東野圭吾「幻夜」あらすじ・感想!彼女と過ごした夜は全部幻だったのか

小説

2004年1月に単行本として発売された東野圭吾さん原作「幻夜」。
当ブログで「白夜行」をすでに取り上げていますので、姉妹作の「幻夜」もネタバレ無しであらすじを紹介しようと思います。

文庫本で854ページある「白夜行」には及びませんが、「幻夜」も779ページと読みごたえのある長編小説です。

 

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あらすじ

1995年1月17日、西宮。
一昨日の夜に自殺した水原幸夫(みずはら・ゆきお)の通夜が、幸夫の自宅で、しめやかに営まれていました。

自殺の原因は経営していた金属加工会社が借金を抱えて倒産したことでした。
弔問客が帰ると幸夫の息子、水原雅也(みずはら・まさや)のもとに叔父の米倉俊郎(よねくら・としろう)が、借金の催促にやって来ます。

幸夫は生前、俊郎に騙されて借金を負わされていました。
借用書を見せられた雅也は幸夫の保険から必ず返すと約束します。

それから夜が明ける頃。
突然襲ってきた大きな揺れに雅也の家は全壊してしまいます。
後に「阪神淡路大震災」と呼ばれる大地震でした。
運良く助かった雅也でしたが、周囲の家屋はすべて倒壊され、街の姿は変わり果てていました。

叔父の俊郎は建物の下敷きになってピクリともしません。
雅也は俊郎の上着から借用書を抜き取りますが、目を開け必死に口を動かしている俊郎に気づくと、近くにあった瓦で俊郎の頭を叩き割ってしまいます。
それは衝動的な行動でした。

すぐにその場を立ち去ろうとしたとき、目の前に若い女性がいたことに気づきますが、余震で地面が揺れると火災による煙で彼女を見失ってしまいました。
殺害場面を見られたかもしれないと、不安を抱えながら避難地の小学校に到着した雅也。

消防団員に被害状況を説明して俊郎の遺体が運ばれてきますが、警察には次々に運び込まれてくる遺体を詳しく調べている余裕はありませんでした。
そんな中、先ほどの女性が現れます。
彼女は警察の事情聴取で新海美冬(しんかい・みふゆ)と名乗り、両親の遺体のそばに座り込んでいました。

この後、美冬が暴漢に襲われそうになったところを助けた雅也は、避難所の体育館で朝を迎え、一旦家に戻りますが、食料は盗まれたあとでした。
雅也が落胆していると、美冬が現れ、避難所で配られたという握り飯を差し出してくれました。
雅也と同じ28歳だという美冬は、殺害場面を目撃したにもかかわらず、和やかに雅也と会話を続けました。

大地震から3日目。

俊郎の娘、米倉佐貴子(よねくら・さきこ)が奈良から被災地にやって来ました。亡き父との対面をした佐貴子は、俊郎の上着から借用書を探しますが、見つかりません。
知らないとシラを切る雅也が奪ったに違いない、と佐貴子は思いました。

今日のところは帰ろうとしたとき、体育館の前に張り出された震災直後の写真が佐貴子の目に留まります。
その写真の中の一枚に、崩れた雅也の家で俊郎の姿が映っていました。
頭が割れて死んだはずの俊郎の頭は血みどろにもなっていません。

次の日、佐貴子の内縁の夫、小谷が雅也に写真を見せ、生きていた俊郎の頭を雅也が割ったのではないかと問い詰めますが、この1枚では証拠として弱く雅也はしらばくれます。

しかし、その写真はビデオテープの一部をプリントアウトしたもので、後日にそのテープを持ち主から貸してもらえることになっていると言い残し、小谷は去っていきました。
もしそのテープに俊郎の頭を殴るシーンが映っていれば、雅也は言い逃れは出来なくなります。

追い詰められた雅也に声をかけてきたのは美冬でした。
あとで見て、と渡された袋の中には、液晶画面のついた家庭用ビデオカメラが入っていました。
再生してみると下敷きになってもがいている俊郎と雅也の姿も映し出されていました。

美冬は全てを知っていて雅也を助けてくれました。
暴行されそうになったところを雅也に助けられたことへのお返しだろうか。
どのようにして、佐貴子たちよりも先にテープを入手したのか。
訊きだせないまま、雅也は美冬に誘われ東京へ向かいます。

