東野圭吾「秘密」あらすじ・感想!まさかのラストに胸が締め付けられる

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1998年に発売された東野圭吾さんの「秘密」。
その翌年に日本推理作家協会賞(長編部門)を受賞し、さらには映画化もされたことで、東野さんの名前が一気に広がった出世作です。

それではラストを秘密にしてあらすじを紹介します。

 

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あらすじ

今年40歳を迎える杉田平助。
妻の直子と娘の藻奈美(もなみ)を乗せたスキーバスが崖から転落したことをテレビで知り、東京から長野市の病院に駆けつけます。
妻の直子は外傷がひどく、小学5年生の藻奈美は意識が戻らない可能性が高い、と医師から宣告されます。

魂が抜けてしまったかのように崩れ落ちた平助。
集中治療室に入ると、並んで設置されている2台のベッドに直子と藻奈美が寝かされていました。
目を覚ました直子は、息も絶え絶えになりながらも11歳の娘を心配します。
隣りで眠る藻奈美の手を握らせ娘の無事を伝えると、安堵した直子は一粒の涙を流したあと、静かに息を引き取りました。

悲しみのあまり床にうずくまる平助。
家族の思い出が脳裏によみがえり、涙をこぼしたその時でした。

意識の回復は難しいとされた藻奈美の瞼がゆっくりと開きます。
ところが、事故のショックが強かったせいか、人形のようにぼんやりと一点を見つめているだけで、一言も口を開きません。

ようやく藻奈美の声を聞けたのは、それから数日経ってからのことでした。
平助は嬉しさのあまり、泣きぬれた顔のまま医師を呼びに行こうとしますが、突然、娘がおかしなことを言い出します。

自分は藻奈美じゃない、直子だと。

とても信じられない話でしたが、彼女の口調、泣いた時にみせる癖までもが、直子そのもの。
2人の初デートのことまで詳しく知っていました。
平助は書物をあさり、この不思議な現象について調べてみると、こうした事例は世界でいくつか報告されていました。
それによれば、いずれ藻奈美の意識が蘇るということでしたが、それは直子の本当の死を意味します。

複雑な心境に陥り、苦悩を強いられる平助。
他人に話しても精神異常者扱いされるだけです。
藻奈美として生きていく直子は、平助の妻であることを忘れないためにも、結婚指輪を入れたテディベアをいつもそばに置いておくことにします。
そしてそのことを平助と直子の2人だけの「秘密」ということにしました。

こうして始まった2人の新生活。

藻奈美の姿をした直子は学校へと通い、平助は新宿駅西口近くのホテルで行われた被害者の会に出席。
事故を起こした梶川運転手の妻の征子はやつれた顔をしていました。
亡くなった夫の代わりに頭を下げ、震える声で謝罪しますが、被害者遺族から返ってきた言葉は冷たい言葉ばかりでした。

平助はホテルを出たあと、めまいを起こして転倒した征子を家まで送り届けてあげます。
そこで知ったことは、征子は中学2年生の娘、逸美と2人暮しだということ。
逸美は前夫との間に生まれた子で、梶川運転手とは再婚同士だったということ。
梶川から渡される給料だけでは生活が厳しく、征子も働かざるを得なかったということ。
しかし梶川の起こした事故は、自ら超過勤務を希望して、寝る暇も惜しまず働いていたことが原因。
それならば相当な稼ぎがあったはずでしたが、征子は夫の給料を知りませんでした。なぜ彼は家族に秘密にしてまでお金が必要だったのか。

事故から3か月後 、梶川が前妻の根岸典子に毎月10万円以上のお金を送り続けていたことが判明。
それが原因だったのか、ここ1,2年で急に梶川家の経済状況はひっ迫していました
自分たちより前の家族を大切していたことを知り、逸美の心は傷ついてしまいます。

一方、順調に進んでいる直美の第2の人生。

直美が平助に訊きます。
夫婦の夜の営みはどうするのか、と。
当然平助は拒絶します。
心は妻でも体は自分の娘なわけで、こればかりは諦めるしかありませんでした。

直子の学校で行われる運動会に保護者としてやって来た平助。
直子の担任、橋本多恵子は20代半ばくらいの美人で、平助に好意をもっているように見えます。
平助は徒競走でゴールインした直子の姿をカメラに収めますが、最後の一枚に写したのは、ゴールのテープを持つ橋本多恵子の姿。
平助はその写真を隠しますが、偶然直子に見られてしまいました。
しばらく平助の胸に顔をうずめる直子でしたが、その写真について触れることはありませんでした。

