道尾秀介「カエルの小指」予想もつかないどんでん返し!あらすじ・感想

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今週、道尾秀介さんの新刊「カエルの小指」が発売されました。
大ヒット作「カラスの親指」の続編ということもあり、 私も楽しみにしていた作品です。
さっそく、読ませて頂きましたので、今回もネタバレ無しであらすじをお伝えします。

 

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あらすじ

詐欺を生業としていた武沢竹夫(たけざわ・たけお)。
10年と少し前に、足を洗ったあと、実演販売士を派遣する業者に入社。
40代半ばからの再出発でした。

あれから10数年、この日もホームセンター「ファミーゴ」で販売ペースを借りていた武沢は、お客を相手に商品を紹介。
ところが、中学生くらいの子が商品にケチをつけたことで、散々な結果に終わってしまいました。
しかもキョウと名乗るその子は、仕事の邪魔をしておいて、武沢に実演販売の弟子入りを志願。

人気タレントの瀬谷ワタルがMCを務める「発掘!天才キッズ」に出たいと話します。
その番組は、子供たちが特技を披露して、優勝したら20万円分の商品券がもらえるというもの。
キョウは、実演販売という変わったパフォーマンスで勝機を見出しているようでした。

両親がいないキョウは祖父母と3人暮らし。
四国へお遍路に行くという祖父母について行かず、夏休み中の合宿に行くと2人に嘘をついていたキョウ。
祖父母が遍路に出た動機は一人娘が飛び降りたから、と話します。
その時、武沢はこの子と、どこかであったことがあるような気がしました。

キョウの年齢は14歳で、中学2年生の女子。

武沢は、ある問題を出して、それに答えられたら、話を聞いてやることにします。
それは「5人家族の中で、ほかの全員と円満な関係もつくれれば悪い関係もつくれてしまうのは誰だ」というなぞなぞ。

即答で正解を出したキョウ。
約束通り話を聞くため、武沢はキョウを足立区にあるアパートの部屋に招きいれました。
その時、ドアの新聞受けに、パチンコ屋のチラシが放り込まれますが、武沢はさして気に留めません。

キョウが話をはじめました。
昔、キョウの母親は結婚を約束していた男がいましたが、妊娠を告げた途端に男が豹変。
認知を求めないこと、責任も問わないことを、母は確約させられました。
そうして生まれたキョウは、父親の顔を知りません。

次にキョウが語り出したのは、母親が自殺に至った経緯でした。
母親が飛び降りたのは今年の春。
ナガミネという男に恋をしたキョウの母は、その男の儲け話を信じてしまい、祖父母が経営していた会社のお金まで騙し取られてしまいました。
会社は倒産し、恋愛詐欺だったことに気づいた母は、包丁でナガミネを殺してしまいました。

母はその話を、ショッピングセンター「GEOS」のフードコートでキョウに告白したあと、3階に位置するテラス席から身を投げた、ということでした。
後にわかったことは、ナガミネは、母に刺されたあと、死んだふりをしていただけで、命に別状はなかったとのこと。
そしてナガミネは、自分の詐欺を隠すためにも、刺した相手がキョウの母だということを警察に話していません。

それ以来キョウは、伸ばしていた髪を切り、男の子のような服を着るようになりました。
問題は、母の飛び降りるところを、偶然居合わせた人間が撮影して、動画サイトに拡散してしまい、完全に消すのは不可能になってしまったこと。

ナガミネを捜してもらうため、番組に出て少しでも探偵を雇うお金を稼ぎたいと考えるキョウ。

そんな話をしていると、突然武沢の友人たちが部屋に上がりこんできました。
38歳のやひろと、その夫の貫太郎。
2人の息子の鉄平(てっぺい)、呼び名はテツ。
やひろの妹で、32歳のまひろ。
最後はまひろが可愛がっている猫のチョンマゲ。

武沢、まひろ、やひろ、貫太郎の4人で、大規模な闇金グループに詐欺を仕掛けたのは、10年ほど前のこと。
このあと、ラーメンを食べたり、お酒を飲んだり、みんなで盛り上がったあと、4人と一匹は帰って行きました。

翌朝4時に目が覚めた武沢。
思い出したのは、15年前のこと。
橋から飛び降りようとしていた一人の女性を、偶然通りかかった武沢が止めます。
すると、彼女がなぞなぞに答えられたら、自殺をやめると言うので、正解を出して、自殺を止めたことがありました。
その日、彼女は自宅に帰れない理由があり、仕方なしに一泊だけ武沢の家に泊めてあげました。

早朝の別れ際、その女性が教えてくれた名前が寺田未知子(てらだ・みちこ)。
キョウの母親でした。
武沢はキョウを問いただします。
すると、この世に生まれて来たくなかったというキョウは、母の自殺を止めた責任をとらせるため、武沢の前に姿を現したことを認めました。
ただし武沢の居場所をどうやって突き止めたかは、教えてくれませんでした。