その後、佐貴子と信二は、ビデオテープの持ち主に連絡すると、テレビ関係者を名乗る女性にテープを貸したまま返ってこないということでした。

上京して来た美冬と雅也は別々の部屋を借りたあと、美冬は銀座に構える大手宝飾品店「華屋」に就職します。
雅也は美冬から勧められたフクタ工業に面接に行きますが、今は人手が足りていると、断られてしまいます。

ところが後日、従業員の安浦が、池袋で買った女にホテルで手を刺され重傷を負います。
フクタ工業は人手が足りなくなり、急きょ雅也の就職が決まりました。
フクタ工業は彫金の設備を完備していたので、雅也は美冬の注文に応じた指輪やペンダントを作ることができました。

社長の福田からは、正体不明の部品を作らされることもありましたが、高度な技術を持った雅也は福田の要望に応えていきました。

それからしばらくたった頃。

美冬の勤める「華屋」で、毒ガス発生事件が起きました。
店内に置かれた紙袋から発生したガスは確実に死に至るものではなく、犯人の目的は「華屋」の誰かを怯えさせることにあったのではないかと思われました。
警察の事情聴取で、美冬を含む5人の女性従業員がストーカー行為に遭っていたことがわかりました。

警察は5人の自宅に見張りを付けると、江東区にある美冬のマンションのメールボックスから郵便物を盗んでいた男を現行犯逮捕しました。
その男は、「華屋」のフロア長、浜中洋一(はまなか・よういち)でした。
美冬のことを恋人だと言います。

彼女に新しい男ができたと思い相手を調べようとしただけで、他の4人に対するストーカー行為については知らないとのことでした。
その話を美冬に聞かせても、浜中が嘘をついている、浜中とは何も関係ないと言います。

しかし、浜中の話はやけに具体的で、取り調べを行っていた警視庁捜査1課の加藤亘(かとう・わたる)には嘘をついているようには見えませんでした。
浜中の狙いは美冬だけで、他の店員に対してもう1人ストーカーがいて、そいつが毒ガスを発生させた犯人ではないかというのが加藤の見解でした。

毒ガス発生装置に使われた部品の加工の一部に、極めて高度な研磨仕上げが行われており、科捜研の見解では、犯人はモノ作りのプロかもしれないとのことで、浜中には到底無理だということもわかりました。
事件後の浜中は、証拠不十分とはいえ一旦は逮捕された様な人間で、会社から無言の圧力を受け辞表を届けました。

阪神淡路大震災から1年後。

震災で亡くなった新海武雄(しんかい・たけお)の元部下だった曽我孝道(そが・たかみち)が、武雄の娘、新海美冬の居所を探していました。
武雄の家族写真を何かの時に預かったままで、震災で亡くなった新海夫妻の代わりに娘の美冬にその家族写真を届けることが目的でした。

美冬の居所を探していくうちに、わかったことは、美冬が一昨々年の暮れに仕事を辞め、「慕っている女性」と海外に行ったということ。
そして約1年後、両親の住む西宮に帰ってきた次の日に、大地震に遭ったということでした。

さらに一昨年の正月に美冬から年賀状を受け取ったという人物からその年賀状を入手することに成功します。
そこには彼女の居候先の住所と電話番号が印刷されており、迷いましたが曽我は電話を掛けることにしました。

それからしばらく経った頃、水原雅也のところに封書が届きます。
差出人の名前は米倉敏郎。
便箋には、雅也に1000万円を要求すると書かれていました。
さらに、震災の日に俊郎を殴りかかっている雅也の写真も同封されていました。

すでに焼却している例のビデオテープの画面に酷似している写真を見て、雅也が思い浮かんだのは、俊郎の娘の佐貴子と、その内縁の夫である小谷でした。
脅迫状の差出人は彼らなのか。雅也は青ざめます。

ちょうどその時、雅也の部屋を訪ねてきた美冬に相談すると、彼女は「どんなことでもする覚悟ができてる」と、言います。
雅也はその発言の真意を理解しました。
ためらう雅也に「でも、あの時はできた」と、美冬。
「あの時」とは、雅也が俊郎を殺した時のことを指していました。

あれは間違いだったと思っている雅也に美冬は言います。
「あたしらは夜の道を行くしかない。たとえ周りは昼のように明るくても、それは偽りの昼。そのことはもう諦めるしかない」と。

そして、再度送られてきた手紙には、直接商品と代金の交換を行うとありました。
指定された日時は4月8日午後7時。
場所は銀座2丁目中央通りにある「桂花堂」という喫茶店でした。

