道尾秀介「いけない」あらすじ・感想!結末に隠されていた真相

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道尾秀介さんの最新刊「いけない」を読了しました。
第1章~第3章まで独立した物語が展開され、そして最終章で全てが繋がる構成になっています。
今回もできるだけ、ネタバレしないようにあらすじを紹介します。

 

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あらすじ

 

第1章 弓投げの崖を見てはいけない

海岸線に沿って白沢市(はくたくし)と蝦蟇倉市(がまくらし)を繋ぐ白蝦蟇(しろがま)シーライン。

4月5日の夜、保育園に勤める安見邦夫(やすみ・くにお)はこの道を自宅に向かって車を運転します。
途中、左手に現れる「弓投げの崖」は有名な自殺スポット。
崖上に出る亡霊と運転中に視線を合わすと、死後の世界に連れて行かれると、まことしやかに囁かれていました。
邦夫はその崖を一瞥もせず、自宅へと旧車セダンを走らせます。
「蝦蟇倉東トンネル」に入り、西側出口付近に差し掛かると、停車中のRV車が見えてきました。

追い越そうとしたところ、RV車の運転手が後方を確認せずに車を動かしたことで、邦夫の車とぶつかります。
この時、運転席の下に落とした荷物を取るため、シートベルトを外していたことも相まって、邦夫は相当な重傷を負ってしまいました。
すぐさまRV車から3人の男が邦夫に駆け寄ります。
ところが、彼らがはじめたことは、割れて飛散したウィンカーカバーの破片を全て拾い、事故の隠ぺいを図ることでした。
相手の運転手からは、整髪料のきつい匂いが漂います。
その男は瀕死の邦夫からお金を抜き取ると、邦夫の顔をハンドルに幾度なく打ち付けます。
遠のく意識の中、邦夫がこの世で最後に目にした光景は、自分を殺そうとする若い男の姿でした。

あれから3ヶ月 ———。
時刻は午後5時39分。
あの夜の若い男はRVを走らせ、肝試し程度の軽い気持ちで再びあの場所へ。
「蝦蟇倉東トンネル」に入り、西側出口に近づくと左脇に見えるのは献花された花々。
男はその横を通り過ぎ、トンネルを出たところで、何かに気づき車を止めます。
男が駆け寄った先にあるのは、道路のわずかな隙間から伸びた強健な雑草。
その葉の上に乗っていたウィンカーカバーの破片が、太陽の光を受けてキラキラ輝いていました。
あのとき拾い集めたつもりが、見落としていたのか、と男は推測します。
もし自分の物で警察に見つけられたら、その破片から車種を特定されてしまうところでした。
自分はツイている、と薄笑いを浮かべます。
一瞬、何かを感じ取りますが、周りには誰もいません。
男は見えない相手に向かって、挑発する言葉を投げかけます。
するとその直後でした。
男は頭に強烈な衝撃を受けます。
一体何が起きたのか。
気を失う瞬間、聞こえてきたのは、時刻を告げる女の声でした。

それから約1時間後 ——— 。
悲しみが癒えない邦夫の妻、安見弓子(やすみ・ゆみこ)。
彼女を宗教勧誘してくるのは、十王環命会(ジュウオウカンメイカイ)という輪廻転生を唱える団体。
入会した会員たちが金を騙しとられた、と警察にも多くの被害相談が寄せられていました。
蝦蟇倉警察署の隈島(くまじま)が弓子の住む「ゆかり荘」を訪ね、この団体と関わらないほうがいい、とアドバイスを送ります。

大学の弓道部時代に弓子と交際していた隈島は、コーナーボードの裏側にある弓と矢に気づきます。
弓子によれば、横にして置いてあった弓道具も今では足を引っかけたら大変だということで、その場所に立てておくようにしたとのこと。
弓子は捜査の進捗状況を気にしていましたが、まだ開示することはでません。
それでも警察は、逃げた車両の車種を割り出し、捜索をおこない、ある若い男性にたどり着いていました。

その男は該当する車種の車を所持し、破損したバンパーとウィンカーランプのカバーを事故の数日後、新しい物に交換していたことが判明しています。
あとは、男の行方を掴むだけでしたが、その男が死体となって発見された、と報告を受けたのは、弓子の部屋を後にした時でした。
被害者の男は警察が捜していたRVの所有者で名前は梶原尚人。
死亡推定時刻は午後5時半から6時の間。
殺害に使われた石は、現場に転がっていました。
鑑識の結果、現場周辺の石ではないことが判明。
殺された尚人のズボンのポケットの中からは、ウィンカーカバーの破片が見つかっていました。

