今村昌弘「魔眼の匣の殺人」あらすじ・感想!死の予言から逃れられるか

小説

今回は、次代を担う作家として注目を浴びる今村昌弘さんの作品
「魔眼(まがん)の匣(はこ)の殺人」をネタバレ無しであらすじを紹介したいと思います。

2017年10月に刊行されたデビュー作「屍人荘の殺人」は、当ブログでも紹介させてもらいました。
国内主要ミステリランキングで3冠を受賞するなど注目を集めたのは記憶に新しいところです。
そして、今週発売されたデビュー2作目「魔眼の匣の殺人」は、「屍人荘の殺人」の続編となっており、再び剣崎比留子と葉村譲が活躍します。

 

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あらすじ

8月に発生した娑可安湖(さべあこ)集団感染テロ事件。
剣崎比留子(けんざき・ひるこ)の実家である剣崎家が報道を押さえ込んだことで、その渦中にいた比留子と葉村譲(はむら・ゆずる)の名前は一切報道されることはありませんでした。

戦後に岡山の資産家である班目栄龍(まだらめ・えいたつ)が設立した謎の研究機関「班目機関」がテロ事件の黒幕でしたが、こちらも世間に公表されることなく、事件の首謀者だった浜坂智教(はまさか・とものり)とその仲間たちが引き起こしたものと政府から発表されるだけでした。

事件が収束に向かう中、神紅大学経済学部1回生でミステリ愛好会会長になった葉村は、神紅大学文学部2回生で、ミステリ愛好会会員の比留子と「班目機関」について探っていました。

そして3ヶ月ほど過ぎた頃。
2人は8月のテロ事件の発生前に「月刊アトランティス」というオカルト雑誌で事件が予告されていたことを知ります。
ではなぜこの出版社が事件を予見できたのか、答えはその雑誌に載っていました。

それは今年の4月、ある事件が6月と8月に起きると書かれた予言の手紙が、差出人不明で編集部宛てに届いたことから始まります。
イタズラと思われたその手紙も、6月にその予言と酷似した事件が起きた事で信憑性が増し、8月の予言が書かれた内容を8月のテロ事件が起きる前、雑誌に記事として取り上げていました。

さらに8月の事件後には、同じ人物から届いたと思われる2通目の手紙に、数十年前、W県の辺境地にM機関と自称する男たちが、超能力実験を行う施設を建てた、とその記事には書いてありました。
比留子はさっそく知り合いの探偵に依頼を出します。

そして一週間後 ——。
探偵はその施設がW県の「好見」と呼ばれる地区にあるという情報を摑みます。
奇怪な事件を引き寄せる体質がある比留子は葉村を危険な目に遭わせるわけにはいかないと、一人でその場所へ向かおうとしますが、押し切られる形で結局、葉村を連れて行くことになりました。

2人はW県に着くと、携帯の電波も届かない僻地までバスで向かいます。
後部座席には高校生くらいの男女が座っていました。
少年が先輩らしき少女にしつこく話しかけますが、面倒くさそうに相槌を打つだけの少女。
しまいにはうるさい、と一喝します。
どうやらパワーバランスは大きく少女の方に傾いているようです。

それからしばらくすると、少女が突然スケッチブックを取り出し、トランス状態で絵を描きだします。
少年はその彼女の行動を静かに見守り、彼女は絵を描き終えると疲れ切った様子を見せていました。

その1,2分後 ——。
突然、飛び出してきた猪をバスが轢いてしまいます。
少女のスケッチブックには血を流す猪らしき獣とバスといくつかの人影が描かれていました。
葉村の脳裏に「予言」という言葉がよぎります。

バスを降りた比留子と葉村は「好見」と呼ばれる地区に向かって険しい山道を歩いていきます。
すると先にバスを降りた例の少年少女が、立ち入り禁止と書かれたフェンスの前で立ち往生していました。

