湊かなえ「ブロードキャスト」挫折と成長を描く青春小説!あらすじ・感想

小説

今週発売された湊かなえさんの最新作「ブロードキャスト」。

新聞に連載されていたものを単行本化したもので、序章から始まり第1章~第5章、そして終章で構成された青春小説です。

今回も極力ネタバレを避けて、あらすじを紹介します。

 

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あらすじ

町田圭祐(まちだ・けいすけ)が小学生の頃に行われた市の陸上大会。

圧倒的な強さで優勝する同い年の山岸良太(やまぎし・りょうた)は、圭祐が理想とする選手でした。
その良太と同じ市立三崎中学校に入学した圭祐。
憧れの良太に誘われ陸上部に入部すると、種目でも良太と同じ長距離部門に選ばれました。

努力を重ね続けた圭祐たちは、3年生になる頃には、全国大会出場も夢ではないレベルに達していました。
ところが、そんな矢先に良太が両ひざを故障してしまいますが、夏休みの前半に手術を受け、2学期から復帰できたため、秋の駅伝大会には間に合わせることができました。

それでも地区予選大会のメンバーから、大事をとって外されましたが、圭祐を含む他の部員の頑張りもあり、見事優勝を果たしました。

そして、県大会一週間前の練習後。

メンバーが発表がされると、良太の名前は呼ばれず代わりに呼ばれたのは、2年生の田中でした。
動揺する圭祐をよそに、ひょうひょうとした表情の良太。
顧問の村岡先生の話では、良太の膝を心配してのことでしたが、今では毎日練習をこなし、昨日の3000メートル走でも1位でした。

ではなぜ良太は外されたのか。

田中の父親が今年いっぱいもつかどうかの病気で、先生の情けがあったのではないかということでした。
先生に抗議しに行こうという圭祐に、良太は県内有数のスポーツ強豪校の私立青海学院高等学校から推薦を受けていて、そこで全国を目指すから「もういいやって」思っていました。

迎えた県大会の日。

最後の全国大会へと繋がる大事な大会でしたが、1位のチームに18秒差で負けてしまいました。
悔しさが残る圭祐は、良太に誘われ青海学院を受けることに決めます。高校で良太と一緒に全国大会を目指すために。

青海学院高等学校 入学式の日。

この日、高校生となった圭祐は、同じ三崎中出身の宮本正也(みやもと・まさや)から声をかけられ、一緒に昼食をとることに。

脚本化を目指しているという正也は放送部に入部して、ラジオドラマを作りたいと語ったあと、圭祐も一緒に放送部に入らないかと誘ってきます。
なんでも圭祐の声が気に入ったらしく、正也の作るドラマで声優をしてもらいたいとの事でした。

高校では部活をしないと決めている圭祐は、即答は避けました。

青海学院の合格発表の帰り道で事故に遭い、足に重傷を負ったことで、青海学院で陸上部に入るという夢が破れた圭祐。
絶望に打ちひしがれている今、「陸上で得られた充足感を放送部では、得られるわけがない」と、考えていました。

入学二日目。

体育館で行われた新入生オリエンテーション。
陸上部の紹介を聞くことは、圭祐にはとても辛いもので、涙がこぼれ落ちそうになります。

必死に涙をこらえていると、陸上部の次に壇上に上がったのは放送部を紹介する女子生徒でした。

「テレビドラマ、ラジオドラマ、テレビドキュメント、ラジオドキュメントの4部門の作品を作り、毎年全国大会が行われるJBKのコンテストに応募します」と、説明する彼女の声はとても心地良く、圭祐の耳から頭の中心までに届き広がっていきました。

オリエンテーション終了後、椅子の片づけをしている圭祐のもとに良太がやって来ました。圭祐の交通事故とはまったく無関係のはずなのに、罪悪感を感じている様子の良太。

圭祐からかけられた「陸上がんばれよ」の一言に泣きそうになっていました。

圭祐は良太との会話のあと、入部するつもりがなかった放送部に見学へ行こうと思えるくらい前向きになっていきます。

放課後、圭祐は正也と一緒に放送室に行くと、テレビドラマを作っているという3年生のアツコ、ヒカル、ジュリ、スズカ、月村(つきむら)の女子5人がいました。見学に来たことを伝えると、放送部部長をしているという月村からJBK放送コンテストに応募するテレビドラマに男性が足りないので出てほしいと、頼まれます。

男性部員はいないんですか?と、正也が訊くと、2年生に男性はいると言います。しかし「ドラマ作品製作」は、3年生が担当し、「ドキュメント作品製作」は2年生が担当していて、2年生の4人は、ドラマ作りには非協力的とのこと。

