湊かなえ「Nのために」あらすじ・感想!あの時、誰が誰を想い、何故そんなことをしたのか

小説

今回は、2010年に単行本として出版された湊かなえさんの原作小説「Nのために」をネタバレは避けてあらすじを紹介します。

2014年には、榮倉奈々さんや窪田正孝さんなどの豪華な俳優陣を揃え、TBS系でドラマ化もされています。

高層マンションで起きた殺人事件に居合わせたNのイニシャルを持つ4人の登場人物。

彼らの回想で事件当日、過去、そして10年後の未来と、時系列が複雑に入り混じりながら、少しずつ事件の真相が明かされていきます。

 

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あらすじ

 

第一章

1月22日、都内にある高層マンションの一室で、2人の男女が死亡していると警察に通報が入ります。
死体となって見つかったのは、M商事に勤務する野口貴弘(のぐち・たかひろ)と、その妻、奈央子(なおこ)。

この事件の物語は、現場に居合わせた男女4人のうちの一人、杉下希美(すぎした・のぞみ)が警察の事情聴取で証言しているところから始まります。

希美は愛媛県青景村出身の22歳。
小さな島で育った希美は、高校卒業後に東京の大学へ進学してきました。
希美が野口夫妻と出会ったのは、一昨年の夏に1つ年上の友人、安藤望(あんどう・のぞみ)と石垣島のダイビング ツアーに参加した時でした。

貴弘が努めるM商事が、偶然にも安藤が内定をもらっていた会社だったこともあり、2人は「将棋」という共通の趣味を通じて貴弘と親しくなっていきました。
2人は東京に戻ってからも、野口家に招待されては、貴弘に将棋の相手をさせられていました。

大概、貴弘の対局相手は会社の部下となった男性の安藤で、希美は貴弘の妻、奈央子と女性同士で食事に出かけるなどして親交を深めていきました。
ところが、11月頃からぱったりと誘われなくなり、希美の方から携帯にメールを送りますが届かず、電話にかけても繋がりません。

その後、奈央子が体調を崩していたことを知った希美は、安藤を誘い見舞いに行きます。

温かく迎え入れてくれた奈央子でしたが、蒼白な顔色で、生気が感じられません。希美が話している最中にも、奈央子の指先が震えていたり、突然泣き出したりと、普通ではない様子。

貴弘は、そんな奈央子を落ち着かせるため、優しく話しかけて奥の部屋に連れていってあげました。
この日、希美と安藤が最も驚かされたのは、玄関のチェーンがドアの外側に付いていることでした。

貴弘によると、妊娠していた奈央子が外出中に転んで流産してしまい、それから精神が不安定になっていったようです。
靴も履かずに家を出て、車道に飛び出し警察に通報されたこともあり、仕方なく外側にチェーンを付け、奈央子が1人で外出できないようにしたということでした。

「奈央子は貴弘に愛され、守られているから大丈夫」と、安心して帰路に就く希美でしたが、安藤が気になることを話し始めます。
それは、奈央子が不倫をしていると社内で噂が立っているということでした。

奈央子は結婚するまでM商事で働いていたこともあり、奈央子を知っていた社員に、若い男と奈央子が腕を組んで歩いているところを目撃されていました。
その噂を耳にした貴弘が怒り、奈央子を監禁するためにチェーンを付けたのではないかと安藤は考えているようです。

心配が残る希美は、奈央子が貴弘と独身時代に訪れたこともあるフレンチレストランの出張シェフを利用して、楽しく食事をする提案を考えます。
そのレストランには希美の同郷の成瀬慎司(なるせ・しんじ)が働いていたので、出張シェフのサービス内容について話を聞くこともできました。

貴弘はその提案を快く承諾すると、1月22日の午後7時にレストランのスタッフに来てもらうことに決めます。

ついでに安藤と中断していた対局を再会しようと考えた貴弘は、7時前に安藤を呼び、将棋の強い希美には5時半に来てもらい、一緒に対策を練ってくれと頼んできます。

そして、迎えた当日。

希美を招き入れてくれたのは、元気そうな奈央子でした。
彼女のすぐ後ろには貴弘も笑顔で迎えてくれています。
仲睦まじい2人の姿を見てホッとする希美。

防音対策を施した部屋に通され、安藤が来るまでに戦略を練るつもりでしたが、安藤が予定より早く来てしまいます。
焦った貴弘は、希美が攻略法を探している間、安藤をラウンジで待たせ、自分も足止めするために安藤の元へ向かいます。

