カズオ・イシグロ「わたしを離さないで」あらすじと感想!生徒達が背負った残酷な宿命とは

小説

今年の10月5日にノーベル文学賞に選ばれた日系イギリス人作家のカズオ・イシグロさんは1954年11月に長崎県で生まれ、5歳の時に父親の仕事の関係で渡英しました。

今回はそのイシグロ作品「わたしを離さないで」を紹介します。

2005年に発表された小説「わたしを離さないで」は本国イギリスで100万部を越えるベストセラーとなっており、映画化もされました。
日本では2006年に和訳され、単行本として出版されました。去年には綾瀬はるかさん主演でドラマ化されています。

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あらすじ

物語の舞台となるのは1990年代末のイギリス。

語り手を務めるのは、31歳の女性、キャシー・H。 自身の半生を読者に対して直接語っていきます。彼女は病院(回復センター)で提供者と呼ばれる患者の介護をしています。

11年の介護人生の中にはヘールシャムで一緒に育った友人たちの世話をしていたこともありました。ヘールシャムとはキャシーが育った全寮制の教育施設のことで、物心つく頃から大勢の生徒と一緒に教育を受けて、暮らしていました。

ところが、ヘールシャムはかなり特殊な学校でした。
過剰なほど生徒の健康管理には目を配り、毎週のように健康診断を受けさせます。
外の世界からは孤立していて、生徒たちは敷地内から一歩も外に出ることは許されません。

そんな閉鎖的な学校の教師たちは保護官と呼ばれ、どういうわけか生徒たちが将来の夢を語ることを良しとしません。そのヘールシャムには年に数回ほど、外の世界からマダムと呼ばれる女性が訪ねてきます。

彼女は授業で生徒たちが作った焼き物や彫刻、絵画などから出来のいい物を選び外の世界に運び出してしまいます。
なぜマダムがせっかく作った作品を持っていくのか、生徒たちには、はっきりとしたことはわかりませんでした。

生徒の作品を頂いていくマダムですが、そのわりには生徒たちに冷ややかな目を向けてくるだけで、話すらしたことがありません。
キャシー達仲良しグループが8歳の頃、マダムのことで話題になったことがありました。

その時、グループの中の一人ルースが「マダムはヘールシャムの生徒を怖がっているのよ」と言い出しました。
誰もルースに賛同する者はいません。そこで、今度のマダムの来訪のときに、確かめることにしました。

確かめるといってもヘールシャムにやって来たマダムが、歩いて玄関に向かってくるところを、隠れていたキャシーたちがマダムの前に現れ通り過ぎただけでした。
ただそれだけのことでしたが、キャシー達が目にしたのは、体が硬直したマダムが必死に恐怖を抑えようとする姿でした。

強い衝撃を受けたキャシー達は自分たちが、外の人間とは違う特殊なものであることに気づき始めていきます。

15歳になったキャシー達グループは、ヘールシャムで最後の一年を迎えていました。

保護官のルーシー先生は体育館でキャシーや他の生徒たちを集め「あなた方は教わっているようで、実は教わっていません」と、意味不明なことを話し始めると「ここにいる生徒たちはある目的のために産み出された存在で、すでに人生は決まっています」と話を続けました。

ページ数はまだ120ページを過ぎた辺りですが、保護官のルーシーが生徒たちの出生の秘密や正体を早々に明かしていきます。
そしてキャシーはヘールシャムを卒業した自分と仲間達が、これから待ち受けている残酷な運命から逃げることなく、残された人生を精一杯生きていく姿を語っていきます。

感想

衝撃の事実を告げられたあとも慌てることなく冷静に受け入れる生徒たちの姿に、なにか切なさを感じ、非情な展開に少し疲れました。まさかと思わせるような結末ではありませんが、心が締め付けられるような、そんなラストでした。

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