アガサ・クリスティ「ABC殺人事件」あらすじ・感想!見立て殺人に隠された真相

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今回は1936年に発表された「ABC殺人事件」のあらすじをネタバレ無しで紹介します。

昨日に引き続き、アガサ・クリスティの作品ですが、本書もまた彼女の代表作の1つで、後世の作家たちに大きな影響を与えたといわれる「ABCパターン」は必見です。

 

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あらすじ

今月21日のアンドゥ―バーに注意することだ —— 。
ABCと名乗る人物から名探偵エルキュール・ポアロに届いた手紙にそれは記されていました。
深刻に考えたポアロは州警察にその手紙を見せますが、真剣に受け止めてくれません。
ロンドンの自宅兼事務所で友人ヘイスティングズに手紙を見せても彼らと同じ反応でした。
しかし、ポアロが感じた懸念はやはり当たっていました。

22日の午前1時にアンドゥ―バーでアリス・アッシャーという女性が殺されているのを発見されます。
死亡推定時刻は21日の午後5時半から6時5分の間。
遺体のそばには、駅名がABC順に載っている「ABC鉄道案内」が開かれたまま伏せてありました。

勘が的中したポアロは言います。「これがはじまりです」と。

容疑者として挙がったのは、数年前から別居中の亭主、フランツ・アッシャー。
アッシャー夫人とは喧嘩が絶えず、殺してやる、と妻を脅していました。
ただし、オーヴァトンに住むメアリ・ドラウアー(被害者の姪)に話を訊くと、フランツは口汚いだけで、臆病な男だったと言います。
さらに、メアリは続けます。「あれは正しいことじゃありません ——— おばが殺されたのは」と。
何か引っかかるものを感じましたが、ポアロたちはアンドゥ―バーに向かいます。

殺害現場はアッシャー夫人が経営していたタバコ屋の一階。
2階の寝室にはストッキング一足、2つの陶器の置物、小説などが残されていました。
ここには見るべきものは何もない、と外に出て聞き込みを始めるポアロ。
近隣の住人たちも、アッシャー夫人を殺したのは、亭主のフランツだと考えているようでした。
しかし、死亡推定時刻の範囲内にフランツが店に入るのを見た者は誰もいません。
その時刻に店を訪れていた2人の男達からも話を訊きますが、有力な手掛かりは得られませんでした。

そして再び、犯人から手紙がポアロのもとに送られてきます。
挑発する言葉を添えたその手紙には、「次はべクスヒル・オン・シ―に注意を向けるといいぞ。日時は来る25日だ」と、書かれていました。

ポアロは、前回の事件同様に、町の名前に加え標的にされる人物もアルファベット順に選ばれているかもしれない、と気づきます。
警察はBではじまる名前には特に注意して警戒にあたりますが、7月25日、べクスヒルの海岸でエリザベス・バーナードという若い女性が殺されます。

死亡推定時刻は、午前0時から1時までの間。

前回はイニシャルがAの場所でAが殺され、今回はイニシャルがBの場所でBが殺されました。
遺体の近くからは、べクスヒル行きのページが開かれていた「ABC鉄道案内」が残されていたことで、予告された犯罪だと確信。

ポアロは捜査を始めます。

エリザベスが努めていたカフェの同僚によると、被害者にはドナルド・フレイザーというハンサムな恋人がいたと言います。
ミーガン・バーナード(エリザベスの姉)の話では、ドナルドは普段おとなしいぶん、一度切れると凄まじいらしく、浮気性の妹が怯えることもあったとのこと。

そのドナルドから事情を訊くと、ゆうべはエリザベスを捜していたが見つからず、あきらめて帰ったのが夜中の12時過ぎくらいだと話します。
ドナルドに対する事情聴取が終わり、ポアロがわかったことは、犯人は寛大だということ。
それを聞いたヘイスティングズにはさっぱり意味がわかりませんでした。

警察は次の脅迫状が送られてきた時は、世間に公表することに決めます。
予告された町のCではじまる名前の人達に用心させるためです。
そして、30日にチャーストンと書かれた第3の犯行予告が届きます。
しかしこの日は30日で、時刻は午後10時20分。
今から町の人間たちに警告しても間に合わず、
3回目の狩りを防げませんでした。
チャーストンでカーマイケル・クラーク卿が殺害され、またしても遺体の上にはページを開いたABCが伏せてありました。
脅迫状の配達が遅れた原因は、封筒に書かれた宛先の一部に誤りがあったことでした。
ごく自然な間違いに見られましたが、犯人が意図的にやった可能性もあります。

翌朝、ポアロ達は殺されたカーマイケル・クラーク卿の屋敷を訪ね、被害者の弟、フランクリン・クラークから話を訊きますが、有力な手がかりは得られません。
ソーラ・グレイ(カーマイケル卿の秘書)からもこれといった情報はありませんでした。
しかし、ソーラが殺人犯のことを考えて、「いま彼はどこにいるのだろう」と、放ったその一言にポアロは何かを感じ取ります。

そんな中、ポアロのもとに送られてた4番目の手紙は、相変わらずポアロを挑発する文言が入り、次は9月11日にドンカスターで何かが起こると警告されていました。

11日は来週の水曜日で、民衆に警告ができる時間が今度にはあります。ただし、その日はドンカスターで競馬がある日でした。殺人が競馬場で起きれば面倒なことになる、と気を引き締めます。

そしてポアロが不治の病で死の床についているレディ・クラーク(カーマイケル卿の妻)を訪ねた時のことでした。
ソーラ・グレイを嫌っていたクラークは、ソーラを家から出て行かせたことを告白し、彼女のことを嘘つき呼ばわりしていました。
それはカーマイケル卿が亡くなった日に、ソーラが正面玄関の前で見知らぬ男と話をしていたことを隠しているからです。

ポアロが問いただすと、ソーラはただ忘れていたことを認め、思い出したことをポアロに伝えます。
するとポアロは、その話から3つの事件に共通する重大な事に気づきます。
そして容疑者として挙がった男は、アレグザンダー・ボナパート・カスト。
イニシャルがABCでした。

十分な証拠が見つかり、有罪は確実。事件は終わりました。
しかし、ポアロは首をふります。
なぜ犯人は犯行を予告する手紙を警察ではなくポアロに送りつけていたのか。
なぜアルファベット順に殺害していくのか。
あらゆる証拠がカストの有罪を示すなか、はたして真犯人は現れるのでしょうか。

感想

クリスティの作品はじっくりと再読した時にトリックの巧みさに気づかされるものが多いですが、本作も例外ではありません。
慎重に読み進めると、一見無駄と思われるような会話の中にも巧妙に隠された手がかりを数多く発見できる楽しさがあります。

トリックもさることながら、クリスティの筆致で緊迫したストーリー展開も必見です。

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