宮部みゆき 「火車」あらすじ・感想!クレジットカードに潜む幻想が悲劇を生む

小説

今回紹介する小説は、宮部みゆきさんの代表作「火車」。
1992年7月に刊行された本作は、翌年に山本周五郎賞を受賞した社会派ミステリー小説です。

ちなみにタイトルの「火車」というのは、借金などで経済状況が苦しい時に使う「火の車」のことです。

それでは、あらすじをネタバレ無しでお伝えしていきます。

 

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あらすじ

1992年1月20日。
警視庁捜査一課の刑事、本間俊介のもとを訪ねてきたのは、亡き妻の縁者にあたる栗坂和也。
数日前に失踪した婚約者の関根彰子を探してほしい、と本間に依頼してきました。

彰子は今年28歳という若さでしたが、5年前に自己破産していたらしく、そのことを和也に知られた途端、弁明もせずに姿を消してしまったとのこと。

本間は職務中に負った左膝の怪我で休職中の身でしたが、同じマンションに住む井坂夫妻に10歳の息子の世話を頼み、失踪した女の行方を探します。

まずあたったのは、彰子が1990年4月20日から行方をくらますまで勤めていた「今井事務機」という会社。
有力な情報は得られませんでしたが、彰子の履歴書を入手。
ショートボブの美しい彰子の顔写真が貼られていますが、職歴は全てでたらめでした。
以前勤めていた会社へ連絡され、サラ金に追われていたことを話されたら困るから嘘を記載したのだろう、と本間は推測します。

次に訪ねたのは、彰子が5年前に破産の申し立てを依頼した溝口(みぞぐち)という弁護士。
当時の彰子が返済に苦しみながらも、スナックでホステスをしていて美人で華やかな格好だったことを聞きます。
さらに1990年1月25日、亡くなった母の保険金の相談にやって来た時も、まだスナックに勤めており、やはり化粧や服装が派手だったということでした。

美貌の彰子が上等の店でホステスをしていたならば、かなり稼げるはずで、なぜ自己破産したのか。
その時、本間は和也や今井事務機で聞いていた彰子の印象と溝口が話す彰子の姿が、かけ離れていることに気づきます。
まさかと思いつつも写真を見せて「関根彰子さんはこの女性ですよね」と、訊くと「この人は関根彰子ではありませんよ。別人です」と、溝口。

事件の気配を察知した本間は、最悪なケースが頭をよぎります。
和也の元婚約者で関根彰子に成りすましていた女性が住んでいたアパートに行き、その女性のアルバムを入手。
学生だった頃の写真はありませんでしたが、美しい洋風建築の家が写された一枚の写真を見つけます。

家の前には、偶然写り込んだと見られる2人の女性。
そして被写体の背景に写る野球場の照明灯が、外向きに設置されていました。
妙だなと感じたこの写真が、のちに彼女の身元の判明に大いに役立つことを、この時はまだ気づいていません。

かくして2人の関根彰子の影を追うことになった本間俊介。
杳として行方がしれない本物の彰子。
その彰子に成りすます女は一体何者で、何が目的なのか。
悲しくも恐ろしい彼女の正体に迫っていきます。

感想

本作は、クレジットやサラ金の危うさをこれでもかというほど教えてくれています。
カードローンに手を出して、返済が滞れば、また借金する。そして無限ループに陥り、自己破産する。怖いですね。
また「火車」ではヒロインがラストまで現れず、内面描写がありませんが、周囲の証言や積み重ねられていく事実から、自分なりに想像して十分楽しめる作品だと思います。

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