海外ミステリー小説「幻の女」ウイリアム・アイリッシュ

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江戸川乱歩が絶賛した「幻の女」

戦後、ウイリアム・アイリッシュ(本名コーネル・ウールリッチ)の代表作「幻の女」の存在を知った江戸川乱歩が、図書館や書店に足しげく通いますがなかなか見つかりません。

ある日、巌松堂でようやく「幻の女」を見つけますが、当時雑誌の編集長であった春山行夫がすでに売約済みでした。

それでも乱歩はあきらめず、春山に頼まれた原稿の材料になるからと店員を説得して本を包ませました。
すると偶然店にやって来た春山と居合わせてしまい口論となりますが、乱歩は本を抱え一目散に逃げてしまったそうです。

一読した乱歩が裏表紙に「新らしき探偵小説現れたり、世界十傑に値す。
直ちに訳すべし。不可解性、サスペンス、スリル、申分なし」と書き込んだエピソードも有名です。

あの江戸川乱歩をそれくらい夢中にさせたのが「幻の女」です。

あらすじ

舞台はニューヨーク。

スコット・ヘンダースンは、妻のマーセラとはすでに仲が冷め切っていて、キャロル・リッチマンという恋人がいました。
しかしマーセラは面白半分で、離婚に応じてくれません。

そこでスコットは再度離婚を申し出るつもりで、マーセラと一緒に外で食事をとる約束をしていました。

レストランに2人分の予約をし、ショーのチケットを2枚用意しますが、マーセラは直前に約束を破り、あざけり笑いました。

激昂したスコットは代わりにキャロルを誘おうと電話をかけますが、留守でした。
仕方なく一人で街へ飛び出し、たまたま入ったバーでカボチャに似た奇妙な帽子を被った女性に出会います。

スコットは一夜限りのデートに誘います。
そして2人は、「お互いに名前も住所も個人的なことは一切聞かずに、ふたりで数時間楽しく過ごす」という取り決めをしました。

約束を交わした2人は食事をし、ショーを観た後、ふたりが出会ったバーに戻り、そこで別れました。
スコットは帰宅すると刑事たちに取り囲まれます。
妻のマーセラがスコットのネクタイで絞殺されていたのです。

スコットはアリバイとしてマーセラの死亡推定時刻に、バーで出会った女性と一緒にレストランやショーに行っていたことを刑事に告げます。
しかしバーテンダーやレストランのボーイ、劇場の支配人など全員が、スコットは見たが女性の姿は見なかったと証言します。

お店の伝票や帳簿を見てもスコットが1人だったことが証明されています。
刑事が調べても細工した形跡もありません。
レストランに行く時に使ったタクシーの運転手までも、スコットは乗せたがそんな女性は乗せなかったと証言します。

結局スコットを目撃した全ての証言者の中に、女性の姿を見た人はいませんでした。
完全にアリバイは無くなり、動機は離婚問題、凶器はスコットのネクタイ、あらゆる状況証拠がスコットの犯行と断定し、逮捕されました。

裁判では有罪となり死刑が宣告されます。

死刑執行の日が刻一刻と迫る中、外国にいた親友のジョン・ロンバードが大切な仕事を放り出して、スコットのもとにやって来てくれます。
そしてロンバードや恋人のキャロルがスコットの無実を信じ、必死になって幻の女を探しますが、まさかの結末に衝撃を受けます。

感想

「幻の女」は映画やドラマで見るより、原作の方が面白いのではないのでしょうか。
サスペンスの詩人と言われたアイリッシュの筆力で舞台になるニューヨークは、街の雰囲気がよく伝わってきましたし、1942年に発効された作品ですが、古臭くも感じませんでした。

「夜は若く、彼も若かったが、夜の空気は甘いのに、彼の気分は苦かった」という書き出しにも魅了されます。

プロットは死刑執行日までにアリバイを持つ女性を見つけなければ、無実と思われる男性が死刑にされてしまうというものですが、タイムリミットが迫る緊迫感や恐怖に加え、真犯人や幻の女の正体は誰なのかと、存分に楽しませてもらいました。

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