏症に陥ったのではないか、と推理します。

解剖にあたった監察医からも納得がいくという回答が得られ、捜査員たちはヘリウムの入手先を調べる作業に入ります。
しかし、現場の部屋で酸欠死させるには、大量のヘリウムガスが必要でした。

痕跡を残さずに、それだけのヘリウムボンベを、購入するのは困難と見られ、パレードの巨大バルーンで使用したボンベが盗まれたのではないか、とも考えられましたが、その形跡は見つかりませんでした。

そんな中、現場付近でゴミ袋に入れられたボンベが見つかり、その袋の中に蓮沼のものと見られる2本の髪の毛が入っていました。
眠っている蓮沼の頭にかぶせ、首のあたりで口を絞り、隙間からヘリウムガスを注入したのではないか、と草薙が推理します。

湯川も疑問がないわけではありませんが、科学的には問題がないと認めました。
その後、警察はボンベに付着した指紋の持ち主を割り出します。
その指紋の主はパレードの当日、数本のボンベで膨らませた風船を子供たちに配っていた町内会の役員でした。

しかし、そのボンベは盗まれていたものとわかり、その人物にはアリバイがありました。
ボンベが盗まれたのは、午後4時半から4時45分の間とわかっており、盗まれた場所から殺害現場まで約3キロ。

午後5時半には蓮沼の遺体が見つかっていることから車を使わないと間に合いません。高垣智也は午後4時の時点で、後輩たちと一緒にいたという確認が取れています。

新倉夫妻は午後5時から始まったのど自慢大会の審査員をしていることから、彼らも犯行は不可能。
ボンベが盗まれるところを目撃した者はいないか、不審者の目撃情報はないか、付近の防犯カメラにそれらしき映像はないか、探しまわっても成果はありませんでした。

もし盗まれたボンベが犯行に使われたとしたら、時間を考えれば、車を利用したはずでした。
ところが、道路に設置されているNシステムで、盗まれた場所から殺害現場まで、該当する時間に通過した車の持ち主を割り出しても、事件に関係していそうな人間は見当たりませんでした。

捜査が混迷を極める中、ある人物によって過去の事件と現在の事件は、必ずどこかで繋がっているはずと考える湯川。

23年前の事件関係者について調べてみるべきだ、と薫に言います。
その理由を訊ねられた湯川は、「今のままではパズルを成立させるピースが一つ足りない。そのピースは過去にしか存在しない」と、答えました。

感想

ガリレオシリーズが始まって20年。
今作では、湯川が准教授から教授に、草薙は警部(役職は係長)に昇任していました。
齢をとったな、と思わせる人物描写があり、シリーズが進むにつれて登場人物たちも年齢を重ねているようですが、湯川の推理力は相変わらず健在です。
2人の少女殺人事件の真相が解明されない中、容疑者が殺され、その殺害方法がなかなか特定されない。
終盤、未解決のまま残された複数の謎が一気に解けていく、実に東野さんらしい作品でした。

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