7月6日、午後3時50分。
警察は梶原尚人のスマートフォンを調べ、4月5日の夜に尚人のRVに同乗していた森野雅也(もりのまさや)を割り出していました。
隈島の取り調べでわかったことは、白沢市内で一緒に暮らしている弟、森野浩之(もりの・ひろゆき)も事故の起きたあの夜、RVに同乗していたこと。
その浩之は尊敬していた尚人を殺され、怒りが収まらないということ。
警察の判断で、被害者の情報は伏せられていましたが、あの夜、邦夫が所持していた身分証明書から彼のアパートを知ったらしいということ。
夫を殺した男を妻が復讐した。
そう考えた浩之が、尚人の仇を討つために「ゆかり荘」に向かった可能性が出てきました。

そこで、雅也から聞いた浩之の携帯に掛けてみますが、繋がりません。
弓子の携帯に掛けても応答がありません。
急いで弓子のアパートに駆けつけた隈島。
浩之が来ていなかったことに、とりあえず一息つきます。
部屋に上がらせてもらい、弓道の矢に使われる羽根を見た隈島にある予感がよぎります。
寝室のベッドの掛布団は膨れ上がっていました。
この暑い季節にしてはおかしいくらいの厚い布団です。
不審に感じている隈島に対して、冷静さを失う弓子。

一応、隈島が弓子のアリバイを尋ねてからアパートを出ます。
外には、浩之の襲撃を警戒して、課長の指示を受けた後輩刑事の竹梨が車の中から弓子を見張っていました。
隈島が去ったあと、布団をめくり上げる弓子。
そこには胸に突き刺さった矢を握りしめたまま死んでいる男が横たわっていました。

体の不調を訴える森野雅也を病院に連れて行ったところ、その病院から逃げたと隈島が知ったのは、弓子の部屋から署に戻った時でした。

7月7日、午後6時5分。
森野兄弟の行方は未だ掴めていません。
隈島は弓子の部屋で安見邦夫のものと見られる毛髪を入手していました。
その毛髪を鑑識官に秘密裏に調べてもらった結果、事件現場に残された遺留毛髪と一致したことがわかります。

6時58分。
昨日の夜、逃走した森野雅也。
弟、森野浩之の携帯に電話を掛けても繋がりません。
昨日の午後、尚人を殺したのは邦夫の妻に違いないと決めつけた浩之が、弓子を殺しにアパートに向かったのは確かでした。
署から逃亡した雅也は、新聞やニュースを見ない自分達に嫌気をさしていました。
隈島から教えてもらったことが頭によぎります。
セダンの運転手は死んではいない。
亡くなったのは助手席にいた運転手の小さい1人息子で、尚人が殺そうとしたその運転手は、現在目が不自由になり自宅で療養生活を送っている。
返討ちにあったかもしれない弟を心配した雅也は包丁を持ち、夫妻のアパートに向かいます。

その頃、隈島は安見邦夫のしたことを推理します。
まず尚人の車と同じウィンカーランプのカバーを入手した邦夫が、それを例の現場に置き、尚人が現れるのを待つ。
邦夫のアパートから現場まではすぐそこ。
邦夫が1人で行くことは出来ない事ではない。
罠に掛かったRVの所有者、尚人が車から降りてきたところを、襲った。
あの男だと確信できたのは、おそらく尚人が発した声。
ものが見えない邦夫が尚人の頭をかち割ることができたのは、あの整髪料の強い匂いが目印になったのではないか、と隈島は推測します。

そして今度は森野雅也が弓子のアパートに行くかもしれない、と思った隈島は、弓子のもとへと急ぎます。
片手にタバコの箱を握ったまま。

19時、4分。
視覚障害者用の腕時計が、女性の声で邦夫に時刻を知らせます。
昨晩、邦夫から全てを打ち明けられた弓子は心を痛めていました。
あの事故以来、人が変わってしまった邦夫が、息子の仇を討つために最後の1人を殺す、と言います。
止めようとする弓子を跳ね除け、部屋を出て行った邦夫を追いかけようと、外に出た時でした。
路上で何かを跳ねる音が響きます。
そして、宙に飛んだ人影が路上に叩き落とされると、一緒に宙に舞った何かが人影を追いながら落下していきました。

午後7時7分。
「蝦蟇倉東トンネル」に献花しに来たのは、安見弓子を勧誘しようとする十王環命会の奉仕部、宮下志穂と部下の吉住。
こうして事故現場に花を供えるのも弓子の心を掴み、入会させることが目的です。
その帰り、立て続けに訪問するのは逆効果になると考えた宮下と吉住。
弓子のアパートの前を通り過ぎる時、彼女に目撃されるのを避けるために車のスピードを上げます。
すると、突如車の前に現れた黒い人影を跳ね飛ばすと、その人影が手にしていた何かが、宙を舞いました。

