百田尚樹「夏の騎士」あらすじ・感想!少年時代の夏が蘇る

小説

「永遠の0」などで知られるベストセラー作家の百田尚樹さん。
先日発売された新作小説「夏の騎士」を読みました。

なんでも今作のタイトルをツイッターでファンから募って決定したそうですが、著者本人もお気に入りの様子です。

当ブログで百田さんの小説を紹介をするのは初めてですが、今回もネタバレせずにあらすじを書いています。

 

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あらすじ

舞台は昭和63年。

遠藤宏志(えんどう・ひろし)は、天羽市の小学校に通う6年生。
同じクラスの友人、木島陽介(きじま・ようすけ)と高頭健太(たかとう・けんた)からヒロと呼ばれていました。
そんなヒロはいくじなしで、勉強も運動もできません。
陽介は肥満体で気が小さい。吃音症(どもり)を抱えた健太も弱虫な性格でした。そして2人とも勉強やスポーツが苦手なのもヒロと一緒です。

勇敢な男になりたいヒロは健太と陽介を誘い騎士団を結成します。
騎士団の名前は「円卓の騎士」。
ただし中世の騎士には、愛と忠誠を捧げるレディがいました。
3人にもレディが必要だということで、クラスで最も美しい有村由布子(ありむら・ゆうこ)を自分たちのレディにする事に決めます。

彼女は美人で背が高く、成績も良くて非の打ち所がありません。
1年前にアメリカから帰国したばかりで英語もペラペラ。
様々な事情で本来の学年より1つ下のクラスに転入してきた彼女は、同級生たちに大人びた印象を与えていました。
由布子が教育実習の大学生と話していると、まるで2人が同世代に見えるほどです。

翌日の休み時間、騎士団を結成したこと、自分達のレディに由布子を選んだことを彼女に伝えます。
すると次の瞬間、笑いの渦に包まれた教室の中で、レディとして指名された当の由布子だけが、微笑みながら「ありがとう」と言ってくれました。

みんなの笑いものになった3人ですが、7月になり、このことが担任の安西先生の耳に入ります。
すると先生はみんなの前で3人を褒めてくれました。
今の時代に騎士道精神を持つことも立派なことだと。

この日を境にヒロ達3人をからかう言葉は聞かれなくなりましたが、クラスの嫌われ者、壬生紀子(みぶ・のりこ)だけは悪口をやめません。
彼女はいつも汚いシャツとジーンズを身につけ、短い髪は乱れたままで、鼻の下には濃い産毛が目立ちます。

低学年の時はみんなに泣かされていた彼女でしたが、4年生の頃には、みんなから恐れられる存在に変わっていました。
とにかく相手の欠点を口汚く罵るのが得意で、喧嘩になれば機関銃のようにまくし立ててしまうからです。
由布子にも強烈な言葉を浴びせていたことがあり、騎士団の3人は壬生のことを心底嫌っていました。

そんな中、騎士団の3人は次の行動に移ります。
1年前、天羽市内の小学校で藤沢薫という女の子が殺された事件が未解決のままでした。女の子は全裸で発見されており、犯人は変態との噂も聞かれます。
美少女の由布子が狙われてもおかしくない、と考えた3人は犯人を見つけ出すことを騎士団の当面の目標とします。

容疑者に上げたのは3人。

1人目は柳書店のおっさん。
店にヒロ達と同年代の女子のモデル写真が置いてあり、怪しいと見ます。

2人目は北摂新聞の配達員。
事件が起きた町に住んでいましたが、事件後この町に越してきたことで、嫌疑をかけます。

3人目は妖怪ババア。
小学校の裏手に住んでいるカミナリ婆さんで、子供相手でも容赦ない性格をしています。若い少女が憎くて殺したかもしれない、と疑います。

そして柳書店のおっさんの調査を行ったところ、足が悪いおっさんに人殺しは不可能だとわかります。
新聞の配達員は朝早いことから、夕刊を配る時に尾行することにしました。

妖怪ババアを調べるには作戦を立てます。
まず嘘の口実で妖怪ババアの屋敷を訪ね、藤沢薫の名前を出した時の相手の反応を見て怪しいかどうか決めるというもの。
ところが屋敷から出てきたのは、いかつい人相の大男。
帰れと言われた3人はおずおずと引き返すことに。
一体今の男は何物だったのか。いずれ、もう一度調べることにしました。

この後、3人は誰にも知られていない自分達だけの居場所に向かいます。
それは1年前の夏休み、町はずれにある小高い丘の上でクワガタ捕りをして遊んでいた時に発見した2メートル程の穴。
彼らは、そこを改造して秘密基地を作り上げていました。

そこで陽介が見せたのは、盾をデザインした騎士団のバッジと敵と戦うためのこん棒。ともに手作りだと言います。
翌日、バッジを付けることで身を引き締めた3人は、学校帰りに新聞配達員の尾行を開始します。
ところが自転車で尾行の最中に健太が転倒。
膝からは血が流れ、自転車がパンクしてしまいました。
すると、後をつけられていた配達員がパンクを直し、膝にバンドエイドを貼ってくれました。