約束の日、雅也と美冬は入店せずに、少し離れた所から店の中の様子を窺っていました。
7時を少し過ぎたあたりで美冬が米倉という客を呼び出すように「桂花堂」に電話を掛けます。

そのあと、店にいた客の男1人が店員に奥に案内され消えて行くと、すぐに戻ってきました。
美冬がすぐに電話を切ったからでした。

雅也と美冬は店を出たその男の後をつけますが、雅也の胸中には様々な疑問が渦巻いていました。
脅迫してきた男にしては、簡単に姿を見せ、店を出たあとも無警戒すぎると。
人違いをした可能性も考えますが、美冬が電話を掛けた時に反応したのは確かにその男でした。

やがてマンションに入っていった男を美冬が1人で追います。
5分ほどして戻ってきた美冬はその男の名前を確認したらしく、雅也に1枚のメモを見せます。

そこには「曽我孝道」と、書かれていました。

次の週、曽我孝道は妻の恭子(きょうこ)に今夜は帰りが遅くなると伝えます。
先週、喫茶店で待ち合わせをしていたところ、店に電話が掛かってきてドタキャンしてきた元上司の娘、新海美冬と会うということでした。

ところが夜になると、その美冬から恭子のところに話が来て、孝道が約束した7時になっても待ち合わせた店に現れないと伝えてきました。
結局その日は家にも帰ってこず、孝道はそのまま失踪してしまい、恭子は翌日、警察に向かいました。

「華屋」で起きた事件を担当していた刑事の加藤は、曽我の失踪事件にも新海美冬が絡んでいたことを不審に感じていました。

その間、新海美冬は「華屋」を退職すると、美容師の青江真一郎(あおえ・しんいちろう)を他店から引き抜き、美容室「モン・アミ」を開業していました。
「モン・アミ」は雑誌で紹介されると一気に人気店の仲間入りを果たすなど、美冬は勢いに乗ります。

美容室経営の他にも、「BLUE SNOW」という会社を立ち上げ、自分が元いた会社「華屋」と業務提供を結びます。
美冬がデザインした指輪は、「BLUE SNOW」にいる金属加工の職人さんが作ったと美冬はいいます。

斬新な造形した指輪を実に丁寧に仕上げており、「華屋」のスタッフも相当な技術に舌を巻くばかりでした。

一方、カリスマ美容師の青江は正真正銘自分の店を持ちたい気持ちが次第に芽生えてきて、美冬に独立したい意思を告げます。
厳しい表情を見せた美冬は必死に引き留めますが、青江の意思は固く一旦保留となりました。

それからしばらく経ったある日、青江は「モン・アミ」の女性スタッフが自宅近くの駐車場で襲われたことを、店にやって来た玉川署の刑事から知らされます。
さらに犯行現場に落ちていたというペンダントの写真を見せられると、それは青江の持っているペンダントと同じものでした。

青江は部屋に帰りそのペンダントを探しますが、見つかりません。
刑事は青江を疑い始めます。

事件の起きた夜、青江は美冬に呼び出されたあと自分の部屋に帰ったと刑事に説明しますが、その他にも様々な情況証拠が加わり、疑いは拭えませんでした。
事情聴取が終わると、濡れ衣を晴らしたい青木のもとに美冬から電話が掛かってきました。

何とか手を打つという美冬に、全てを任せることにした青木。
3日後、美冬から連絡が来ます。
数ヶ月前に行った六本木通りの料理店に開店直後に行くように言われました。
指示に従い、2週間ほど前にペンダントを忘れて行ったと店員に告げると、青木が無くしたものと同じペンダントを持ってきました。

早速青江は警察に連絡します。
警察は青江の供述の裏をとるためにその料理店を訪ね、青江の言葉に嘘がないことを確認しました。

全員が口裏を合わせいてる様子もなく、疑いが晴れることになった青木。
店にはお金は渡していないという美冬に、どんな手を使ったのか訊いてみますが、教えてくれません。
そのあと、美冬に深く感謝した青木は独立を撤回して、彼女についていくことに決めました。

「華屋」の異臭事件から3年。
曽我の失踪と、どちらも未解決のまま時間が過ぎていく中、美冬の正体に気づき始めていた刑事の加藤は、元・華屋のフロア長だった浜中を訪ねるなどして美冬の情報を集めていました。

