湊かなえ「カケラ」あらすじ・感想!ドーナツの向こうに描いた景色が現実のものになる

小説

先週発売された湊かなえさんの最新作「カケラ」を読了しました。

今作は少女の死を知った美容外科医が、同郷の幼なじみ、アイドル、元カレ、元カレの息子、幼なじみの妹、高校教師、亡くなった娘の母親といった同郷たちの話から少女の死の真相に迫るというもので、一章ごとに同郷たちのモノローグで物語が展開されていきます。

それではネタバレ無しのあらすじをどうぞ。

 

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あらすじ

 

第一章 ロック・ジュウヨン

結城志保(ゆうき・しほ)は子供の頃から、いくら食べても太らない女性でした。
中学、高校と陸上部だった彼女は身長155センチで、体重は40キロ前後。
対照的に2つ下の妹の希恵(きえ)は小食なのに太っていました。
ふくよかな体型の祖母は自分に似た希恵ばかりを可愛いがり、痩せている志保には、優しさのカケラもありませんでした。

志保は社会人になってからも体重は42キロほどをキープ。
ところが、出産を機に勤めていた会社を退職し、在宅ワークをするようになると、体重は少しずつ増加。
すぐに痩せられるだろうと楽観視していましたが、太れないことが悩みだった体は、ダイエットしても痩せない体に変貌していました。

40歳という年齢を痛感した彼女は、東京に構える美容クリニックを訪ねます。
院長は田舎の幼なじみで同級生の橘久乃(たちばな・ひさの)。
お嬢様系の美人で、ミス・ワールドビューティー日本代表に選ばれたこともある女性です。

現在、ニュース番組のコメンテーターもこなしていますが、昔の久乃は口が悪く、人を傷つけることを平気で言うような女性でした。
しかし美人は得なのか、久乃が言った悪口も、近くにいた志保が一番の悪者みたいに見られることがありました。
志保は自分の体質が変わった原因を「ロクヨン部屋」のヨコヅナ、横網八重子(よこあみ・やえこ)の呪いだと言います。

横網は2人が育った田舎の同級生で、小学校入学式の日からとんでもなく太っていた女性です。
性格は根暗で友達もおらず、久乃は横網に良い印象が残っていませんでした。
6年生の一学期、志保はクラスメートと一緒に横網の身体測定結果を盗み聞きし、彼女の体重が64キロと知りました。
以来、クラス内でムシやロシがつく言葉を見つけて笑っていた時期がありました。

ところが久乃が言い始めた「ロクヨン部屋」という言葉で、横網も自分の体重がいじられていることに気づいてしまったようです。
横網は体重をばらした犯人を志保だと推測し、恨んでいたかもしれません。
先週、志保は田舎へ帰った時に、横網の娘が自殺していたことを知りましたが、娘も太っていたらしく、ショックでふさぎ込んでいた横網が昔を思い出し、憎悪の念を志保にぶつけているのではないか、と言います。

そして少しでも脂肪吸引して、ロクヨンの呪いを解きたい、と。

 

第2章 ドーナツの真ん中

この日、久乃のクリニックにやって来たのは、アイドルの如月アミ。

彼女は久乃と同じ町の出身で、鼻を少し高くしたい、ということでした。
話の流れから、アミの中学時代の同級生が半年前に睡眠薬で自殺したと聞いた久乃は少し動揺します。
亡くなった彼女の名前は吉良有羽(きら・ゆう)。
話を聞く限り横網の娘で間違いありません。
アミによれば、有羽は優れた運動神経の持ち主で、性格は明るくデブいじりされてもよく笑っていたとのこと。

どうやら有羽は母親の横網とは真逆の性格のようです。

2年生の時、有羽から頂いたドーナツはすごく美味しかったらしく、文化祭で出されたそのドーナツは即完売で、相当な人気があったとアミは言います。
そして自殺した有羽の遺体の周りには、なぜか大量のドーナツがばらまかれていたということでした。

 

第三章 似たもの親子

自殺の真相を探ろうと、久乃は地元の同級生で元カレの堀口弦多(ほりぐち・げんた)を呼び出しました。
2人が付き合っていた高校時代、久乃の結婚相手の条件は、自分を顔で選ばない人でしたが、久乃に好きなところを訊かれた堀口は「顔」と答えてしまいました。

久乃に「黙れチビ」と言われてフラれてしまった堀口でしたが、それが誤解だったことを、ようやく久乃に説明することができました。
横網とは成人式の日に再会したらしく、同じ人とは思えないほどに性格が明るくなっていた、と堀口は話します。
さらに肥満だった体も標準的な体型になっていた、と。

10年前、再びこの町に戻ってきた横網は、4年前に子持ちの男性と結婚したようで、その子供を堀口の勤める病院に連れてきたとのこと。
そしてその時の少女が、半年前に自殺した吉良有羽でした。
横網は大変可愛がっていたらしく、堀口の子供と有羽が中学生になり、体育祭で顔を合わせた時も、良いお母さんをしていたようです。
それがたった3,4年後に虐待をするような親になったとは、堀口には信じられませんでした。