事故から1年後 、直子は無事に小学校を卒業。
平助のもとに梶川征子の訃報が届いたのは、その翌日でした。
葬儀に参列した平助は、逸美から香典返しに梶川の懐中時計をもらいます。
事故で壊れていた蓋を直し、開けてみると、蓋の裏に子供の写真が貼られていました。

平助は梶川の前妻、根岸典子が梶川の死を知っているのか確かめるため、彼女とのコンタクトを試みます。
しかし、典子の息子の文也が放っておいて欲しい、と典子に会わせてくれません。
どうやら自分と母を捨てた梶川を恨んでいるようでしたが、梶川が前妻に仕送りをしていたこと、さらに文也の写真を肌身離さず持っていたことを伝え、その写真だけでも受け取らせました。

直子が高校受験に合格した頃、体で結ばれることができない夫婦は、再婚について話し合います。
「俺には直子がいる」と、言う平助に「ありがとう」と、答える直子。
他人には見えなくても、自分にだけに見える直子がいる。
それで十分に幸せだ、と平助は自分に言い聞かせます。

しかし、そんな夫婦の絆に亀裂が生じてきたのは、直子がテニス部の練習で帰りが遅くなり始めた頃でした。
平助は、男子生徒と一緒に汗を流す直子を考えただけでも心中穏やかでいられません。
直子のことを好きな生徒が現れると、嫉妬心を抱き、直子のプライバシーに踏み込むこともありました。

そして2人は激しく衝突します。
俺の妻であることを忘れるな、と平助。
小学校の橋本先生を好きになった時でも、直子を裏切ることはしなかった、と言い放ちます。
直子はぽたぽたと涙を落とし、2階へと消えていった後もすすり泣いていました。
その後は、新しい人生を楽しみたいという気持ちを抑えるようになった直子。
クラスの友人たちが計画したスキーツアーにも参加しないと決めます。

そんな中、平助のことを息子の文也から聞いたという根岸典子が平助のもとに連絡をしてきました。
典子の話では、文也は典子が結婚式の前に浮気してできた子供で、梶川に知られたのは、文也が小学2年生の頃でした。
一度も典子を責めることはなく、「すまん 父親のふりはできない」と、書置きを残して梶川は姿を消しました。
それでも文也が受験を迎えた数年前、大学に行かせる余裕がないなら自分が何とかする、と梶原から典子のもとに連絡が来ました。

梶川は文也が自分の子ではないと知った時、父親としての自覚が湧くかどうかばかり考え、自分が愛する者にとって幸せな道を選ぶ、 という考えがなかったことを後悔していました。
そして文也の学費を稼ぐために無理を強いて働いた結果、事故を起こしたのでした。
数日前に文也に打ち明けたときには、少なからずショックを受けていたと、典子は話します。
典子はこの後、梶川逸美にも全ての真相を話し、償いをしに行くとのこと。

平助は梶川運転手が言っていたという言葉を思い出します。

自分が愛する者にとって幸せな道を選ぶ ——。

それは平助もわかっていたつもりでした。
これまで一緒に歩いてきた直子は別の人生を歩きだしている。
これからは直子を藻奈美として扱い、自分は父親になろうと決意。
直子にスキーツアーの参加を許し、長い間苦しめたことを謝ります。
すると一瞬の間を置いたあと涙を流す直子。
部屋に閉じこもったあとも泣き続けます。

そして翌朝、驚くことに直子の意識が消えて、藻奈美の意識が目を覚ましますが、娘の記憶は事故を起こす以前のまま。

再び信じがたい経験をすることになった平助は、これまでの不思議な出来事を藻奈美に説明しますが、しばらくすると彼女の意識は再び直子のものとなっていました。
平助は直子に藻奈美が現れたことを説明すると、直子は素直に喜び、藻奈美と交換日記を始めます。

こうして藻奈美の意識が蘇るようになり、平助は喜びますが、同時に直子の現れる時間が少しずつ減ってきていることを心配します。

そんなある日、自分が完全に消えることを悟った直子は、藻奈美に頼み、平助を横浜の山下公園に連れてきてもらいます。

そこは平助と直子の初デートをした思い出の場所であり、平助もついにこの日が来たことを覚悟します。

 

感想

これは切ない。

直子が消えたところで十分切ないのに、さらに驚きと涙の結末を用意する東野さんはやっぱすごい。
特に平助が放ったラストのセリフに胸が締め付けられます。

でもやっぱ切ない。

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