そしてわかってきたことは、「華屋」の地位向上を目的に浜中を誘惑した美冬が、浜中のデザインした指輪が素晴らしいことに気づき、そのデザインを横取りしたということ。

美冬の家族が元々京都にいたこともわかり、浜中が勝手に震災直後の美冬の故郷の写真を撮ってきて、彼女に怒られたこともあったとのこと。

加藤は、失踪した当時の曽我の足取りも調べていましたが、美冬以外に疑わしき人物はいませんでした。
ただし、美冬が待ち合わせ場所の「桂花堂」にいたことも確認されていて、彼女が犯人である確証が掴めないでいました。

はっきりしていることは、浜中と曽我、どちらも美冬の過去に触れようとしたことで、彼女の前から姿を消すことになったということ。
曽我に至っては、生死さえも不明のままでした。

1999年、元旦。

1年前、上昇志向の強い美冬は、反対する雅也を説得して「華屋」の社長、秋村隆治(あきむら・たかはる)と結婚し、公私両面で「華屋」を掌握することに成功していました。
秋村家の親戚一同が美冬を好意的に見る中、隆治の姉の倉田頼江(くらた・よりえ)だけは不信感を抱いていました。

それは結婚式の日のこと。
いくら震災で人間関係が絶たれたとしても、新婦側の出席者がわずかな会社関係者だけで、親戚や友人が1人も来ないというのは理解できませんでした。
その他にも美冬に何か得体の知れない不気味さを感じていた頼江は、少し彼女のことを調べてみることにします。

美冬の生まれ育った京都に一緒に行こうと美冬を誘い、もし過去に何かを隠しているのならば、断るはずでしたが、美冬は月末なら行けると約束をしました。
するとその後、美冬は頼江を尾行して彼女の弱みを見つけてほしいと、雅也に頼みますが、その頃の雅也は美冬の愛情に疑問を感じ始めていました。

「本当に愛してるのは雅也だけ」と、いう美冬ですが、「華屋」の社長夫人になる目的だけで好きでもない男と結婚する彼女の言葉を本当に信じていいのか。
自分はただ利用されているだけではないのか。
過激を増していく美冬の要求が雅也の心を痛めつけることもありました。

そんな日々の中、雅也に好意を抱いている定食屋の娘、有子(ゆうこ)となら地味な生活の中にも幸せな家庭を築けるかもしれないと考える日もありました。
しかし、雅也はもう後戻りはできないと今歩んでいる道を突き進むことを選択します。

雅也は美冬に言われた通り頼江の後をつけますが、頼江が詐欺師に騙されそうになったところを助けたことで、彼女から感謝されることになりました。
雅也は美冬に相談し、頼江と親しくなる作戦に変更します。
それ以来、雅也は自分より一回り以上も年上の女性とデートを重ねていくようになりました。

そんなある日、頼江から京都である人物を調べたいから一緒についてきて、と誘われます。
ある人物とは美冬のことだと気づいた雅也。
美冬の出身地が京都だと知っているだけで、過去を語りたがらない彼女のことを雅也も調べたい気持ちがありました。

美冬には内緒で頼江と京都に行くことを決めます。
そこで雅也は頼江と別行動を取った時、美冬が卒業した小学校の元教師から彼女の秘密を知ることになりました。

一方、休暇を利用して、新海家がかつて住んでいた京都で驚くべきことを摑んでいた刑事の加藤。
美冬には影の協力者がいることにも気づいていました。
このあと曽我孝道の失踪の謎、新海美冬の正体が明らかにされ、衝撃のクライマックスを迎えます。

感想

「幻夜」で話題になったといえば、美冬が何者なのか「白夜行」の雪穂ではないのかということですね。
当記事では、記述しませんでしたが、美冬と雪穂の容姿は確かに似ています。
愛する女に尽くす男という図式も「白夜行」と共通しています。
その他にも「幻夜」は「白夜行」の続編と思わせる箇所がたくさん出てきますが、美冬の正体が雪穂であってもなくても、東野さんの考え方次第で後からどっちにでもできる作りだったと思います。
主人公の美冬は、雪穂と同様に手に入れたいものがあれば、人を騙し、罠にかけ、破滅させる。必要とあらば命も奪う。本当に怖い女性でした。
今作でも雪穂と同様に美冬の心情が綴られていませんが、正体がわからないぶん、謎めいた怖さは美冬の方があったかもしれません。
美冬ほどの策略家で人心掌握に優れていれば、悪事を働かなくても何かしら成功していたと思うんですけど、手っ取り早い方を選んでしまうのでしょうか。

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