このあと堀口の息子、堀口星夜から得た情報によれば、中学校の体育祭の二人三脚で、有羽とペアを組んだ星夜は転倒してしまったそうです。
背が低く体重も軽かったせいで、有羽に抱えられてゴールを切った星夜は恥をかかせられましたが、有羽から謝罪を受けたあと、彼女の母が作ったというドーナツを頂いたとのこと。

そして有羽に好意を持っていた星夜は、有羽と同じ高校に入るとウエイトリフティング部に入部。
もしまた同じことが起きたら、今度は自分が有羽を抱えてあげたいと思ったのが入部の理由でした。
しかし有羽は2年生の夏休みに、帰国した父親の住む東京に戻ってしまいました。

有羽に会いたい星夜も東京の大学に進学。
偶然にもすぐに再開することができた星夜は、有羽から高校をやめた原因が「先生」だと聞きました。
先生とは誰のことを指すのかわかりませんが、有羽が自殺したのは、それから3カ月後のことでした。

 

第4章 道徳とか、倫理とか

久乃が次に話を訊いたのは、結城志保の妹で中学教師をしている希恵。
彼女は昔、久乃から子ブタと言われたことを、少し根に持っているようでしたが、吉良有羽について彼女の知る限り話してくれました。

有羽の同級生に如月アミがいましたが、希恵は有羽とアミが中学一年生の頃の担任で、有羽とは2年生で別のクラスとなりました。

アミは引き続き希恵が担当するクラスでしたが、希恵は彼女の性格に手を焼いていたようです。
文化祭で「美女と野獣」のパロディ劇をすることになった希恵のクラスでは、自己中心的なアミが配役から何まで1人で決めていました。
担任の希恵まで出演させられますが、その役がブタの姿をした野獣。
腹が立ちましたが、そこはグッと堪え、誰もいない屋上でダンスの練習に励んでいました。

するとそこに現れたのは有羽でした。
有羽は体型のわりに運動神経が良く、ダンス部に所属していましたので、希恵は彼女からダンスを教えてもらいました。
そのおかげで本番当日は、上手に踊ることができましたが、不恰好な希恵のドレス姿を見た観客たちに大笑いされてしまいました。
希恵は隠れて涙を流しますが、そんな時に慰めてくれたのが有羽でした。

そしてその時に有羽と食べたドーナツは、人生で一番おいしかったことを、希恵は忘れていません。
そんな優しかった有羽が高校をやめた原因を作ったとされる「先生」とは誰のことなのか。
希恵が答えました。
その先生は有羽の高校の担任だよ、と。

 

第5章 あまいささやき

次に久乃が訪ねた人物は、有羽の高校の時の担任、柴山登紀子(しばやま・ときこ)。
彼女は外国に留学時代、現地の男性にひどい目に遭わされてから、甘いスイーツを大量に摂るようになり、太ってしまいました。
その登紀子によれば、自身が教師を務める高校に入学して来た吉良有羽は、1年生の夏休み明け頃からぶくぶくと太っていき、2年生の頃には100キロを超えていた言います。

あまりにも増えすぎた体重は彼女の膝を壊し、高校でも入部したダンス部を辞めることになってしまったとのこと。
聞けば、母親の横網が作るドーナツが美味しすぎたらしく、毎日食べていたのが激太りの原因でした。
有羽の姿を昔の自分と重ねた登紀子。

横網に、彼女の健康管理に注意を払うようお願いすると、管理栄養士のプライドを傷つけられた横網を怒らせてしまったようです。
その事が原因だったのかはわかりませんが、有羽は学校を辞めて東京に引越して行きました。
そしてその後、登紀子は有羽のことを人伝に知りました。

彼女が美容整形で痩せたことを。

 

第6章 あこがれの人

ついに横網八重子との再会を果たす橘久乃。

この章では横網の人生に影響を及ぼした祖母との逸話、横網の運命を大きく変えることになる友人との出会いや確執が語られていきます。

そして復讐の方法はもう考えてある、と。

 

第7章 あるものないもの

全てが明かされるこの章では、久乃が有羽の自殺について関係者に話を聞いて回る理由、そして有羽の死の真相がいよいよ見えてきます。

感想

湊かなえさんの新作「カケラ」を満喫。
今作は300ページにも満たしませんが、著者お得意の独白形式で、複数の語り手が交互に語りながら真相に近づいていく技術はやっぱり素晴らしいと再認識させられました。
二転三転する真相に温かい気持ちになったり、やっぱり嫌な気持ちになったり、と振り回されっぱなしでしたが、最終的には湊作品らしい終わり方だったのではないでしょうか。
後味の悪さだけではなく、社会に何かを訴えかけるものを感じた「カケラ」でした。

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