そしてその翌日、仕事帰りに武沢は見知らぬ2人の男から、突然袋叩きにあいます。
今の武沢は人に恨まれるようなことはしておらず、考えられる原因は、キョウしかありません。
刺された仕返しを考えたナガミネが、一人娘の後をつけていたかもしれない、と武沢は、推測。
襲ったのは、キョウに関わるなということなのか。
しかしそれが逆効果をよび、武沢の心に火をつけます。
キョウをこの番組で優勝させ、手にした賞金でナガミネを捜させてやろう、と。

翌日から、キョウが武沢の家に泊まり込みで、実演販売の特訓を行います。
販売する商品は、キョウが選んだマッサージ器に決定。
お客役は、まひろ、やひろ、貫太郎、テツの4人。
テツがスマートフォンで練習を撮影し、キョウがそれを見て悪いところを直します。

練習が一段落したところで、まひろの手料理をみんなで堪能。
話題は、なぜ、まひろに好きな人ができても、両想いになった途端、気持ち悪くなってしまうのか。
それは「カエル化現象」ではないか、とキョウは言います。
蛙化現象とは、グリム童話「カエルの王さま」の逆で、王子様のように見えていた人が気持ち悪いカエルに見えてしまう、というもの。

この症状に陥ってしまった人は、相手に好意を持たれた瞬間に、気持ちが覚めてしまいます。
男だけを専門に狙うスリをしていた10数年前の罪悪感が、まひろにその症状を引き起こしている可能性がありました。

後日、武沢は、キョウが番組で優勝できなくても、探偵の成功報酬は自分が払ってやるつもりで、分割払いができる探偵事務所にナガミネの調査を依頼。
そしてその数日後、探偵の津賀和聖也(つがわ・せいや)から報告された調査結果によると、ナガミネは、今年の春に刺された傷が悪化して死んでいたことが判明。

キョウになんて言えばいいのか、と武沢は頭を悩まします。
8月下旬、選考に通ったキョウは、番組収録のため、スタジオに到着しますが、直前にスポンサーの都合で、キョウの出演はキャンセルになってしまいます。
せめて収録を見学してから帰ることになった武沢とキョウの2人。

収録が始まるまでの間、キョウは15年前に父と母が交わしたという契約書を武沢に見せます。
木本幸司(キモト・コウジ)と、署名された父親の名前に、武沢はどこかで耳にした覚えがありましたが、思い出せません。

そして収録終わると、突然キョウがステージに上がり、実演販売をはじめます。
止めに入ろうとするスタッフでしたが、司会の瀬谷ワタルの配慮で、やらせてもらうことに。
キョウは、実際に商品を瀬谷に試してもらおうとしますが、商品を瀬谷の頭にぶつけてしまいました。

スタジオから追い出されたキョウは、武沢を父親の家に連れて行き、驚かせます。
父親が、この場所で他に暖かい家庭をもっていることをすでに知っていて、武沢にも知っておいてもらいたかったとのこと。
その時、武沢も探偵の調査結果を正直にキョウに伝えました。

母親が人殺しになってしまった事実をキョウがどう受け止めるのか。
武沢は、いたたまれない気持ちになりました。
そうして慌ただしかった夏が過ぎ、武沢の家にお世話になっていたキョウを、みんなで自宅まで送り届けました。

けっきょく自分の責任が取れたのか、気になっていた武沢は、キョウに訊いてみます。
するとキョウの本当の気持ちは違いました。
15年前、母が武沢と出会ったことで、生きる気力を取り戻したことを知り、自分のことも生かしてほしいと願い、武沢のもとへやって来たということでした。

そんなキョウの幸せを願ってやまない武沢。

ドアの新聞受けから盗聴器が見つかったのは、そんな矢先のことでした。
一体誰の仕業なのか。
テツが子供離れした推理を展開。
全ては詐欺グループたちが、自分たちの悪事をほじくり返されるのを止めるためにしていたことが判明。

武沢たちはずっと、欺されていたことに気づいていませんでした。
一番傷つけられたのはキョウの心。
連中に仕返しをするため、久々に、派手なペテンを仕掛ける決意をした武沢。
みんなを連れて墓へとやって来ました。
そしてある男の墓石に向かって語りかけます。

「すまねえ、もう一回だけ、やらせてくれ」と。

感想

心温まるミステリーですが、見事なミスリードと壮絶な騙し合いに何度も驚かされました。
特に、最後に待ち受けていた大どんでん返しは、さすがの一言。
すべてがひっくり返りました。
前作と同じメンバーが見られたのも何か感慨深いものです。
やひろと貫太郎の子供の呼び名が「テツ」だったことにもドキッとしました。

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