しばらくして、ようやく攻略法を見つけた希美が部屋を出た時でした。
リビングにいたのは、西崎真人(にしざき・まさと)。
希美と同じアパートに住んでいる24歳の男性です。

アパートの1階に住む希美と西崎は、3年前の台風による大雨で床上浸水した際に、階段を上がり2階に住んでいた安藤に助けられたのをきっかけに親しくなっていきました。
その西崎のすぐそこには貴弘が頭から、奈央子はわき腹から血を流して倒れています。

西崎がなぜここにいるのか。いったい何が起きたのか。
その時、リビングにインターフォンの音が鳴り響き、誰かが来たところで、希美の証言が終ります。

この後、現場に居合わせた希美以外の成瀬、西崎、安藤の証言も加わり、西崎が犯人だと判明し、10年後の希美の告白で第一章が終ります。

第一章では、証言に大きな食い違いは見られませんでしたが、何かを隠している様子の4人。
第2章からは、それぞれの回想によって、過去から10年後の彼らの様子まで描かれていきます。

第2章

成瀬慎司の視点から、青景島(あおかげじま)で過ごす高校時代。
クラスが一緒だった成瀬と希美は将棋を通じて良好な関係を築いていきます。
授業中、新聞や雑誌に掲載されている将棋の問題を解いた成瀬は、後ろの席にいる希美にこっそりと回答を見せます。

すると希美が、シャープペンシルの音を3回鳴らして「す・ご・い」と、成瀬に気持ちを伝えます。

その音がなぜか4回鳴った時がありました。
どういう意味か訊ねる成瀬に「自分で考えて」と、希美は教えてくれません。
こうして2人の間には、ほのかな感情が芽生えていきました。

ところが、ある出来事を境に2人の関係は疎遠になっていきます。

その後、授業中に聞こえてきたシャープペンシルを5回鳴らす音。
「アイシテル」ではないのはわかっている成瀬。
「さようなら」かもしれないと感じていました。

高校を卒業すると、お互いに東京の大学に進学します。
それから約4年後、同窓会で再会したのをきっかけに、希美からアパートに来ないかと誘われました。

後日、希美の部屋を訪ねると、そこに現れたのは西崎真人。
成瀬は希美と西崎からにある計画を持ちかけられます。
その計画に指定された日付が、事件の起きた1月22日でした。

————— 10年後 —————

小さいながらも自分の店を持つことができた成瀬は、10年前の事件でついていた2つの嘘を告白します。

そして10年ぶりに希美を食事に招待して訊くつもりです。あの日、彼女は誰のために何をし、何を隠しているのか。

第3章

第3章は安藤の視点から語られます。
希望に燃え、上昇志向を持つ安藤。
将来は世界を相手にするような仕事をしたいと言います。

学生時代に住んでいたアパートは、大家さんの「野原」という名字にかけて「野バラ荘」と付けられていました。

「野バラ荘」には希美と西崎も住んでいて、飲み会を開いては、作家を目指している西崎に作品の感想を言わされることもありました。

作品のタイトルは「灼熱バード」。

飼ってる小鳥が、自分の意思で焼き鳥になるように、数日間エサを与えず、熱したオーブンの中にエサを入れて、その中に誘導するというものでした。

希美が西崎から愛について問われることもありました。

希美が、「罪の共有。誰にも知られずに、相手の罪を自分が半分引き受けること」と答えると、それには安藤が真っ向から否定し、口論に発展することもありました。

安藤は、あとひと月すれば就職先の寮へと移るため、「野バラ荘」から去らなければなりません。
清掃のバイトをしていた安藤は、ビルの窓清掃に使用するゴンドラに乗りたがっていた希美をバイト最後の日に、希美には内緒で企て、ゴンドラに乗せてあげました。

ゆっくりと上昇し、風で揺れるゴンドラ。
遠くの景色を眺めながら、故郷の島に思いを馳せる希美。
安藤の服の裾をしっかりと握りしめていました。

そして、M商事に入社した安藤。
有能で新入社員憧れの上司、野口に目をかけてもらい、同期から羨ましがられることも。

こうして憧れの上司と仕事をすることになった安藤でしたが、部下の手柄を横取りしてまで出世しようとする野口を次第に軽蔑し始めていきました。
そんな野口から将棋で負けたら人事異動で僻地に飛ばされるという5番勝負を持ちかけられます。