少女の名前は十色真理絵(といろ・まりえ)。
少年は十色と同じ高校の茎沢忍(くきざわ・しのぶ)。
十色の1つ後輩になります。

2人の目的地は比留子、葉村と同じ「好見」という地区。
4人はフェンスの横をすり抜け、山地に囲まれた「好見」に到着します。
ところが、この地域で人が生活していた形跡は残っていても、住人の姿がどこを探してもありません。

その時、4人が下りてきた山道に人影を発見。
ようやく見つけた住人と思われましたが、王寺貴士(おうじ・たかし)と名乗る30歳前後のその男性は、ツーリングの途中にガス欠を起こしてしまいガソリンを分けてもらうため、ここに来たということでした。

一同が住人探しを再開すると、今度は女性が1人、男性が1人、子供が1人現れました。
20代半ばくらいの女性は、朱鷺野秋子(ときの・あきこ)と名乗り、着ているコートがえんじ色で、赤い髪に赤い靴、手の爪まで赤く染めていました。
この地区の元住民でこの日は、墓参りに来たとのこと。

一方、男性は50歳くらいで、大学教授の師々田厳雄(ししだ・いわお)。
一緒にいた小学校低学年くらいの子供は師々田の息子で名前が純(じゅん)。
親子2人は車のトラブルで困っているところを朱鷺野に助けられていました。

その朱鷺野は、住民が1人も見つからない、と聞かされ驚きが隠せません。
気乗り薄ながらもサキミ様と呼ばれる人物のいる真雁(まがん)の里にみんなを案内してくれるといいます。
朱鷺野について秘境の奥へと歩を進め、激流の底無し川まで来た一同。
今にも崩れそうな木橋を渡ります。

両側に山の急斜面が迫る道を進んで行き、ようやく辿り着いた建物は、この里の名前、真雁(まがん)にちなんでこう呼ばれていました。

「魔眼の匣」と。

まさに匣と呼ぶに相応しい形状のその建物は、飾り気がなく窓も付いていません。カビや苔が発生した外壁は暗緑色に染まり、建物の周りが山や岩に囲まれています。

異様な雰囲気を醸し出す建物に全員が呑まれていると、建物の陰からサキミのお世話係をしているという神服奉子(はっとり・やすこ)と名乗る30前後の女性が現れます。
菜園を荒らす獣を追い払うため散弾銃を抱えていました。

神服と顔見知りだった朱鷺野。
消えた好見の住人たちの居所を訊いたあと、何かに気づいたのか、怯えた様子を見せます。

ガソリンが欲しい、電話を貸してほしいなど、各々がサキミに会いたいと伝えると、神服が建物の中に案内してくれることに。
玄関ホールに足を踏み入れるとすでに1人の先客がいて、固定電話が通じないと言います。

ここで待つという朱鷺野を残し、他の者は一旦、食堂で休ませてもらいます。

先ほどの先客は「月刊アトランティス」編集者兼記者の臼井頼太(うすい・らいた)でした。
昔超能力実験を行っていたといわれる旧真雁地区を探し出し、取材を申し込みに来たとのこと。

やれやれといった感じの師々田は、朱鷺野の車で電話が使えるところまで連れて行ってもらうことにするようです。
残りのメンバーは、神服にサキミのいる和室まで案内されます。

8畳ほどのその部屋には廊下でも見かけていた白いエリカの花が入った花瓶が置かれていました。サキミ様と呼ばれる白髪の老女は白装束をまとい、その体はやせ細っています。

サキミは神服に、また「来月」来るように促し、この日は帰らせます。
どうやらサキミは来訪者を歓迎していないようです。
すると臼井が、編集部に届いた予言の手紙の内容をサキミに話しますが、その手紙には記事にも載せなかった続きがあったことを打ち明けます。

それには「サキミは新たな予言を告げている。また人が死ぬことになる。あの呪われた女を断罪しなければならない」と、書かれていました。
サキミはその手紙で記している通り、好見の住人に1つの予言をしていたことを認め、その予言の内容をここにいる者たちに告げます。

