東野圭吾「白夜行」異質のミステリー小説!あらすじ・感想

小説

今回紹介する作品は、言わずと知れた東野圭吾さんの名作「白夜行」です。

1999年に単行本で発売されたこの長編小説は、主人公2人の11歳から30歳までの成長する姿が綴られ、2002年に発売された文庫本では約850ページにも及んでいます。

2人の心理描写が一切なく、読み手に動機と目的を想像させるという手法が使われているのがこの作品の特徴です。

2人が接触する場面も書かれていませんが、どこかで2人が交差していると思わせる場面がたくさん用意されています。

 

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あらすじ

1973年10月13日の土曜日、大阪のとある廃ビルで死体が発見されます。
被害者は桐原洋介(きりはら・ようすけ)。
年齢は52歳で、質屋「きりはら」の社長でした。

昨日の金曜日、洋介が自宅を出てから行方がわからなくなると、今日の午後、廃ビルの中で遊んでいた近所に住む小学三年生が、洋介の死体を発見しました。
身体には数箇所の刺傷があり、大阪府警捜査一課の笹垣潤三(ささがき・じゅんぞう)が現場に臨場します。

身元確認のために、妻の弥生子(やえこ)も駆けつけて来ますが、夫の変わり果てた姿を見て泣き崩れてしまいます。
しかし、笹垣は「芝居じみている」と感じていました。

弥生子から一通り話を訊いたあと、笹垣は彼女を自宅まで送り届けます。
現場から1キロほど離れた所にある弥生子の自宅は一部が店舗になっており、「きりはら」で店長をしている松浦勇(まつうら・いさむ)が弥生子の帰りを待っていました。

笹垣は松浦とあいさつを交わし、洋介の行方がわからなくなった昨日の金曜日のアリバイを訊ねます。

そして捜査のために顧客名簿を借りようとた時、殺された洋介の息子、小学5年生の桐原亮司(きりはら・りょうじ)が2階から降りてきました。
挨拶もなければ、その顔に表情もなく、とても暗い目をした少年でした。

死体発見から2日後、再度「きりはら」に出向いた笹垣は、線香をあげさせてもらうため、家に上がらせてもらいます。
その時、2階へと続く階段の隠し扉を見つけると、なぜかその扉は2階からは開けられないように鍵が掛かっていました。

弥生子の話では泥棒対策のために夜だけ付けている鍵を、昼間の今もうっかり付けてしまったと言います。
しかし帰り際、桐原亮司の運動靴が置いてあるのを見つけた笹垣は、彼が今も2階にいることに気づきました。

扉に付いた鍵を見て笹垣は思います。
「少年は上で何をしているのだろう」と。

そんな中、洋介が行方不明になった金曜日に洋介が最後に会っていたのが西本文代(にしもと・ふみよ)という女性だったことがわかりました。
文代は夫を7年前に亡くしており、小学5年生の娘、西本雪穂(にしもと・ゆきほ)と二人暮らしでした。

文代は、金曜日に洋介が訪ねて来たことは認めましたが、笹垣の質問に慌てる素振りを見せるなど、怪しく感じられました。
ところが、新たに持たされた情報により、文代には被害者の死亡推定時刻にアリバイが成立していました。

文代の他にも松浦と弥生子のアリバイも確認が取れると、捜査は再び振り出しに戻ることに。
捜査陣に焦りの色が見え始めた頃、西本文代の部屋に何度も出入りしていた寺崎忠夫という男の情報が警察に持たされました。

寺崎なら、文代に付きまとう洋介を殺したかもしれないと、寺崎に対して徹底的な調査を行いました。
その結果、寺崎の心証は極めて黒に近いものでしたが、物証は何一つありませんでした。

すると翌月、寺崎が居眠り運転で死亡すると、その翌年の5月には、文代がアパートで亡くなっているところを、賃貸管理をしている不動産屋と娘の雪穂によって発見されました。

警察の調べでは、ガスコンロに掛け点火したまま、文代が居眠りをしてしまい、みそ汁が吹きこぼれ、火が消えたことでガス中毒を起こしたという事でした。

こうして質屋殺しの事件は、他に有力な容疑者も見つからないことから、2人の事故死によって捜査は事実上終結していきました。

あれから4年後 ——。

母、文代の事故で身寄りをなくした当時小学6年生だった西本雪穂は、父の従姉にあたる唐沢玲子に引き取られ、唐沢雪穂として暮らしていました。
それまでの貧しい生活から一変して、不自由のない生活や様々な教育を手に入れた雪穂は、上品な生徒が多いとされる精華女子学園中等部に通っていました。

