アガサ・クリスティ「五匹の子豚」あらすじ・感想!ミステリの女王が描いた極上の一冊

小説

ようやく新年初投稿。
今年はもう少し小説のあらすじを書いていきたいと思っています。
そして玲和2年最初に選んだ作品は、1942年に刊行されたアガサ・クリスティの「五匹の子豚」です。
著者のアガサ・クリスティは、1920年に30歳で作家デビューを果たし、1976年に86歳で亡くなるまで活躍したイギリスを代表する女性推理作家です。
クリスティが遺した多くの作品は、今でも世界中のミステリーファンに読み継がれていますが、本作はそんな彼女の最高傑作と推す声も多いようです。
ちなみに題名の「五匹の子豚」は、マザーグースの数え唄がモデルになっていますが、物語とはあまり関係ありません。
ではネタバレ無しのあらすじをどうぞ。

 

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あらすじ

著名な画家エイミアス・クレイルがデヴォンシャー南部にある自宅の庭先で毒殺されます。
容疑者として逮捕されたのは被害者の妻、キャロライン・クレイル。
裁判にかけられますが、なぜかこの時、彼女は闘う姿勢を見せませんでした。
そして下された判決は終身刑。
一緒に住んでいたキャロラインの父違いの妹、アンジェラ・ウォレン(15歳)は外国の学校へ行くことになり、まだ5歳だったクレイル夫妻の娘カーラは、カナダに住む親戚に引き取られていきました。

それから1年後 ——。

キャロラインは獄中で亡くなる前に、自身の潔白を主張する手紙を親戚に託します。娘が21歳になった時に渡すようにと。
そして16年が経ち、手紙を読んだカーラは母の無実を強く信じます。
名探偵エルキュール・ポアロのもとを訪ね、過去の殺人事件の再調査を依頼。
真実を望む、という声を受けたポアロは、調査を開始します。
当時この事件に関わった警察官や弁護士たちの協力のもと、事件の詳細を知ることができました。

画家エイミアス・クレイルは、何よりも絵を最優先し、相手を思いやる気持ちがまったくない男でした。
妻のキャロラインとはエイミアスの浮気癖が原因で喧嘩が絶えませんでしたが、心の底では愛し合い、なんとかやってきました。
エルサ・グリ―アが現れるまでは。

事件当時、画家エイミアスのモデルとして屋敷に滞在していたエルサは、美人で気が強いタイプの20歳の女性でした。
34歳のキャロラインは若さでは勝てないと嘆くばかり。
そんなある日、エルサがエイミアスと結婚を約束している、とキャロラインに言い放ちます。
エイミアスは、隠していたことをバラしてしまったエルサに腹を立てますが、それが真実であると認めます。

キャロラインは深く傷つきますが、しばらくすると何事もなかったかのようにお茶を飲みに出かけます。
一緒に出かけた4人は、エイミアスとエルサ、キャロラインの妹アンジェラ。
そしてクレイル夫妻の屋敷に滞在していたフィリップ・ブレイク。
彼は40歳ほどの男性でエイミアスとは昔からの友人です。
5人で向かった先は、フィリップの2つ年上の兄メレディス・ブレイクの屋敷でした。

夫妻の屋敷から徒歩4分のところにある庭園は海に面しており、その対岸にメレディスの屋敷はあります。
メレディスは薬草の研究をしていて、エイミアスとは同い年の男性です。
キャロラインに愛情と友情を抱いていたメレディスは、妻を大切にしないエイミアスに抗議しますが、そんなことは意に介さぬ男でした。

この日のメレディスはみんなを実験室に案内すると、コニインと呼ばれる毒薬を見せて、その効能などを説明します。
とにかく彼は自分の知識を披露することに夢中でした。
しかしその翌朝、その毒薬が実験室から消えていたことに気づいたメレディスは、狼狽しながらも、クレイル夫妻の屋敷にいる弟フィリップに連絡を入れます。

その日の朝は、クレイル家の書斎で夫妻の激しい口論がありました。
その一部を聞いたというフィリップとエルサによると、エイミアスの浮気に堪忍袋の緒が切れたキャロラインが「いつか必ず、あなたを殺してやる」と、激怒したと言います。
それからしばらくし、絵にとりかかる時間になると、エイミアスはモデルのエルサを連れて庭園へ向かいました。

フィリップは、海岸で落ち合った兄と紛失した毒薬について屋敷で相談することにします。途中、庭園の下を通りかかると、クレイル夫妻の話し声が聞こえてきました。
冷たい海風に晒されていたエルサが屋敷にセーターを取りに行っている間、夫妻はアンジェラを学校にやる件について言い争っていました。
エイミアスはエルサが戻ると、すぐに作業を再開。
庭園に設置されていた建屋にもビールが蓄えてありましたが、エイミアスがぬるいと文句を言うので、キャロラインが屋敷にいたアンジェラと一緒に冷蔵庫から冷えたビールを持って行きます。