 

第2章 その話を聞かせてはいけない

5歳の時に中国から日本へやって来てた珂(カ―)は、馬珂(マーカ―)というフルネームが、日本でバカと読めるせいで、保育園でみんなにからかわれていました。
そんな時、安見先生が助けてくれたおかげで、みんなと友達になれましたが、ある日を境に、先生が保育園に来なくなり、再びみんなにバカにされるようになってしまいました。
日本に来て5年経った今でも日本の学校に馴染めていません。
珂(カ―)は、クラスメートに赤青えんぴつを折られてしまいました。
両親に打ち明けられない珂は、赤青えんぴつを万引きするため、以前来たことのある文房具屋に向かいます。

頭には赤いニット帽。
ポケットの中に唐辛子を忍ばせて、店の前まで来た時でした。
何かの気配を感じ、そちらに目を向けると、あいつがいました。
薄い身体に両脇からぶら下がった白い袖。
あいつの顔を見てはいけない。見たら終わり。
珂はポケットの中の唐辛子のパッケージを握り、追い払う言葉を唱えると、あいつは消えていきました。

そのあと珂は何事もなかったように店に入ります。
レジの横では、茶色の革ジャンパーを着た男性が背中を向けた状態で何やらゴソゴソとしていました。
奥の部屋を覗くと店主のお婆さんと、横向きになった誰かの足も見えます。
珂は目的の物を見つけますが、高い位置にあったため手を伸ばしても届きません。
仕方なく諦めて店を出ると、内側のカーテンを閉められました。
カーテンの隙間から店内を覗いてみると、先ほどの革ジャンを着た男が、何かの手作業をしているのが見えます。
そして男が後ろを振り向いた瞬間、珂の頭の中に、ある映像が浮かんできました

革ジャンの男が、店内でお婆さんを殺し、死体を奥の部屋まで運ぶ。
その時、店に入ってきた珂が帰るのをじっと待つ。
ようやく珂が出て行った後、毛布で包んだ死体を車に積む。
そこまで想像し終わったあと、現実に引き戻されます。
あの男が毛布にくるまれた人形のような物を車の後部座席に積んでいました。
珂は走り去って行くその車を眺めたあと、確信しました。お婆さんは殺されたんだと。

学校での休み時間。
珂の教科書には、あいつに袖を引かれページの外に出て消える、そんなパラパラ漫画が描かれています。
自作の漫画を見ながら、中国いた頃に祖父から聞かされた恐ろしい話を思い出します。
それはシィナンと呼ばれる妖怪に袖を掴まれた人間は死んでしまう、という話でした。
ただし「グンチューチュイ」と、唱えればその妖怪を追い払うことができる、と祖父は教えてくれました。

友達のいない珂でしたが、唯一珂に近づいてくるクラスメートが山内でした。
でも珂はこの男の顔のつくりから何まで好きではありません。
4年生の頃、ホームレスのお爺さんに悪戯した山内がお爺さんに叩きのめされていたところを、珂が助けたことがありました。
山内は傷を負った手の甲にガーゼを貼るようになりますが、それから半年経ってもガーゼを貼り続けていました。
珂はそんな山内を嫌っていました。ただただ気持ち悪い奴だと。
山内は珂の気持ちを知ってか知らずか、早く助けてもらった恩返しをしたい、と珂に話します。
珂は、仕方なしに殺されたかもしれない文房具店のお婆さんの話を聞かせてあげましたが、山内は信じませんでした。

放課後、珂は例の文房具店に向かいます。
自分の想像が当たっていることを祈りながら。
しかし、珂の願いは叶いませんでした。
お婆さんは殺されておらず、元気な姿を見せます。
珂はお婆さんが殺されたと思ったことを正直に話すと、お婆さんは、珂が誰にも話していないことを確認。
さらに、他言しないように釘をさしたあと、珂の家庭の事情などを根掘り葉掘り訊いてきます。

そのあと、早く帰るように促された珂が店を出ると、目の前にいたのは、山内でした。
珂は顔が引きつり、足が固まり動きません。
そんな珂を見た山内は「あの話がどうなったか、今度聞かせてね」と、言い残し去って行きました。
おそらく山内に見られた、あの気持ち悪い目で。
ショックを受けた珂は、山内に消えてもらいたい、と強く望みます。
そんな時、珂の目の前に再び現れた白い袖を揺らしたあいつ。
珂は赤い帽子を取り、今度はあいつの顔をしっかりと見ます。
ところが、あいつの顔は珂そのものでした。