雪穂は美しい容姿に加えて、成績もかなり優秀で、ファンクラブが作られていたほどでした。

そんな彼女は同性から妬まれることも多く、本当はひどい家庭で生まれ育ち、実の母は複数の愛人を作り、そのうちの一人が殺され容疑者にされたこともあると、悪い噂を流す者もいました。

雪穂は噂の発信源が誰なのか知りたがっていましたが、3年生で同じクラスの友人、川島江利子(かわしま・えりこ)から気にすることはないよ、と慰められていました。

そんな中、清華女子学園中等部の近くにある大江中学校3年生、菊池文彦(きくち・ふみひこ)は、同級生の桐原亮司を屋上に呼び4年前の質屋殺しの事件の真相に迫っていました。

菊池は、友人の秋吉雄一(あきよし・ゆういち)から借りたという4年前に撮影した町の写真を1枚、亮司に見せました。
そこには亮司の母と「きりはら」で働いていた松浦勇がホテルから出てくる写真が写っていました。

亮司の母が松浦と浮気していたとなれば、亮司の父を殺す動機が生まれてきます。しかし、その写真を突き付けられた亮司は、写っているのは自分の母親ではないと、一向に認めませんでした。

どうして菊池がそこまでして、事件にこだわるのか。
それは4年前の事件で、菊池の弟が死体を発見したことからはじまります。

被害者の洋介がその時に所持していた金がなくなっていることから、貧乏だった菊池の親が殺して、その死体を息子に発見させたと疑われたことが、菊池が事件の真相にこだわる理由でした。

その頃、清華女子学園中等部の唐沢雪穂と川島江利子は、塾の帰りに近道をしようとして街灯のない暗い道を歩いていました。
すると、同じ清華女子に通う3年2組の藤村都子が、身動きがとれない状態にされ、意識を失っているところを発見しました。

しかも上半身が裸で、下もスカート以外すべて脱がされた状態でした。
藤村都子は、救急車で運ばれていきましたが、とても口が利ける状態ではありませんでした。

容疑者に名前が挙がったのは、大江中学校の菊池文彦。
現場には彼が持っていたキーホルダーが落ちていました。
菊池はそんな所に行った覚えもないし、キーホルダーも簡単に落ちるものではなかったと証言しますが、事件が起きた時のアリバイが証明できずにいました。

菊池のクラスでは、その話題で持ちきりになっていましたが、菊池の疑いが晴れたのはそれから数日後のことでした。
雄一が、どうやってアリバイが証明されたのか、菊池に問いかけると、なぜか菊池はこの事について話したがりません。

さらに、例の写真のことについても完全に興味をなくしていました。
いったい菊池に何があったのか、雄一が戸惑っていたその時、亮司が自分を見ていることに気づきます。

その冷たく観察するような亮司の目に雄一は、一瞬寒気を感じました。

それから月日が経ち、集文館高校二年生に通っていた桐原亮司は、同じクラスの園村友彦(そのむら・ともひこ)に自給3300円のアルバイトの話を持ちかけます。

それは、30代と40代の女性を相手に売春をするというものでした。
友彦はその誘いに応じ、とあるマンションで、ふた回り以上年上の女性を相手に売春をしました。

その後、友彦は亮司を通さず、客の女性とホテルで行為に及んでいる最中、心臓に負担がかかりすぎたのか、相手の女性が死亡してしまいます。
相手の旦那が妻の浮気に気づいており、友彦の存在が警察に見つかるのも時間の問題でした。

それを知った亮司は、裏切った方が悪いと一旦は友彦を切り捨てようとします。
ところが、友彦がコンピューターに詳しいことを知ると、今度は彼を助けるため偽装工作を図り、彼は警察のマークから外れることになりました。

こうして亮司が悪の道に染まっていく中、高校二年生の唐沢雪穂はというと、家庭教師を雇い勉強に励んでいました。
勉強の合間、先生が大学の仲間たちと作ったゲームがあると雪穂に話すと、何故かそのプログラムを収めたテープを見たいと言い出すので、次の時に持って来て雪穂に見せてあげました。