エイミアスは妻が注いだビールを飲みほし「今日

はどれも嫌な味がする」と、表情をしかめます。
フィリップはこのあと、アンジェラがうるさいので、毒薬紛失の対処は後回しにして一緒に泳ぎに行き、メレディスは庭園の高台から画家とモデルを見守っていました。
しばらくして具合が悪くなってきたエイミアスは、そんな姿を見られたくないのか、みんなを昼食に行くように命じます。

エイミアスを一人残し、メレディスはエルサと2人で屋敷へ向かい、フィリップとアンジェラも帰って来ました。
エイミアスは仕事に夢中になると食事を摂らないことがよくあり、昼食の席に姿を見せない彼を気に留める者はいませんでした。
昼食後、キャロラインはアンジェラの家庭教師をしているセシリア・ウイリアムズ先生と、エイミアスのいる庭園へと向かいます。

先生はアンジェラが浜辺かボートの中に置き忘れたセーターを捜しに行くため、庭園に通じる扉のところで、キャロラインと別れました。
その直後、キャロラインが倒れているエイミアスを発見し、先生は悲鳴を聞いて駆けつけると、電話で医者を呼んで、とキャロラインに頼まれます。
先生は屋敷へと急ぎますが、途中で出会ったメレディスに電話を頼み、自分は夫人のところに戻ります。

医師が現場に駆け付けた時にはすでに手遅れの状態で、死因は毒死と判明。
メレディスの屋敷で盗まれた毒物がエイミアスの使ったグラスにわずかだけ残っており、ビール瓶にはエイミアスの指紋しか発見されていません。
自殺に見せかけるためにキャロラインが自分の指紋を拭き取り、エイミアスの指を押しつけたのだろう、というのが大方の見解でした。
そして、キャロラインの部屋にあったジャスミン香水の空き瓶からコニインの液がわずかに見つかります。

キャロラインは自殺するつもりで実験室から盗んだ、と認めますが、瓶の中に入っていたコニインがどこに消えたのか説明できません。
これだけでもキャロラインの有罪は明らかでしたが、自分が納得できるまで調査を続けるというポアロ。
当時現場に居合わせた5人の目撃者を訪ね、16年前の悲劇について話を訊くことが出来ました。

まずは、株で成功を収め裕福な生活をしていたフィリップ・ブレイク。
彼は毒薬が盗まれた、と兄のメレディスから連絡があった時、自分がためらったせいで、友人を救えなかったことを深く後悔していました。
キャロラインのことを冷酷で策略的な女性だと、とにかくボロカスに言います。
事件も彼女の嫉妬が原因で起きたと考えているようです。
しかし内心では彼女に強く惹かれていました。

フィリップの兄メレディス・ブレイクは、自分の薬が殺人に使われたことで責任を感じ、すでに薬草研究から足を洗っていました。
当時は結婚したいと思うほどキャロラインのことが好きでしたが、事件は彼女の犯行で間違いないとの考えでした。

英雄崇拝主義的な考えを持つエルサ・グリ―アは、上院議員と結婚していて、たいへんなお金持ちになっていました。
当時、夫妻の家に転がり込んできたエルサが、妻や子からエイミアスを奪い去ろうとしたことに、少しも悪びれたところはありません。
今でもエイミアスを殺したキャロラインが憎くてたまらない様子でした。

セシリア・ウイリアムズは、平気で妻を裏切るエイミアスのことが嫌いで、殺されて当然だったと考えていました。
キャロラインのことは好意的に見ていましたが、彼女が犯人だという証拠を偶然握っている、と言います。
しかもそれは裁判でも隠していた事実でした。

考古学分野で成功を収めていたアンジェラ・ウォレンは、子供の頃、姉のキャロラインに片目を大怪我させられていました。
負い目を感じていた姉に可愛がられ、アンジェラも姉を愛し、姉の無実を固く信じていました。
判決後に、キャロラインからアンジェラのもとに届いたという手紙がありました。
ポアロにはキャロラインが罪を認めているように読めましたが、それでもアンジェラは姉の無実を信じてやみません。

5人は事件について異なる見解を持っているものの、アンジェラ以外はキャロラインが犯人であることは間違いないと言います。
そしてキャロラインは娘のカーラに宛てた手紙を除けば、自分は無実だと主張していないこと。
妹のアンジェラに宛てた手紙では、自分に降りかかった運命に従う、と書かれていたこと。
過去に行き当たったものがすべて、キャロラインの犯行を示すものばかりで、彼女の有罪は疑いの余地がないものと見えました。
しかし、ポアロは聞いた話の全てを鵜呑みにしたわけではありません。
5人の関係者に16 年前に起きた事件の経緯を手記にしてもらいます。

果たしてポアロは、灰色の脳細胞を用いて手記を読み解き、真犯人を見つけ出すことが出来るのでしょうか。

感想

「五匹の子豚」とはなんとも可愛らしい題名ですね。
でも内容は、愛憎と悲劇を描いたれっきとしたミステリーです。

クリスティお得意のダブルミーニングも随所に仕込まれていて、何度読み返しても、その鮮やかさに惚れ惚れします。

彼女の生み出した作品の中でも秀逸な一冊であることは間違いないと思います。

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