泡坂 妻夫 「湖底のまつり」あらすじ・感想

小説

 

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あらすじ

物語は三人称で、第一章では香島紀子(かじま・のりこ)の視点から語られます。

紀子は山間の村に傷心旅行に出掛けた際、川の増水に巻き込まれてしまいます。

助けてくれた植田晃二(はにだ・こうじ)の家に行き、その夜結ばれることになるが、朝になると晃二の姿はなく、いくら探しても見つかりません。

そして村人から、彼は一月前に殺されていたことを告げられます。

では紀子を助け、一夜を共にした植田晃二と名乗ったのは誰でどこへ消えたのか?

ここから、第二章に入ります。今度はその植田晃二の視点から語られます。

日差しの強い五月、第一章と同じように晃二が川で女性を助け、晃二の家でふたりは一夜を共にします。

ところがその女性は、紀子ではなく藤舎緋紗江(とうしゃ・ひさえ)と名乗っていました。

晃二の視点からでも、紀子の視点で書かれた同じ事が繰り返されていきます。
なぜ晃二が二人の女性と同じ場面を繰りかえすのか?謎が深まります。

そして晃二はこの章で変死体として発見されることになります。

物語は第三章に入ると、晃二は毒殺された疑いがあり、警察が動きだすことに。

刑事の館崎(たてざき)は聞き込みから、事件当日に晃二は荻粧子(おぎ・しょうこ)という女性と一緒にいたという情報を得ます。

事件について何か知っている可能性が高いと見た館崎は、粧子の足取りを追いますが、一向に見つかりません。

11月になり館崎は、晃二が殺害された一月後に彼と出会ったと言っている紀子に事情を聴きます。

紀子は晃二との出会いからすべて正直に話しました。
館崎は紀子の奇妙な話に「晃二の幽霊が出たと解釈するのが、一番自然なようだな」と、困惑します。

そして第四章の緋紗江編に入ると、緋紗江、晃二、そして謎の女粧子の正体、紀子が体験した不可思議な事件の全貌が見えてきます。

感想

1978年に書かれた泡坂妻夫さんの「湖底のまつりが」が完全復刊され、書店で平積みされていましたのが目にとまり、購入しました。

紀子と一夜を共にした晃二が、一月前に殺されていたという謎を、第二章から異なる視点で繰りかえされ、事件の全貌が一つに繋がっていく構成は見事です。

謎の男と思われた植田晃二の視点から語られるとは驚かされました。

キャッチコピーに騙し絵の世界と書かれているように、著者の仕掛けた術中にはまっていく感じです。

風景描写も村の寂れた雰囲気を醸し出していて、この幻想的な物語に引き込きこまれました。

愛欲描写や乞食のパーゾウが取る行動、館崎刑事の娘に対する思い、至るところに張られている伏線にも感服です。

少し無理があるかなと感じるところもありましたが、不可思議な世界を十分楽しませてもらいました。

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