「11月最後の2日間に、真雁で男女が2人ずつ、4人死ぬ」と。

この日は11月28日で、明日からが最後の2日間。
住人たちの姿が見えないことや、神服を帰らせた理由はそこにあったようです。
その時、十色と茎沢がこの部屋にまだ来ていないことに気づいた葉村。
サキミに会うことが目的だと言っていた彼らの言葉を思い出します。

葉村は2人がいる食堂に行き、そこで見たのものは、十色のスケッチブックに書かれた激しく燃える橋の絵。
その直後、慌ててこの建物に戻ってきた師々田がいいます。

「橋が燃えているぞ」と。

どうやら好見の住人が橋に火をつけたようでした。
これで唯一の帰る手段を無くし、まだ残っていた神服も含め全員、旧真雁地区に閉じ込められた格好になりました。
葉村はそっと近づいて来た十色から絵のことを内緒にしてくれと頼まれますが、比留子には秘密にしておけませんでした。

この日は「魔眼の匣」に宿泊することになった葉村たち来訪者9人。
各自割り当てられた部屋で休息を取り、サキミが予言する死へのカウントダウンがすでに始まっている朝を迎えます。

食事を終えた葉村たちは脱出経路を探しに行きますが、「魔眼の匣」の両側には険しい山、裏側には庭を挟んで高い岩壁で塞がれていました。
そこで、壁の間にできた大きくカーブした抜け道を通りますが、凄まじい勢いの滝が出現し、足止めを余儀なくされます。
川の周辺を調べてもやはり渡れそうもありませんでした。

立ち往生する来訪者たち。

その時、トートバックからスケッチブックを取り出し、凄まじい勢いでまた何かを描き始めた十色。
その絵が完成したその直後でした。
地面が大きく揺れると、臼井が崩れてきた石垣の下敷きにされたあと、土砂に呑みこまれてしまい、救助するには絶望的でした。

十色が抱えていた土砂崩れを描いたスケッチブックを見た朱鷺野は不快な表情を浮かべます。
土砂崩れを予知して描いたと説明しても朱鷺野はサキミ以外の予知能力を信じていません。

それには師々田も朱鷺野と同じく十色の予知能力を信じていませんでしたが、彼はサキミのことも同様にインチキだという考えでした。
しかし、昨日から3度も十色の実力を目の当たりにした葉村にはトリックを使っているようには見えませんでした。

その後、再度サキミとの面会にこぎつけた比留子。
ここにやって来た本当の目的を打ち明けると、サキミが自分の生い立ち、さらには班目機関についても話してくれましたが、半世紀近く機関の者とは会っていないと言い、彼らの情報はほどんど持っていませんでした。

面談を終えた比留子は、玄関横の受付窓に置かれていた4体のフェルト人形の内1体が消えていることに気づきます。

1人また1人と、死者が出るたび減っていく人形。
予言が本物ならあと3人が死ぬことに。

超能力の存在を頑なに否定し続ける師々田。彼がここに来たのは本当に偶然だったのだろうか。
王寺は体に魔除けと思われるタトゥーを入れてあるなど、何かに恐れている様子を見せます。

そして謎の少女、十色はいったい何者なのか。何故サキミの元を訪れたのか。

サキミの正体に迫る終盤。
推理力が発揮された比留子が葉村に告げます。

「始めるのは私と犯人の死闘だ。文字通り、互いの人生を懸けて。きみに結末を見届けてほしい」と。

感想

華々しいデビューからの2作目。注目が集まる中、相当なプレッシャーだったと思います。
前作「屍人荘の殺人」が今年に実写映画化されるということで、勢いに乗る今村昌弘さん。映画のキャストは神木隆之介さん、浜辺美波さん、中村倫也さんと発表されています。
今作「魔眼の匣の殺人」は、予言の謎にミステリー要素を加え、前作同様物語の世界にぐいぐい引き込まれていきました。
あまり明かせませんが、クローズドサークルが使われたり、えっこの人が!みたいなシーンがあったりと、今村さんらしい作品といったところでしょうか。
早くも続編に期待したいです。

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