ピエール・ルメートル「その女アレックス」あらすじ・感想!女の秘密が明かされた時、全てが一変する

小説

今回ご紹介する小説は、2014年9月に翻訳出版されたピエール・ルメートルの「その女アレックス」です。
この作品はルメートルの本国フランスのみならず、英米でも大絶賛されましたが、日本でもミステリランキングを独占し、多くのミステリ評論家から高い評価を受けました。
ちなみに本作は、著者のデビュー作「悲しみのイレーヌ」のネタバレを多く含んでいます。
未読の方は「悲しみのイレーヌ」を先に読んでおくことをお勧めしますが、当ブログでは前作と本作の両方のネタバレに注意してあらすじを書いおります。

 

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あらすじ

物語の舞台はフランス・パリ。
アレックスは非常勤の看護師として働いている30歳の女性です。
人のために何かをすることが好きな彼女にとって、看護師の仕事はまさに天職でした。
美しい容姿を兼ね備えていますが、順風満帆な人生を歩んできたわけではありません。誰にも言えないコンプレックスがあり、強い変身願望を抱いていました。

この日も看護師の仕事を1つ終えたあと、ウィッグ専門店で多種多様なウィッグを試着。
別人になれた気分を味わうアレックスでしたが、ふと店の外に目をやると、1人の男性がいることに気づきます。
年齢は50歳くらい。その男を見かけたのは、今日だけでも3度目。
一度目は地下鉄で移動中の時でした。
奥の車両にいたその男と偶然目が合うと、男が笑みを浮かべていました。
アレックスはその男に見覚えがありません。

地下鉄を降りた30分後にも大通りで彼を見かけています。
美しいアレックスに惹かれ、後をつけてきたのでしょうか。
不安に駆られるアレックスは男の姿が消えたことを確認し、店から退出。
食事を済ませたあと、辺りはすっかり暗くなっていました。
徒歩で帰路に就き、自宅付近に差し掛かると、進路前方に白いバンが歩道を乗り上げ停車。

現われたのはあの男でした。
アレックスは激しい暴行に見舞われたあと、バンの荷台に蹴り込まれ、両手を縛られてしまいます。
そしてアレックスを乗せたバンはその場から逃走。
その一部始終を目撃した通行人が警察に連絡し、パリ警視庁犯罪捜査部のカミーユ警部が現場に臨場します。

目撃者の証言は、見知らぬ女が見知らぬ男に白いバンで連れ去られるところを見たというだけで、信憑性は定かではありません。
それでも現場には被害者が暴行を受けた痕跡が見つかり、急発進して去っていく車の音を聞いた、歩道に乗り上げたバンを見た、といった近隣住民の証言も得ていました。
カミーユは4年前に起きた誘拐事件を担当して以来、この種の事件から距離を置いてきましたが、今回は被害者を救うことだけを考え、以前チームを組んでいた部下たちとともに、捜査に全力を注ぐことにします。

一方、気を失っていたアレックスが意識を取り戻すと、そこは倉庫のような場所で、光が上から注いでいました。
雨漏りがするのか、コンクリートの床が冷たく濡れていて、凍えた身体は恐怖心と相まって震えが止まりません。
やがて姿を現した男に手足の拘束を外されたあと、衣服を全て脱ぐように命じられます。
抵抗をあきらめたアレックスは寒さに耐えながらも全裸になり、男に体中をくまなく観察されます。

男の隙を見て逃走しますが、出口はレンガで塞がれていて外に出られません。
あっけなく男に捕まり、再び容赦ない暴力を受けます。
部屋に連れ戻されたアレックスは、格子状の木箱の中に閉じ込められてしまいます。
あまりの狭さに、ひざを抱えて体を丸めた状態になり、身動きが取れません。
無理に姿勢を変えようとすると、細かく裂けた木箱のトゲが裸の体に刺さってしまいます。

男はそんなアレックスが苦しむ様を堪能。
木箱に結び付けていたロープで木箱を目線の位置まで吊し上げ、携帯電話のカメラでアレックスの姿を撮ります。
すると男は自分の作品に満足したのか、今度は木箱を2メートルほどの高さまで上昇させたあと、うれしそうな顔で部屋を去って行きました。

アレックスは静まり返った部屋の中で、これは箱ではなく檻だと気づきます。
腰や足を伸ばすことはおろか、顔を上げることもできないほどの狭い檻です。
このまま長時間入れられたら、アレックスの身体が精神もろとも破壊されかねません。
それからどれくらい時間が経っただろうか。
戻ってきた男は、アレックスを観賞したあと、再び携帯で写真を撮り部屋から出て行きます。

一体何が目的なのか、アレックスにはわかりません。
写真を撮り、部屋を出て、しばらくするとまた写真を撮りにやって来る、その繰り返しです。
するとそのうち、男が一本別のロープを使い、アレックスの目の前にかごをぶら下げてきました。
かごの中には水のペットボトルとドッグフードのような食べ物が見えます。

アレックスは檻の隙間から手を伸ばしかごをつかむと、水を一気に飲み干し、食べ物を口にしますが、満足には程遠いものでした。
しかしのちに、その食べ物には別のおぞましい狙いがあることを知った時、アレックスは身の毛もよだつ思いで泣き叫ぶことになります。
そして長時間無理な姿勢を強いられたせいで、体の節々が悲鳴を上げはじめていました。

寝ようとしても筋肉がつり、激しい痛みで眠れません。
凍えるような寒さも加わり、まさに生き地獄でした。
涙も枯れ果てたアレックスは男に問います。
「なぜ私なの」と。
すると男は「それはお前だからだ」とだけ答え「あなたは誰?」との問いには、ただ笑みを浮かべるだけでした。

そんな中、事件解決の手がかりを探すカミーユ刑事が、犯人の車が映った監視カメラの映像を入手します。
その映像を解析するなどして捜査を進めた結果、容疑車両を特定。
容疑者の割り出しにも成功します。
しかし事件発生から4日が過ぎても、被害者女性の身元だけはいくら調べても掴めずにいました。

よほど孤独な人間でもないかぎり、家族や知人が心配するはずですが、被害者女性に該当する捜索願いは入ってきていません。
次第にカミーユ警部は疑問を持ちはじめます。

その女はうさんくさい、と。

果たしてこの事件には何か裏があるのでしょうか。
女の秘密が暴かれた時、全てが一変します。

感想

ありがちなサスペンスかなと思いきや、二転三転する展開に只々驚愕。
登場人物は巧みに描かれ、彼らの個性の強さが伝わってくるのもいい。

あまり語るとネタバレに繋がってしまいますので感想も難しいのですが、とにかく意外性に満ちた唖然とさせられる結末が待っています。

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