脚本家志望の正也は断ろうとしましたが、一度だけということで引き受けると、自動的に圭祐までメンバーに加えられているようでした。

その帰りに「頼む、放送部に入ってくれ」と、正也から拝むように頭を下げられた圭祐は、放送部に入ることを決めました。

放課後に撮影を控えたこの日。

昼休みに圭祐と正也は屋上へ行き、月村部長に渡されていた「チェンジ」の脚本の感想を互いに述べていました。
パクリと言わないまでも、あまりにもオリジナリティに乏しい内容で面白くないと、意見が一致。

そして放課後、撮影場所に着くと圭祐と正也は、3年生の5人とリハーサルを行ったあと、本番が始まりますが、いきなり新入部員の正也が先輩のヒカルの芝居について淡々と意見を述べ始めました。

他の先輩たちも集まって、ヒカルと話し合いがあったあと、撮影が再開。
ところが自分の演技が否定されたあとに、新入部員2人が上手な演技を披露し、悔しかったのか「わたしは降りる」と言い残し、去っていきました。

急遽、代役探しをすることになり、正也は圭祐に久米咲楽(くめ・さくら)を放送部に誘いたいと話します。
久米は圭祐と同じクラスにいる女性で、隠れて弁当を食べている物静かな子でしたが、正也が彼女の柔らかくて透明感のある声を気に入っていました。

さっそく、久米に会いに行き、勧誘を始めた二人でしたが、久米は最初から放送部志願だということでした。
アニメオタクの久米は、青海放送部のOBで声優の小田祐輔に憧れ、小田の後輩になりたいと思っていたそうです。

圭祐と正也は久米を連れて放送室にいる先輩たちに代役を見つけてきたと報告に行くと、ヒカルがやっぱりみんなと一緒にやりたいと泣き始めました。
すると先輩たちが駆け寄り、肩に手をのせたりして、ヒカルを温かく迎え入れていました。

青春ごっこを見せられた感じになった圭介たち一年生の3人。
圭祐と久米は新しい役が用意され、正也は脚本の変更作業に加えてもらうことで落ち着き、ドラマ制作は再開されました。

そして、演技は先輩たちからも褒められるほど上達していく圭祐。
「チェンジ」の脚本を書いた3年生のスズカと改善案を出し合いながら進めていく正也。
リハーサルの段階からスタートの合図が出ると、ガラリと豹変する久米。
1年生に負けじと頑張るようになったヒカル。

青海学園放送部は、JBKに向けて走り出しました。

4月の最終週の連休が始まる前日。

今回、ドラマ部門はテレビドラマ一本に絞ると聞き、ラジオドラマの枠が空いているなら、今月中に脚本を仕上げるからやらせてほしいと正也が申し出ます。
すると正也に鼓舞されたのか、制作をあきらめていた3年生たちがやる気を出し、ラジオドラマを作ることになりました。

そして、正也が連休を利用して作ってきた作品「ケンガイ」。

物語は「ケンガイ」という謎の症状を発症すると、その人物の半径一キロ以内が携帯電話の圏外になってしまうというもので、主人公の男子高校生の妹と友人がその「ケンガイ」を発症してしまい、その発症原因を主人公が突き止めるという話。

「ケンガイ」でテーマとなるのは、SNSを使用したいじめの問題ですが、そのネタもとになったのは久米でした。
久米がSNSによるいじめに苦しんでいることを知った正也が、イジメをみんなで無くそうと考えて作ったのが、「ケンガイ」でした。

そして、脚本を読んだ2年生もそれまでは、ドラマ作りに非協力的でしたが、この作品に参加したいと言いだし、Jコンに向けて放送部はまとまっていきました。

週明け、月曜日の朝。

春の高校総体地区予選の結果報告のため全校集会が行われました。
良太の名前が呼ばれると、圭祐の中には嬉しいという気持ちを別の感情が覆い隠そうとしていました。

放課後、落ち込んでいる圭祐に気づいた正也が「達成感って何だと思う」と、訊くと圭祐は「正直分らない」と答えました。

もし「ケンガイ」で全国大会に行くことができたら、圭祐は達成感を得ることができるのでしょうか。

ここまでが第3章になります。このあと第4章、第5章と続き、そして終章では、中学最後の駅伝の県大会で良太をメンバーから外した真実が語られたあと、jコンの結果、圭祐の大きな決断で締めくくられます。

感想

本作は主人公の少年が挫折の先で迷いながらも次の夢に向かっていく姿を描いた感動の青春小説で、イヤミスとは程遠いさわやかな終わり方でした。

謎解きの要素はなかったですが、村岡先生が良太を県大会のメンバーから外した本当の理由を知る終章には心動かされます。

湊かなえさん初の続編を期待したい一冊でした。

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