するとそのゲームにそっくりなゲームが「無限企画」という会社から通信販売されていることに気づきます。
大学の仲間たちは犯人探しに躍起になっていましたが、先生はあの時の状況で、雪穂がプログラムを盗んで複製を作った可能性はないと彼女を信じていました。

その後、雪穂は大学へ進学すると、中学時代からの友人、川島江利子と同じダンス部に入りました。
江利子はダンス部の部長、篠塚一成(しのづか・かずなり)に惹かれていきますが、彼の伯父は日本の製薬メーカーでもトップ5に入る篠塚製薬の社長で、父親は専務をしていました。

そのうえ、彼には同じダンス部に倉橋香苗という彼女もいることから、自分には縁のないことだと思っていました。
ところが、多くの男子学生が美女の雪穂に夢中になる中、一成だけは江利子に恋愛感情を抱いていきます。

そして一成は、香苗と別れたあと、江利子に付き合ってほしいと言います。
一成の告白を受け入れた江利子は、それまで秘められていた美貌が開花されていき、周りの男子生徒からも注目されるようになっていきました。

幸せに浸る江利子でしたが、ある日を境に学校に来なくなってしまいます。
心配していた一成に、見知らぬ男から「倉橋香苗に成功報酬の金を払うように言っておけ」という電話が掛かってきました。

その後、江利子が何者かに襲われていたことを知った一成。
香苗が管理していた部費の金がキャッシュカードで引き出されていることを確認すると、そのお金で男を雇い江利子を襲わせたと推測します。

ここ数週間、香苗以外にカードに触れたことがあったのは、江利子から帳簿の計算をやらされた雪穂だけでした。
それ以来は香苗がカードを持ち続けていることで、犯人は彼女しかいないと確信します。

このことを公にして江利子を傷つけたくない雪穂に説得されて、一成は警察に届けることを断念したあと、江利子に頼まれたという別れのメッセージを雪穂から聞かされました。

一方、桐原亮司はというと、園村友彦と手を組んでから3年が経ったころ、偽のキャッシュカードを作り不正に貯金を引き出すなどの犯罪に手を染めていました。

東京に本社を置く東西電装に勤める高宮誠。
地主の息子で一等地にマンションを持っている誠は、性格も良く紳士的な男性で女性からの人気も高いようです。

誠が唐沢雪穂と付き合い出したのは大学4年の時で、同じダンス部にいた雪穂が誠に声をかけてきたのが始まりでした。
それから4年間の交際を経て、雪穂との結婚を間近に迎えていた誠でしたが、ひそかに派遣社員の三沢千都留(ちづる)に想いを寄せていました。

千都留のほうも誠と出会ったその日から、優しい彼に惹かれていましたが、自分には手の届かない人と思い諦めていました。
そして千都留は会社との契約が切れる明後日に、実家のある札幌へ帰るつもりのようです。

誠と雪穂の結婚式も明後日に控えていました。
そこで誠は千都留が帰る前日に両家の食事会を抜け出して、彼女が泊まるホテルに行き、すべてを犠牲にしてでも気持ちを打ち明けるつもりでした。

そして運命の日、千都留はホテルの正面玄関まで来たところで、警察に呼び止められると、ある事件の犯人が泊まっているため、千都留の部屋を捜査に使わせてほしいと言われます。

今夜は団体客の予約が入っていて他に部屋が空いていないとのこと。
代わりに近くのホテルを用意し、宿泊代も出すという条件だったので千都留は承諾しました。

そうとも知らず、誠は大学のダンス部で友人だった篠塚一成の協力を得て、食事会を抜け出してホテルに向かいました。
フロントを見ていると予約なしでも泊まれるくらい団体客なども入っていない様子でした。

そしてホテルマンから千都留の部屋は男の声でキャンセルがあったことを聞いた誠は、しょせん彼女とは縁がなかったものと諦め、雪穂との結婚に踏み切りました。

一時期、銀行カードの偽造に凝っていた桐原亮司。
現在、彼は園村友彦と休業状態に陥っている「無限企画」の復活を目指してパソコンショップ「MUGEN」を経営していました。

そこへ金城という男から、有名ゲームソフトの海賊版を作らないかと誘われますが、パソコンショップに力を入れている今は、危ない橋は渡らないようにしました。そんな2人の店に「きりはら」で店長をしていた松浦勇が訪ねてきます。

