有川 浩「アンマーとぼくら」あらすじ・感想!沖縄はキミに時間をくれた

小説

今回紹介する作品は、作者の有川浩さんが自身の最高傑作と評した「アンマーとぼくら」。
本作は沖縄出身のロックバンド・かりゆし58の「アンマー」から着想を得て描いた長編小説です。
ちなみに「アンマー」とは沖縄の方言で「お母さん」という意味だそうです。

 

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あらすじ

物語の主人公は北海道出身のリョウ。
両親の馴れ初めは自然写真家だった父が母のいる北海道を訪れた時でした。
そのまま北海道に移り住んだ父が母と結婚し、幸せな家庭を築きますが、リョウが小学4年生の時に母は病気が見つかり入院します。
リョウは母方の祖母と頻繁にお見舞いに訪れますが、対照的に父はあまり母に会いに行こうとしません。
たまに見舞っても母とリョウを放ってどこかに行ってしまいます。
「病気になったお母さんはいろいろと面倒くさいから嫌いになったのか」と、リョウは父の母に対する愛情に疑いを感じるようになっていました。

そして、母の最期となった日。

今際の際に、母は吐息のような声でささやきました。
「リョウくん、お父さんを許してあげて。お父さんは、ただ、子供なだけなのよ」それが母から息子への最期の言葉でした。
そろそろ危ないと聞かされていたにもかかわらず、長期の撮影旅行に出掛けていた父。ようやく戻ったのは通夜の始まる前。
棺の中で眠る母を見て号泣する父に親戚の目は冷ややかなものでした。

母が亡くなってからの父は、撮影で沖縄に行くことが増え、すっかり沖縄のとりこになると、北海道を軽んじる発言が出てくるようになりました。
リョウが5年生になる春休みにはリョウを沖縄に連れて行き、新しいお母さんになる人を紹介します。

晴子という綺麗な女性でした。

晴子は沖縄に来たリョウをリョウくんと呼び、暖かく迎え入れますが「リョウくんて呼ぶな!」と、激高されます。
それは母が最期にリョウに呼びかけた母の呼び方でした。
リョウが母を亡くしてから一年ほどしか経っていないことを知らなかった晴子。
リョウの気持ちを考え再婚はもう少し後にしましょう、とリョウの父に話しますが、すでに札幌の家を売却済みで沖縄に引越す準備が出来上がっていました。
母との思い出が詰まった家を一言も相談されずに売り出されたリョウは、父と大喧嘩になります。

妻想いで気遣いのできる父ですが、息子の気持ちには無神経でした。
正反対にリョウの継母となった晴子は、リョウのことも一生懸命考えてくれる優しい女性でしたが、夫の連れ子はなつこうとしません。
それどころか、リョウは継母と沖縄が嫌いになっていきます。
望まない土地に連れて来られて、むりやり新しいお母さんをあてがわれて、父からうつされた無神経な言葉を使い、せっかくできた沖縄の友達も離れていってしまう。

全てが嫌になり、祖母のいる北海道に帰るためのお金を郵便局で下そうとしますが、不審に感じた職員に捕まります。
リョウを引き取りに来た継母は「そんなにおばさんのこと嫌だった」と、涙を流します。
いつも笑顔の継母がこんなにも傷ついていることを知ったリョウ。
父のどこが良かったのか尋ねると、2人の馴れ初めから、言いたくなかったに違いないことまで打ち明けてくれました。
その話から父のことを愛していることが伝わってきます。
次第に暖かくて優しい継母に打ち解けていったリョウは、琉球王国最高の聖地、斎場御嶽(せーふぁうたき)を案内してもらうことになりました。

迎えた日曜日。
リョウと父と継母は、斎場御嶽へ向かう道の途中で、ぶちの猫を見つけます。
父が民家の中にまで追跡しようとしたところで継母に止められますが、今度は黒い猫を見つけ、はしゃいだ父がまた追いかけ始めます。
リョウは小学生の自分より幼稚な父を見てあきれていました。

それから月日が流れ、32歳のリョウは那覇空港のベンチでうたた寝をしていると、50歳を少し超えた継母の晴子が迎えに来ました。
ところが目を覚ますと、どうして自分がここにいるのか思い出せません。
戸惑いながらも、親孝行のために3日間休暇を取り、東京から帰省したことを思い出します。
ただし、東京のどこに住んでいて、どのルートで羽田空港まで行ったのか、さらには自分の職業までが記憶から抜け落ちたままでした。

実家に到着すると父親の遺影が飾られた仏壇に手を合わせます。
それまでリョウは帰省しても日帰りで東京に戻ってしまい、継母に寂しい思いをさせていました。
今回は親孝行に専念するつもりで、昔家族で足を運んだ思い出の地を3日間巡ります。

まずは琉球王国最高の聖地、斎場御嶽(せーふぁうたき)。
継母は、リョウを初めてこの地に案内した日、帰りに感想を訊ねたが、そっけない返事をされ残念だったと言います。
しかしそれは、あの頃のリョウがまだ素直になれていないだけの事でした。
本当はすごく感動していたことを伝えたいリョウは、この聖なる地で不思議な体験をします。

それは1人で歩いている時のこと。
民家に侵入したぶちの猫を追いかけようとして、継母に止められている父を目撃します。
強烈な既視感なのか、今度は父が黒い猫を追いかけ、継母と子供の頃のリョウがその後を追います。
まさにあの日の家族の光景でした。
3人とも30歳を過ぎたリョウに気づきません。
すれ違いざま、リョウは衝動的に子供のリョウの手を掴みますが、驚いた様子はありません。リョウは継母から感想を訊かれたら、素直に答えるように子供のリョウに頼みます。

すると「言いたかったことは、今の君が言えばいい」と、大人口調で言葉を返す子供のリョウ。「過去は変わらない。変えられるのは、今だけだ」

リョウは我に返った後、緊張しながらも継母に伝えます。
初めて御嶽に連れて来てもらったあの日、本当はすごく感動していたことを。
それを聞いた継母の笑顔を見ることができたリョウですが、いまだに抜け落ちた記憶の一部が戻っていません。

いったいリョウに何が起きているのか。タイムリミットは3日間。
感動の結末を迎えます。

感想

本作で終始感じたのは継母の人の良さ。
夫を亡くしたあとも、夫の連れ子に対する愛情は変わらず、夫の亡き前妻にまで気遣うことができる継母に心が温かくなりました。
父親は妻想いではありましたが、息子の気持ちには無神経なところがあり、少し嫌な気持ちにさせられました。
それでも終盤には、父の想いを知ったリョウも号泣しているし、まあよかったかなと。
泣くまいと思いつつも涙がにじんで視界が曇ってしまいました。

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