大切な人事を将棋で決めるのかと、あきれる安藤。
それでも勝負を受けることにすると、最終戦に指定された日が1月22日、事件の起きた日でした。

————— 10年後 —————

5年間外国で過ごし帰国した安藤は、10年前の事件のあった日を振り返り、希美がいっていた言葉を思い出します。

究極の愛とは「罪の共有」。

それならば事件から10年間、罪の共有をしあっているのは誰なのか、知りたい思いに駆られていました。

第4章

この章は杉下希美の視点から語られます。

希美が高校2年の秋のことでした。父が愛人を家に連れ込み、希美と母と弟の3人は家から追い出されてしまいます。

母は、父に捨てられたのは希美と洋介のせいだと2人に当たり散らすと、高額な化粧品やアクセサリーを買うなどして、生活に困窮していきます。
食費に困った希美が父の愛人に土下座をしてまで食料を分けてもらうこともありました。

4月になると洋介が本土の高校に進学して家を離れると、母の身勝手さが想像以上に負担になり苦しめられていました。
そんな中、希美の心を癒してくれたのが、クラスメートの成瀬慎司でした。

希美は自分と同様に家の問題を抱える成瀬に、どうすれば成瀬のためになれるのか考えるようになっていました。
そんな希美も高校を卒業後、東京の大学に進学して、ようやく母から解放されました。

上京してから、住んでいるアパート「野バラ荘」。
不動産業者が土地を買い取らせてほしいと、何度も訪問してきては大家のおじいさんを困らせていました。

「野バラ荘」を守り、大家さんを安心させるためにも、希美と西崎は、ある計画を立てます。

————— 10年後 —————

成瀬に5回鳴らしたシャープペンシルの音の意味。

大家のおじいさんが、希美が抱えてきた心の問題に気づいていたのではないかということ。

それを治してくれたのが「野バラ荘」だということを10年後の希美が語っていきます。

第5章

第5章は西崎真人の視点から語られます。

物心ついた時から母親と2人きりの生活を送っていた西崎。
母親は、暴力で愛情表現してくる人でした。

小学一年生になると、担任の男性教師が西崎の身体に不自然な痣があることに気づきます。
担任教師から漂うタバコの臭いは、西崎はとても嫌でしたが、虐待の心配をして家庭訪問に来てくれました。

残念ながら虐待には気づいてくれませんでしたが、それからは母親の暴力がぴたりと止みました。

快適な日々を手に入れた西崎。
ただ不快なのは、あの日を境に母親からも担任教師と同じタバコの臭いがするようになったことでした。

ある日、担任教師の身体に痣があるのが見えると、西崎は気づきます。
「母親が今愛しているのはこの男だ」と。
ところが、担任教師が学校を辞めて母親の前から姿を消したせいで、母親の暴力は再び息子へと向けられます。

今度は、タバコの火を腕に押し付けるなどの虐待を何度も繰り返します。
ようやく解放されたのは、母親の寝タバコで火事を起こし、母親が亡くなってからでした。

それからは父親に引き取られ、どこにいっても「かわいそうな子」として同情されるようになりますが、西崎はそのことに抵抗を覚えていました。

自分は決して「かわいそうな子ではない」。

母親とのあいだに愛があったことをみんなに気づかせるために、自分の物語を小説にすることにします。
そして大学生になった西崎が「野バラ荘」で、黙々と書き上げたのが「灼熱バード」でした。

その後、西崎は「野バラ荘」に希美を訪ねに来た奈央子と出会います。
留守だった希美を待つ間、西崎は奈央子に「灼熱バード」を読ませませると、涙を流し理解してくれました。

しかし、この時の奈央子の出会いがきっかけとなり、1月22日の事件へと発展していくことになります。

————— 10年後 —————

病気で入院している10年後の希美が、あの事件でNのためにした行動を語ることで、最後に残った謎の真相が明かされます。

感想

相手に知られずに、相手のためを想い行動する。
男女の心の微妙な動きがうまく表現され、時には切ない気持ちにもなるそんな純愛ミステリです。
事件当日、ある人物がドアにチェーンをかけることで、大きな悲劇に繋がるきっかけとなりますが、なぜそんなことをしてしまったのか。
ただ疎外感を感じただけなのか、よくわかりません。
野口を見ず知らずの人物と一緒に閉じ込め、気まずい思いをさせれば、チェーンを取り外すだろうと、奈央子のためにしたことだと思いたいですね。

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