翌日、珂は1人部屋にいる時、寂しさを紛らわせるためテレビをつけると、殺人事件のニュースが流れます。
そこに映しだされた被害者遺族は、あの文房具店のお婆さんと茶色の革ジャンを着た男の姿。
殺されていたのは、お婆さんの夫で、革ジャンを着た男のおじでした。
珂は興奮を隠しきれません。
その時、警察のふりをして珂を訪ねてきたのは、あの革ジャンを着た男でした。
そして布の袋に入れられ、車に放り込まれたあと、珂が連れて行かれた場所は、「弓投げの崖」でした。

 

第3章 絵の謎に気づいてはいけない 

十王環命会(ジュウオウカンメイカイ)の幹部、宮下志穂の遺体が見つかったのは、昨日の朝のこと。
第一発見者は十王環命会の蝦蟇倉支部の支部長、守谷巧(もりや・たくみ)。
3日間連絡のつかない志穂を心配した守谷が彼女のマンションを訪ねると、チャイムを鳴らしても、何の反応も返ってきませんでした。
そこで、マンション管理会社の社長、中川徹(なかがわ・とおる)に来てもらいます。

そしてドアを少し開けてもらうと、内側に背をもたれかけて座り込んだ志穂の遺体を発見。
志穂はドアノブから延長コードで首を吊っていました。
ドアにはわずかな隙間を開けただけで、守谷と中川は部屋の中には入っていません。

通報を受けてやって来たのは、隈島とコンビを組んでいた蝦蟇倉警察署の竹梨。
隈島と最後に受け持った梶原尚人撲殺事件から6年経ちますが、いまだに事件解決のめどは立っていません。
悪筆の竹梨は、隈島から頂いた水性のボールペンを見るたびにあの事件を思い出し、いなくなった人に思いを馳せることもあります。
さらに宮下志穂の部下、吉住が運転する車が「ゆかり荘」の前で起こした死亡事故。
「唯一の目撃者」の証言により、吉住は不起訴処分を獲得していました。

あれから6年の月日が流れた現在、竹梨がパートナーを組んでいるのは、新米刑事の水元(みずもと)。
現場には、鑑識課長を務めるシロさんも駆けつけていました。
自ら現場に臨場したのは、部下の鑑識官が全員出払ってしまっていたためでした。
シロさんは、遺体のそばにあった稼働停止した犬のロボットを見て、誰もが本物を欲しがるわけではない、と口にします。
シロさんは、7年前に病気で亡くした娘の忘れ形見の孫を引き取って暮らしており、そのシロさんにそぐわない言葉でした。
竹梨にも約12年前、遺書も残さず心の病気で妻が自殺する悲しい出来事を経験しており、シロさんの言葉に首を傾げます。

その後、守谷と中川への事情聴取を行ないますが、2人からは何も得るものがありません。
中川は大学時代、強盗に父親が殺され辛い経験をしてきましたが、こちらも事件とは無関係のようでした。
手掛かりとなるのは、遺体の服に付着していた枯れた桜の花びら。
どのようにして被害者の服に付着したのか実験を試みますが、こちらも無駄に終わります。

捜査が行き詰まる中、弓投げの崖の下で中川徹の遺体が上がり、海に繋がっている近くの河原で彼の手帳が発見されました。
そこには宮下志穂らしき遺体の絵が描かれています。しかしマンションで発見された時の体勢とは違っていました。
検視官によれば、宮下志穂の死体は動かされた形跡はなく、殺された時の体勢で見つかったとのこと。
もう1つの絵には、ドアの外に立っている中川と守谷と見られる2人の姿。
その絵の下には、「電話中に外した」と書かれています。
さらに「警察はいつでも業者に確認できる」「5000~1」と、謎の走り書きがしてありました。

その手帳には守谷の携帯電話の番号も書かれていたため、調べてみると、中川徹は死亡した日の午前中に守谷に電話を掛けていた事がわかります。
守谷に事情を訊くと、父親の死を引きずって生きてきた中川が、十王環命会に入会したい、と電話で言ってきたそうです。
ただし、マンションで会って以来、中川とは顔を合わせていないとのこと。

宮下志穂を殺した守谷が、それに気づいた中川を口封じのために殺した、と水元は、考えます。
しかし守谷の犯行を裏付ける証拠が1つも見つけることができません。
十王環命会は、これからも信者を増やして金儲けをするのか、と悔しさをにじませる水元。

ついに絵の謎の解明に近づいたラスト1ページに驚愕。

そして向かえた最終章で、それぞれの章の主要人物たちが集まり、驚きの真実が浮かび上がります。

 

感想

各章が終わるたび再読。
謎解きに夢中になれる楽しさがあり、最終章まで来ると、再び読み返したくなる、そんな仕掛けが施されていた物語でした。

章末の写真はサラッと流していましたが、ヒントが隠されていたんですね。気づかなかったです。

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