道尾秀介「貘の檻」あらすじ・感想

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あらすじ

物語は昭和59年、主人公の大槇辰男(おおまき・たつお)が小学三年生の息子、俊也(しゅんや)と月に1度の面会をしているところからはじまります。

過去の辛い記憶がトラウマとなり、そのトラウマが悪夢になり辰男を苦しめていました。
辰男は悪夢から逃げるため「ゆうべの夢は貘にあげます」というおまじないの言葉と、不正に入手した薬を使い、辛い記憶を封じ込めていました。

家庭や仕事も失い、薬が残りわずかとなり、息子との最後の時間を過ごした後、自殺をするつもりで駅に向かいます。

そこで辰男を見つめる一人の女性が先に電車に飛び込み自殺をします。
その女性は、32年前に辰男の父、石塚充蔵(いしづか・じゅうぞう)に殺されたと思われていた曾木美禰子(そぎ・みねこ)でした。

33年前に充蔵は山中で事故を起こし、大怪我を負ってしまいました。
直後から、やさしかった充蔵は人が変わったかのように辰男の母、とき子に暴力を振るうようになります。

性格が乱暴になった充蔵は農業組合の組合長を殺した容疑と美禰子の行方不明の件で警察に追われることになってしまいます。

そして穴堰(あなぜき)に隠れていた充蔵は水にのまれ、遺体として発見されますが、美禰子の遺体は発見されませんでした。

その美禰子は生きていたのなら、どこで何をしていたのか?
なぜ辰男が見ている前で、辰男がしようとしていた同じやり方で自殺をしたのか?
謎が残ります。

息子を預かることになった辰男は真相を知るべく、息子を連れて32年前に事件の起きた辰男と美禰子の故郷である長野県O村に向かいます。

途中、彩根(アヤネ)という一人の怪しいカメラマンと出会います。

辰男は悪夢に苦しみ自殺しようとしていた男です。
どういうわけか彩根の父も彩根が生まれてくる前に悪夢に苦しみ自殺したと言います。
さらに辰男のことを写真で見た父と似ていると、おかしなことを言い出します。
いったいこの男は何者なのでしょうか?

そしてついには、息子の俊也が何者かにさらわれる事件が起きたり、この村に来ていた母のとき子が命を絶つことになったりと、最悪な事態が次々に襲って来ます。

辰男はそれらの真相を突き止めるために、32年前に起きた自分を苦しめる忌まわしい記憶と、対峙していく決意をします。

感想

今年の1月に新潮社から文庫化された道尾秀介さんの「貘の檻」を読了しました。
情景描写はさすがでした。

地方色豊かな方言は田舎の雰囲気もよく出ていて、嫌いではないのですが、少し難しい言葉が多かった気もします。特に蜂追い名人の岡田の歌はさっぱりわかりませんでした。

事故の後に豹変した辰男の父、充蔵の謎も明かされることになるのですが、その真相を知った辰男の母、とき子の気持ちは計り知れないものがあると思います。
振り返ってみると充蔵もかわいそうな人だったのかもしれません。

みんなの嫉妬や誤解が悲劇を生んでいく姿は、なんだかやりきれない気持ちでした。
犯人当ては、登場人物のすべて怪しく見えましたが、だいたい予想はつきました。

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