優しい一面を覗かせた配達員を容疑者のリストから外したヒロ達。
翌日、有村由布子から声をかけられます。
8月に行われる学館スクールの模擬試験に3人が受けて100番以内に入って欲しいと。
由布子に騎士団の誓いを試されていると思った3人は試験を受ける決心をします。

試験まで1月半。
これまで勉強をしてこなかった彼らもようやくやる気が芽生えてきました。
ところが、家に帰り机に向かおうとすると、3人は何から手を付けていいかわかりません。
ついゲームばかりやってしまいます。

週が明けた月曜日。
学校に行くとヒロ達の前に現れたのは同じクラスの大橋一也(おおはし・かずや)。
由布子のことが好きでいつも彼女のそばにいます。
さらに運動も勉強も両方できるうえ、腕っぷしも強い生徒です。
ヒロは騎士団をバカにしてきた大橋とケンカになりますが、由布子の見ている前で謝らされる羽目に。

悔しさをバネにして家で勉強を始めようとしますが、気付けばゲームばかり。
やはり他の2人もそうなってしまいます。
このままではいけない、と考えた3人。
秘密基地へ行き、一緒にクイズ形式で勉強することにします。
するとこれが功を奏して3人の実力は飛躍的に伸びていきますが、算数だけはうまくいきません。

どうすればいいか、悩みながら1人家路に向かうヒロ。
途中にマックスと呼ばれている不良を見かけます。
ヒロがこの男と初めて出会ったのは4年前の祭りの夜でした。
非常識なこの男と喧嘩になった父親が血だらけにされたことは、今でも忘れてはいません。
ヒロはマックスのあとをつけますが、すぐにばれてしまいます。
大ピンチに陥りますが、警察が来たと嘘をつき救ってくれたのは、あの壬生紀子でした。

それから2日後の土曜日。
学校のホームルームで秋の文化祭でやる「眠れる森の美女」の配役を決めることになりました。
多数決の結果、主役のオーロラ姫を演じるのは、壬生紀子に決定。
全員の男子が有村由布子を選んだのに対し、数で上回る女子が推したのが壬生でした。

いつもの仕返しに壬生に恥をかかせてやろうという魂胆は見え見えでした。
はじめは青ざめていた壬生の顔が次第に怒りと屈辱感へと変わります。
公園で助けてくれた壬生に1人で恥をかかせるわけにはいかない、と思ったヒロはフィリップ王子役に名乗りを挙げます。
他に立候補する男子は当然いません。
誰も壬生が演じるオーロラ姫とダンスシーンをやりたくないからです。

案の定、レッスンを見ていた生徒たちから爆笑の連続。
壬生は気にも留めず 先生の指導を受けますが、ラストの疑似キスシーンには笑いが体育館に響き渡ります。

翌日の放課後、騎士団の試験を心配した壬生が算数を教えてくれると言います。
成績が良いと聞いたこともなかった壬生が相当な天才だったことに驚かされた騎士団のメンバー。
こうして優秀な家庭教師をつけた3人の勉強はぐんとはかどるようになり、壬生との距離も近くなっていきました。

そして向かえた夏休み。
すっかり忘れていた妖怪ババアの偵察を再開し、再び屋敷にやって来たヒロ達3人。
現われた妖怪ババアの迫力に押され、つい本当の目的を話してしまいます。
すると、妖怪ババアは4人の子供がいたことを話します。
そのうち3人の子供を戦争で亡くし、辛い思いをしてきたことを語ってくれました。
ヒロ達は涙を流し、疑ったことを謝ります。

当分の間、犯人探しはやめて勉強に専念することにした3人は、壬生の講義を受けながら猛スパートをかけます。
そして模擬試験の前日、夕方になり勉強を切り上げた3人。
とある橋の下でスッポンを見たと陽介が言うので、壬生を連れてその場所に向かいます。

結局スッポンは見つかりませんでしたが、代わりにヒロが見つけたのは半円球の形をした蓋のようなもの。表面には鷲のレリーフが刻まれていました。
ヒロがそれを壬生に渡すと、彼女は大事そうに受け取ります。
それがのちに2人の運命を左右することになろうとは知らずに。

そしてこの夏を駆け抜けた模擬試験、緊張の舞台、犯人との戦い、騎士団の3人は勇気を手に入れることができたのでしょうか。

心が和むそんなラストが待っています。

感想

天気の悪い日が続きますが、夏に読むにはもってこいの作品だと思いました。
爽やかな読後感はもちろんのこと、小学生だった頃の夏の思い出が一気に蘇ります。
少年3人の友情にも感動。
子供から大人まで楽しめる内容で、早くも映像化されてほしいと思える作品でした。

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