松浦は現在、違法商品専門のブローカーをしていて、金城と繋がっていました。
それで説得係としてここへやって来たのでした。
今回はそんな松浦の誘いに乗ってしまった亮司。

さすがに危険だからと友彦を巻き込まずに、ひとりでやることにします。
しかし結局は、警察から追われるはめになり、友彦にも桐原の行方が分からなくなりました。

一方、高宮誠と結婚した唐沢雪穂は、誠の土地を売ったお金を使い、輸入服を扱うお店を経営していました。

結婚してから二年半。
雪穂にゴルフ教室に誘われ、誠は雪穂と説明会に行くことに。
すると突然、お店でトラブルが起きたと言い出し、雪穂が誠を一人残して帰って行きました。

釈然としない誠でしたが、なんとそこで、三沢千都留とばったり再会します。
話を聞いてみると誠が受講しようとしている同じ初心者コースに千都留は通っていました。

偶然の再会に胸が高鳴る誠。
家に帰ると、雪穂は仕事の関係でゴルフ教室には通えなくなったと言い出し、誠だけでゴルフ教室に入会することになりました。

その頃、誠の会社では自社開発のソフトが盗まれたかもしれないと、騒ぎになっていました。
犯人は社内の人間とは限らず、外部から会社に侵入した者が、IDとパスワードを手に入れ、データを持ち出した可能性も考えられていました。

会社からは、IDとパスワードは人目に付く所に書かないように言われていましたが、誠は迂闊にも従業員証の裏に書いていたことに気づき、すぐに消しておこうと思いました。

それからしばらく経ったある日。
誠が家でお酒を口にすると何故かいつもより苦い味を感じました。すると、ひどい眠気に襲われ、気づくと夜が明けていました。

ひどい頭痛に襲われながらも片目に眼帯をしていた雪穂に声をかけると、昨夜酔っぱらった誠に暴力を振るわれたと言い出します。
誠は全く思い出せませんが、とりあえずその場は謝罪しました。

後日、弁護士の所に相談に行った雪穂。
様々な場所で密会している誠と千都留の写真を出します。
この女性と付き合うようになってから誠は暴力を振るうようになったと、涙ながらに訴えるのでした。

雪穂が誠と別れてから3年後。
29歳になったていた雪穂は篠塚康晴(やすはる)と交際中でした。
康晴は、篠塚一成の従兄で近い将来、篠塚製薬を背負って立つほどの人物です

そんな康晴を心配して、一成は探偵の今枝直巳(いまえだ・なおみ)に彼女のことを調べてほしいと依頼します。
今枝に理由を訊かれた一成は、彼女には何か得体の知れない不気味さを感じると言います。

彼女と深く関わった人間は皆不幸な目に遭っているとも。

このあと、探偵の今枝が命を懸けて調べた唐沢雪穂の裏の顔、友人の江利子が雪穂から離れようとした理由などが、わかってきます。

さらに、時効が過ぎても事件の真相を追う刑事の笹垣潤三。
彼が長年追い続けてきてきたのは、雪穂だけではなく桐原亮司もその一人でした。

雪穂とは別々の人生を歩んでいるはずの亮司。
ところが雪穂の周辺で起きてきた数々の不審な出来事や事件の背後には、必ず亮司の影があることを見つけ、彼を追い続けてきました。

そして質屋殺しの事件から19年。
この老獪な元刑事によって、雪穂の周りで起きてきた犯罪の真相を推理されていくと、20年近くにも及んだ雪穂と亮司の物語は、いよいよクライマックスに向けて動き出します。

感想

東野圭吾さんの代表作の1つ「白夜行」。
雪穂と亮司が背負った人生はまさに白夜の中を歩いていくようなものでした。

2000年には直木賞候補になりましたが、惜しくも落選。
あえて主人公の内面を明かさないという手法は、宮部みゆきさんの「火車」を想起させ、周囲の視点から二人の内面を読み解くところにこの作品の面白みがあると思うのですが。

それにしても恐ろしい女性を描くのが得意な東野圭吾さん。
この作品でもその力を存分に発揮されています。
雪穂の近くで事件が起きるたびに、どこか冷淡な印象を受ける彼女が怖かった。

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